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2008/6/9
「蝶の羽ばたきが嵐を起こす?」
蝶の羽ばたきが嵐を起こす?
東京大学生産技術研究所教授
合原一幸
あいはらかずゆき
● 東京大学生産技術研究所教授,東京大学大学院情報理工学系研究科教授(兼任)。科学技術振興機構ERATO 合原複雑数理モデルプロジェクト研究総括。工学博士
● 東京大学工学部卒,同大学院工学系研究科博士課程修了。西オーストラリア大学理学部数学科客員教授,東京大学大学院工学系研究科教授,放送大学客員教授などを経て,現職。1954年6月生まれ,福岡県北九州市出身
● 著書:『カオス学入門』(放送大学教育振興会,2001年),『脳はここま
で解明された』(編著,ウェッジ,2004年),『複雑系がひらく世界−科学・技術・社会へのインパクト』(編著,日経サイエンス社,1997年)。
主研究テーマ:複雑数理モデル,生命情報システム
●バタフライ効果の発見
アオスジアゲハの羽の青色は,5月の青空を写し取ったように美しい。東大の本郷キャンパスでもその美しい姿が見られるし,ごく最近青森県までの北上が確認された(月刊むし,2008年3月号)。繁殖力の強い蝶であるようだ。蝶は私たちにとってたいへん身近な存在であるが,「蝶効果(バタフライ効果)」と呼ばれる科学用語がある。アメリカの気象学者エドワード・ローレンツの研究に由来する。
ローレンツは,彼が作った気象現象の数学モデルをコンピューターで計算している時,偶然に「0.506127という数字を0.506で近似すると,その後の解の振る舞いがまったく異なってしまう」ことを発見した。
ごくわずかな値の違いが,時間とともに拡大し,最終的に大きな差を生み出したのだ。
この現象をバタフライ効果と呼ぶ。
この語の由来は今となってははっきりしないが,ローレンツ自身の講演のタイトル「予測可能性:ブラジルの蝶の羽ばたきが,テキサスに竜巻を引き起こすだろうか?」によるとも言われている。
●ラプラスの魔
ローレンツの気象のモデルは,いわゆる微分方程式で書かれている。そこには,確率的ゆらぎやパラメータの不確定性はない。このような微分方程式においては,ある時刻の状態(初期状態)が与えられれば通常その後の解は一意に決まる。
これを「決定論」という。
その後の将来がすべて厳格に決定されてしまうという,なんとなく窮屈な話しだ。
この決定論的世界観を極端に押し進めた概念に「ラプラスの魔」がある。
すなわち,「もしも森羅万象を支配している法則を完全に理解し,ある瞬間におけるすべての状態を知り,その膨大な情報を処理し得るある知性(ラプラスの魔)がこの世に存在するならば,その知性は宇宙に存在する天体から原子に至るまでの過去,現在,そして未来永劫における状態をすべて知り得るだろう」という,完璧な決定論に立脚した世界観である。
●カオスの衝撃
ローレンツが発見したバタフライ効果は,がちがちのラプラス的世界観に強力な一撃を加えた。たとえ決定論に従っていても,初期状態がどんなに小さくてもほんのわずかでもずれると,その後の将来はまったく異なるものとなる。このような決定論的ダイナミクスは,今では広くカオスと呼ばれている。
カオスにより,我々はラプラス的世界観から根本的に解放された。
通常数学モデルの状態を表す変数は実数である。ところが我々が実際に知り得る値は,常に有限桁の有効数字のみである。実数の複雑さは,実は人間の能力を大きく越えている。実数の持つ複雑さの無限性を人間が認識可能な有限性に置き変えることで,カオスの将来は予測不能となる。
有限近似によるわずかな誤差の影響が,バタフライ効果で拡大するからだ。
たとえば現在の気温が18.0度という時,本当は18.00001度かもしれないし17.99999度かもしれない。もしバタフライ効果が本当にあれば,このようなほんのわずかな差がその後の有様をまったく変えてしまうことになる。
ローレンツはこの現象を発見した際,気象学者であるだけに天気の長期予報は不可能だと実感したという。
ちなみに「バタフライ効果」の含意は,蝶が羽ばたくとわずかだが風を起こして状態がほんの少し変わる。このわずかな状態変化がその後の将来を大きく変えるとすれば,嵐だって引き起こすかもしれないという意味でのたとえ話しである。
もちろん実際の気象においてこのようなことが生じるかどうかは不明だし,そうではないと考える研究者は多い。ただし,現在の天気予報は,大気の数学モデルをコンピューターで数値計算して予報しているが,この天気予報の数学モデルがバタフライ効果を持つことは知られている。
また、電子回路、レーザー、機械振動系といった工学システムのみならず、神経細胞や循環器系のような生体システムにおいても,バタフライ効果が確認されている。
ちなみに,バタフライ効果のたとえ話し自体もバタフライ効果を持つようで,ローレンツの講演ではブラジルとテキサスだったが,最近では「北京で蝶が羽ばたくと,ニューヨークで嵐が起きる」などとより大げさなたとえ話しになっている。
●歴史上の「もしも」
バタフライ効果は,「もしもクレオパトラの鼻がもう少し低かったなら,世界の歴史は違ったものになっていたであろう」といった類いの歴史上の「もしも」話しを連想させる。確かに歴史の時間の流れの中で,節目節目にその後の分岐を生み出すバタフライ効果があるように思える。
自分自身の人生を振り返ってもあの時こうしていたらと悔やむことは多い。ただ,歴史
と違ってカオスはエルゴード性という性質によって,元の状態のいくらでも近くへといつか戻ることができる。
でも,もしかしたら人生もそうかもしれない。
「いつでも元に戻ってやり直せる」,「将来は予測不能だから楽しい」。
カオスを研究していると,人生をそう考えるようになってくる。
日歯雑誌5月号のコラムです。
「バタフライ・イフェクト」の語源から、そのコトバ自体にも「バタフライ効果」が生じたことなど、本論以外でも楽しめる内容になっています。
オイラは「北京の蝶の羽ばたきがニューヨークに嵐を起こす。ほんの僅かな動きが、徐々に大きくなって一大ムーブメントになることもある。」と言った意味合いでこれを理解していたのですが、本来の意味はさらに大きなものでした。
森内閣当時、極少人数で始められた勉強会、「小さな政府」の実現プロジェクトが段々大きくなって、現在の状況があります。それはホントニ正しいものなのか?僅かなズレが取り返しのつかない結果へと繋がり始めていないか?原点に戻って今一度考える時期に来ているのは確かなようです。
「バタフライ・イフェクト」と言う映画もありましたが、こんな楽曲もあります。
上田現 「北京の蝶」
上田現さんはご存知ないかもしれませんが、この曲の作者です。コチラはかなりヒットしたので聞いたことがある方も多いのでは?
元ちとせ 「ワダツミの木」
偶然(?)にも、オープニングの所で「蝶が羽ばたく」アニメーションが入っています。
2曲とも上田現さんのアルバム「10秒後の世界」の中の楽曲です。
セイコーの「1秒の言葉」と言い、時間に関して考えさせられた一日でした。
因みに、今日の日記をお読みになった日歯会員の方は、日歯生涯研修1点の権利があります。自己申告しましょう(笑)!
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投稿者: 馬
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投稿者:グズ
2008/6/10 0:55
バタフライ効果については、人間自体が、カオスである、ましてや、医療は、カオスの中での蝶の羽ばたきの結果かもしれない、術者の行為がどんな結果を生むのかは?まさにカオス?で、研修コードは基礎歯学その他
1199と考えました。???
◇teacup.コミュニティカテゴリ
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