「患者・医師関係を通して「患者中心の医療」を考える」
歯科医療
JUST Opinion
患者・医師関係を通して「患者中心の医療」を考える
市ヶ谷隆雲
今日の医療の最大の課題は「患者中心の医療」である。即ち医師と患者の良好な信頼関係の下で両者の関係をどのように理解し、どう患者に接するかが課題となっている。医療関係者は「患者中心の医療」をいかに患者の求めに近づけることが出来るか、いかに医療政策に取り入れることができるかを考えたい。
患者には自分の生命・健康に対する処置を選択・決定する権利として、自己決定権がある。(寺野 彰)「患者中心の医療」を進める究極の目的は、患者自身が自分の医療を選択・決定することである。リスボン宣言にも自己決定に関する権利として記載されている。従って、医師の役割は患者の意志決定ができるように患者の必要とする全ての情報を提供することにある。
一方、医師の役割が変化したために、医師は意識改革を行い、患者本位の全人的医療を行うべきである。高久史麿 日本医学会会長は医師・患者の相互が信頼関係で結ばれるべきである、と両者の立場に関して「スーパーマンとしての医師は、人間としての医師に席を譲った」そして「20世紀時代のカリスマ的イメージを剥ぎ取られてしまった21世紀の医師が代わりに提示出来るものがある。それは自身の勤勉さや誠実な人柄等自分の持っている人間の全てである。そして、それは古いカリスマ性以上に強力である」と、JA ミュア・グレイの言葉を引用して述べている。これこそ患者中心の医療の実践に見事に合致する。
患者から云うと医師・患者間には、いかんともしがたい大きな壁がある。その一つは、医師は患者がどのような治療が必要かを決定することが出来るという、医療の持つ情報の非対称性にあり、二つ目はその治療による治癒が絶対的ではない可能性、医療の不確実性があるということである。また、自分のことなのに医療を提供する主体である医師には、聞きづらいという遠慮や、忙しそうにしていると聞き難いという医療環境がある。従って患者が治療方法を選択し決定することは容易ではない。
一方、「患者中心の医療」を医療政策に取り入れることが重要であり、そのために闘うのは医療関係者である。
国は1980年代から財政逼迫を理由に、医療費適正化政策を中心に据えた。今日の財政逼迫と患者の医療に対する要望の多様化という、二つの社会的要請が相容れない中で、「国民が良質な医療を望んでいる」としても、社会・経済環境から適正化政策の中で全てを保険導入することは極めて非現実的であると国は云う。しかし、医療の理念は国民の「安心の確保」であるから、国民皆保険制度を持続的に堅持することは医療関係者と国民の責務である。また、ある調査によると国民の6割が医療に対して不満を持ち、その最大の不満は医療政策の決定に「市民・患者代表」が参加していない、市民不在の制度決定プロセスにあると言われている。これからの医療は診療行為に対する評価がEBMに基づいて適確に行われ、その治療が国民のニーズに対応する領域であることが説明できないと,国民から選択されないという考え方である。
「患者中心の医療」はこれからの中心的な方向であり、実現しなければならない。しかし、その実現は非常に難しい。医療関係者には患者の自己決定権と医師の裁量権とをうまく癒合させるための医師の倫理観と人間性が求められる。更に大切なことは患者自身も医療の不確実性をよく理解すべきであり、医療事故に対してはその原因を追及し、二度と起こさないようにようにするための方策に理解を示していただきたい。国も第三者機関として「安全委員会」を創設する方向で検討されていることは評価したい。患者中心の医療とは、患者と医師が中心となって作り上げる「患者・医師中心の医療」であるべきだと思う。
http://www.independent.co.jp/dt21/column.html
皆さん、どうお考えでしょうか?