2009/6/9
The chain 歯科医療
最近の歯科界の閉塞感はハンパじゃない。
その中で今までの枠組みを越えて変化しようとする試みや兆しはそこかしこに見られるようになったが、それが大きなうねりになるのにはまだまだ時間が必要なようだ。
そんな悠長なことを言ってる場合ではないと言いながら、現実には変化の足取りは遅く、閉塞感に加えて無力感も追い討ちをかける。
それでも、これからの歯科界を少しでも良きものにするための長期的展望に立った取り組みは続けなければならない。
歯科技工物の海外委託問題について
この中で、金子先生は、最後の結びの言葉として
昭和30年という50年前の技工士法では歯科医師が全てを管理する仕組みになっており、「当社は海外への再委託は行っておりません」という誓約書を書いて貰ったとしても実態が違っていた場合は厳密には歯科医院側の責任となるシステムに問題がある。これは「歯科医師が全てを囲い込んでいた方が良い」といった過去の発想に基づいた法律である。厚生労働省設置法という法律の3条13項の医療関連職種(保健師、助産師。看護師、歯科衛生士、歯科技工士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、臨床放射線技師、義肢装具士、臨床検査技師等)で患者との接点がないのは歯科技工士のみである。これまでいかに歯科業界が技工士を軽視していたかが分かる。解決策は保険調剤のように保険技工を指定する制度を創設し、厚生労働省が保険技工所を管理していく仕組み作りを推進していくことであろう。
また、デンタル・トリビューン誌で連載されていた、山形大名誉教授・吉澤信夫先生の「歯科医療の隙間と周辺」は、医科の先生からの視点で様々な歯科の問題点が指摘されていて、大変興味深い。
歯科医療の隙間と周辺
第6回「歯科理工学と医工学」では、歯科技工士の将来に向けてのあり方についても触れている。
歯科技工士という職種は,歯科医院の技工室から生まれた。すなわち多くの医療職がそうであるように,歯科医師の業務を分担するという実態が先に存在して,歯科技工士の法的国家資格は第̃2̃次世界大戦後に整備された。外国の制度をそのまま導入(後に日本向きに改正)した歯科衛生士とは,この点で大きく異なっている。そのため,歯科技工士は歯科だけの“専従職業”という枠の中に取り込まれ,抜け出て発展する機運が乏しかったのではないかと思われる。その歯科技工士業が近年,歯科医療の停滞とともに魅力が失われ,その教育機関の廃止も相次いでいる。この現象は歯科技工士だけでなく歯科全体の地盤沈下,さらには国の医療制度全体にとっての損失であることを,筆者は指摘したい。歯科理工学を名実ともに,「医用理工学」とすることは不可能だったのか。遅きに失した感がある歯科技工士の業務拡大を,あえて考察してみたい。
(中略)
歯科技工士のなかには,基本的な技術力のみならず,すぐれて幅広い適応力を持っている人が多く見られる。狭い歯科の分野に限定することなく,多種多様な医療機器に関わる知識を持ち,部分的であっても管理できる技能を習得するみちすじが歯科技工士にあったなら,今日のような低迷状態に陥ることはなかったのではないか。若干の履修年限の加算はやむを得ない。一方の歯科衛生士においては,2̃級ホームヘルパーやケアマネジャーの資格を取得する道が開けた。この流れを踏まえたうえで,歯科技工士の苦境を打開する方略においても,歯科界全体の資源を効果的に中長期間投入すれば,全く不可能とは思えない。
歯科医師にしても過剰問題があり、昨年度から私立歯科大の定員割れが深刻な状況になっている。ただ単に歯科医師を養成する機関としての役割は終わりを告げているのだろう。スーパー特区構想やメディカル・スクール構想を大胆に取り入れた「ホーム・ドクター」の創出などの方針を打ち出す必要はないのだろうか?医科からの反発が大きい?
私立歯科大においても、将来の需給バランスを調整する一助になるような気がするんだけど。
「そんなこと言っても、現実にはムリ」ってことで、オイラの頭の中での妄想で終わってしまうのだろうけど・・・ナカナカ昔から続いて来た「鎖」は切れないですネ。
FLEETWOOD MAC - The Chain (1977)
とか書いてるうちに、秋元さんの「コップの外の嵐」が更新されてました。
第31回 「医療崩壊」の渦中に、歯科が登場した
「医療について報道されない日はないほど、医療崩壊が進んでいます。このような閉塞的な医療の現状を打破するために、『医療志民の会』が発足します」と呼びかけたのは、上昌広医師(東京大学医科学研究所特任准教授)と『医療崩壊』の著者小松秀樹医師(虎の門病院泌尿器科部長)を中心とするメンバーである。彼らは、福島県立大野病院の産科医師逮捕以来、医療事故調査に関する第三者機関の設立に強く反対する論陣を張り、官僚批判、医師会批判を展開してきた。今回は、その論調をやや転換して、立場も意見も異なる人たちに、幅広い連帯を呼びかけたものである。
小松氏や医師会改革を謳う全国医師連盟の黒川衛氏らと肩をならべてパネラーとなった歯科医師大塚勇二氏(NPO法人みんなの歯科ネットワーク・副理事長)は、医科をはるかに凌ぐ歯科の医療費抑制の、もっとも大きなしわ寄せを受けているのが歯科技工であることを指摘し、そうした犠牲の上にからくも歯科医療が成り立っていることを示した。そして義歯など補綴物の製作が市場原理に委ねられているために、中国などの安価な労働力との競争で、歯科技工の安全性はもちろん、世界に誇るわが国の歯科技工という医療専門職の職業文化が崩壊の危機にあることを訴えた。また別室の資料展示会場では、「違法入れ歯断固反対」のチラシや「みんながわかる技工指示書」(歯科医師・技工士・患者の情報共有)が配布され関心を集めた。
おもしろいもので、いままで医師不足が共通認識となった医療崩壊の議論で、歯科医師過剰の歯科は、まったく別物だと思われてきたが、このパネルディスカッションでは、大塚氏につづくパネラーらが、医療費抑制によって劣悪化する医師、看護師の現場を語る際に、そろって「歯科」を付け加えるなど、医療の危機を語る議論のなかに歯科の問題が初めて位置づけられることとなったのである。
是非、上のリンクから全文お読み下さい。
【閑話休題】
お〜い、としじいさま、秋元さんの連載は、「コップの外の嵐」ですヨ。
今回の記事で奇しくもそのタイトルの皮肉について書いておられます。
『世間の風に晒されることなく、内輪で不満を言い募っているだけでは、世間を説得することはできない。それが『コップの外の嵐』という皮肉な標題の意味(である)』
他人の書いた記事には厳しいチェックを入れる、馬さんでありました・・・
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その中で今までの枠組みを越えて変化しようとする試みや兆しはそこかしこに見られるようになったが、それが大きなうねりになるのにはまだまだ時間が必要なようだ。
そんな悠長なことを言ってる場合ではないと言いながら、現実には変化の足取りは遅く、閉塞感に加えて無力感も追い討ちをかける。
それでも、これからの歯科界を少しでも良きものにするための長期的展望に立った取り組みは続けなければならない。
歯科技工物の海外委託問題について
この中で、金子先生は、最後の結びの言葉として
昭和30年という50年前の技工士法では歯科医師が全てを管理する仕組みになっており、「当社は海外への再委託は行っておりません」という誓約書を書いて貰ったとしても実態が違っていた場合は厳密には歯科医院側の責任となるシステムに問題がある。これは「歯科医師が全てを囲い込んでいた方が良い」といった過去の発想に基づいた法律である。厚生労働省設置法という法律の3条13項の医療関連職種(保健師、助産師。看護師、歯科衛生士、歯科技工士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、臨床放射線技師、義肢装具士、臨床検査技師等)で患者との接点がないのは歯科技工士のみである。これまでいかに歯科業界が技工士を軽視していたかが分かる。解決策は保険調剤のように保険技工を指定する制度を創設し、厚生労働省が保険技工所を管理していく仕組み作りを推進していくことであろう。
また、デンタル・トリビューン誌で連載されていた、山形大名誉教授・吉澤信夫先生の「歯科医療の隙間と周辺」は、医科の先生からの視点で様々な歯科の問題点が指摘されていて、大変興味深い。
歯科医療の隙間と周辺
第6回「歯科理工学と医工学」では、歯科技工士の将来に向けてのあり方についても触れている。
歯科技工士という職種は,歯科医院の技工室から生まれた。すなわち多くの医療職がそうであるように,歯科医師の業務を分担するという実態が先に存在して,歯科技工士の法的国家資格は第̃2̃次世界大戦後に整備された。外国の制度をそのまま導入(後に日本向きに改正)した歯科衛生士とは,この点で大きく異なっている。そのため,歯科技工士は歯科だけの“専従職業”という枠の中に取り込まれ,抜け出て発展する機運が乏しかったのではないかと思われる。その歯科技工士業が近年,歯科医療の停滞とともに魅力が失われ,その教育機関の廃止も相次いでいる。この現象は歯科技工士だけでなく歯科全体の地盤沈下,さらには国の医療制度全体にとっての損失であることを,筆者は指摘したい。歯科理工学を名実ともに,「医用理工学」とすることは不可能だったのか。遅きに失した感がある歯科技工士の業務拡大を,あえて考察してみたい。
(中略)
歯科技工士のなかには,基本的な技術力のみならず,すぐれて幅広い適応力を持っている人が多く見られる。狭い歯科の分野に限定することなく,多種多様な医療機器に関わる知識を持ち,部分的であっても管理できる技能を習得するみちすじが歯科技工士にあったなら,今日のような低迷状態に陥ることはなかったのではないか。若干の履修年限の加算はやむを得ない。一方の歯科衛生士においては,2̃級ホームヘルパーやケアマネジャーの資格を取得する道が開けた。この流れを踏まえたうえで,歯科技工士の苦境を打開する方略においても,歯科界全体の資源を効果的に中長期間投入すれば,全く不可能とは思えない。
歯科医師にしても過剰問題があり、昨年度から私立歯科大の定員割れが深刻な状況になっている。ただ単に歯科医師を養成する機関としての役割は終わりを告げているのだろう。スーパー特区構想やメディカル・スクール構想を大胆に取り入れた「ホーム・ドクター」の創出などの方針を打ち出す必要はないのだろうか?医科からの反発が大きい?
私立歯科大においても、将来の需給バランスを調整する一助になるような気がするんだけど。
「そんなこと言っても、現実にはムリ」ってことで、オイラの頭の中での妄想で終わってしまうのだろうけど・・・ナカナカ昔から続いて来た「鎖」は切れないですネ。
FLEETWOOD MAC - The Chain (1977)
とか書いてるうちに、秋元さんの「コップの外の嵐」が更新されてました。
第31回 「医療崩壊」の渦中に、歯科が登場した
「医療について報道されない日はないほど、医療崩壊が進んでいます。このような閉塞的な医療の現状を打破するために、『医療志民の会』が発足します」と呼びかけたのは、上昌広医師(東京大学医科学研究所特任准教授)と『医療崩壊』の著者小松秀樹医師(虎の門病院泌尿器科部長)を中心とするメンバーである。彼らは、福島県立大野病院の産科医師逮捕以来、医療事故調査に関する第三者機関の設立に強く反対する論陣を張り、官僚批判、医師会批判を展開してきた。今回は、その論調をやや転換して、立場も意見も異なる人たちに、幅広い連帯を呼びかけたものである。
小松氏や医師会改革を謳う全国医師連盟の黒川衛氏らと肩をならべてパネラーとなった歯科医師大塚勇二氏(NPO法人みんなの歯科ネットワーク・副理事長)は、医科をはるかに凌ぐ歯科の医療費抑制の、もっとも大きなしわ寄せを受けているのが歯科技工であることを指摘し、そうした犠牲の上にからくも歯科医療が成り立っていることを示した。そして義歯など補綴物の製作が市場原理に委ねられているために、中国などの安価な労働力との競争で、歯科技工の安全性はもちろん、世界に誇るわが国の歯科技工という医療専門職の職業文化が崩壊の危機にあることを訴えた。また別室の資料展示会場では、「違法入れ歯断固反対」のチラシや「みんながわかる技工指示書」(歯科医師・技工士・患者の情報共有)が配布され関心を集めた。
おもしろいもので、いままで医師不足が共通認識となった医療崩壊の議論で、歯科医師過剰の歯科は、まったく別物だと思われてきたが、このパネルディスカッションでは、大塚氏につづくパネラーらが、医療費抑制によって劣悪化する医師、看護師の現場を語る際に、そろって「歯科」を付け加えるなど、医療の危機を語る議論のなかに歯科の問題が初めて位置づけられることとなったのである。
是非、上のリンクから全文お読み下さい。
【閑話休題】
お〜い、としじいさま、秋元さんの連載は、「コップの外の嵐」ですヨ。
今回の記事で奇しくもそのタイトルの皮肉について書いておられます。
『世間の風に晒されることなく、内輪で不満を言い募っているだけでは、世間を説得することはできない。それが『コップの外の嵐』という皮肉な標題の意味(である)』
他人の書いた記事には厳しいチェックを入れる、馬さんでありました・・・
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