大学発のユニークな発明品が続々と生まれている。国からの助成が年々削られるなかで、生活に密着したアイデアグッズで企業の注目を集め、自前で稼ごうとする試みだ。
昨年10月に4号機が完成した「こめかみスイッチ」もそのひとつ。ロボット工学専門の大阪大の谷口和弘・特任研究員(35)が開発した。マイクロコンピューターと光学式の距離センサーを組み合わせ、こめかみのピクッとした微小な動きを利用して電源を入れたり切ったりできる装置だ。
手の不自由な入院患者でも、奥歯をかみしめたりまばたきしたりすれば、ナースコールや電動車いすの操作ができるようになることを目指している。
1号機が07年1月に完成して以降、改良のたびに小型化に成功し、イヤホン型の4号機は5ミリ四方になった。ガムをかんだり走ったりした時の誤作動も減り、大阪大は07年5月に特許を出願。2、3年後には実用化する予定だ。
企業も放ってはおかない。谷口さんへの講演依頼は増える一方で、昨年11月にはスイス政府が主催した展示会にも招かれた。商品化の話も複数の大手メーカーから寄せられているという。
健康分野も注目株だ。
神戸大大学院の大沢朗教授(53)=食品微生物学=は、個人に最適なビフィズス菌を使ったオーダーメードの健康サプリメントづくりに取りかかっている。
コレステロールを分解したり調整したりする働きがあり、感染症やがんの予防にもつながると注目される菌だが、個人によって定着しやすい型が異なり、摂取しても短期間で排出されてしまうのが課題だった。
ならば、個人に定着しやすい菌株を割り出して使えば体内に定着しやすく、効果が持続する――。そう考えた大沢さんは、菌株を識別できる特殊な手法を編み出して06年12月に特許出願。昨年夏には自分自身の便から菌株を割り出すことに成功した。今は毎晩自分用のカプセルを服用して効果を試しているという。
ただ、型が全体でどれだけあるのかはまだわからず、このままでは商品化は難しいため、今後は、いくつかのタイプに分けて定着程度と採算の両立を目指すという。
私立も負けてはいない。
日本笑い学会副会長で、関西大の木村洋二教授(60)=コミュニケーション理論=らのチームは昨年12月、笑い測定機「アッハ(aH)」の2号機を完成させた。
横隔膜の周辺にセンサーをつけ、リアルタイムで人の笑いを数値化する。軽い笑いのモアイ、中程度の天使、腹を抱えて笑うほどでなければ反応しない猫――。笑いの程度で三つのキャラクターが笑う姿がプロジェクターに映し出される。
1号機は07年11月に特許を出願し、吉本興業などの支援も得て改良を続けてきた。今後の目標は小型化やワイヤレス化、チンパンジーをくすぐって笑いを測定することだ。木村さんは「歩数計のように携帯できるようになれば、1日にどれだけ笑ったかがわかり、病気の予防や夫婦円満につながる」との考えだ。2号機は今月9日、関西大千里山キャンパス(大阪府吹田市)で開く「関大笑い講」でお披露目される。
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〈国立大の法人化と特許出願〉 国立大の07年度の出願件数は7448件で、03年度の6倍近い。特許料収入も03年度は約4億3千万円だったが、07年度は約5億7千万円に増えた。04年度の国立大法人化で、これまで出願しても国の収入になっていた特許料収入が、各大学の収入となったため、各大学で研究者に特許取得を勧める動きが強まった。国からの運営費交付金が07年度から毎年、前年度比で1%減らされるようになったことも拍車をかけている。

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