◇根強い慎重論、動きなく
「賛成4、反対2」。全国学力テストの実施を1カ月後に控えた今年3月、愛知県犬山市教育委員会は、テスト参加を採決した。全国で唯一不参加を貫いてきた犬山の抵抗は終わった。「子どもたちの競争をあおる」と文部科学省の方針に異を唱え続けた瀬見井久教育長(当時)ら反対委員が少数派に転落。テスト初回の07年から参加を主張していた田中志典市長が、賛成委員を送り込む多数派工作を続けた結果だった。
瀬見井教育長は今月6日、任期を1年ほど残して退任した。全員参加型だったテストは、政権交代で自分たちの要望通り、抽出型に変わる。「国も同じ方向に進んでくれる」と思い、区切りをつけた。だが、民主党が掲げる教育委員会の見直しには明確に反対する。「我々の不参加方針に対し、国は無力で市長も当初、手出しできなかった。地方の教育が独立できる理想の制度で、戦前の反省から導入された大前提が忘れられている。変えてはいけない」
これに対し01〜05年に埼玉県志木市長を務め、「教育委員会廃止論」の著書がある穂坂邦夫・地方自立政策研究所理事長は「教委は歴史的使命を終えた」と言う。全国初の小学校低学年の25人程度学級や不登校児を校外指導するホームスタディーを導入する際、文科省や県教委から「機会均等性を損なう」「学校を否定するのか」と、難色を示された市教委が二の足を踏んだ。
穂坂さんは「文科省−県教委−市教委という上意下達組織になってしまい、現場の声が届かない」と感じた。全国には改革に成功した教育委員会がいくつかあるが、熱意ある首長と委員会がうまく連携したり、特異な教育長が力を発揮する例外的ケースと映る。民主党の制度見直し方針は当然と考えている。
見直しは以前から首長中心に唱えられ、全国市長会、全国町村会は06年、「現制度は機動性・弾力性がなく責任体制が不明確」として、首長が教育行政を一体的に行えるよう政府に要望している。
日本女子大の坂田仰教授(教育学)もこの考えに近い。教員の採用・人事を行う都道府県の教育委員会は、市町村の教育レベルのバラつきを無くすために維持しながら、市町村の教委設置は選択制にすべきだと主張する。「教育委員会を置かず、学校ごとに運営を任せる地域協議会をつくることも考えられる」
教育行政の根幹に触れる方針だけに、当然ながら現場には慎重論が広がっている。千葉県市川市の田中庸恵教育長は「教育行政には普遍的で変えるべきでない部分がある。改革すべき部分は現制度を活用しながら対応すべきだ」と話す。
矢継ぎ早に政策を公表してきた民主党政権も、教育委員会見直しは、まだ動き出せないでいる。

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