昨日の続き。引用とする。
「私は仕事の都合で少し遅れて[ロケ地の日光に]到着したが、まず着いてびっくり。借り切ったペンションには、総勢二十人以上のスタッフがずらり勢揃いしていたのだ。
「これ、みんな私が使っていいんですか?」
俄(にわか)演出家の私は、すっかりビビってしまい、スタッフの一人に小声で聞く。
「ええ、自由にやって下さい。一応、すべて専門家が来ていますから……」
「その前に駆けつけ一杯飲ませて下さい」
そう気が弱い方ではないつもりだが、これだけのプロ相手に、シラフで演出家の顔などできようはずがない。
私はググッとまずビールを飲み干し、それからワイン、さらにはウイスキーの水割りを飲んでから、やおら立ちあがって、〔ああでもない、こうでもない〕をいい出した。
そのうち、だんだん調子に乗ってくるのが私。映画の時は〔脱ぐのイヤ〕と自分がゴネたのも忘れて、〔もっとあっちの女のコを脱がせて〕〔男のコ、お尻はもっと心をこめて撫でなきゃダメ。スカートの中に手を突っ込んで! 〕〔そんなんじゃ、女は感じないよ〕等々……。自分でも呆れるほど、過激に叫んでいた。
やはりヤル側と演出側は立場が違う。しかも演出の方が、数倍勝手なことをいえるのも、気持ちがいい」
最後のところが、丸茂らしい。明日まで続く。

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