年末に築地に行くと疲れます。
ものすごい人なんですから。
買い物によって回る店が決まっているので、人ごみを避けられるルートを見つけておくと便利。
店舗脇の通路を渡り歩いて隣の通りに出る。
通りに出た途端に動けなくなるんですけど、それでも随分と早く移動できます。
そんなことをしていると通路奥にある店を発見できたりして面白い。
マックモアは通路奥の店ではないんですが、長屋のように連なった商店の2階にあるので普通に歩いていると分からない。
場所は
この辺なんですが、店先を見て歩いていると見つかりません。

新大橋通りから一本場内に入った通りを築地西通りといいます。
漬物の中川屋、店頭にたくさんの野菜が並んだベジタブル石橋、鶏肉の鳥藤などを過ぎると右側上にキムチと書かれた黄色い看板が見えます。
その韓国食材屋の隣で、おばちゃんが魚卵やタラバガニを売っている。このおばちゃんの後ろに階段があるんです。
まるで魚卵店の奥に入る感じで階段を登っていくと2階はテラスのようになっていて、そこに突然喫茶店の入り口が現れる。
この喫茶店がマックモアです。

入り口にはお勧めなどのメニューが張り出してあり、どこぞの場末にある喫茶店みたい。
しかも張り出してあるのがいくら丼とか、マグロかまとろ定食とか、とても普通の喫茶店のメニューではないものばかり。
まるで定食屋。
でも一歩中に入ると確かに喫茶店。
テーブル席には電源の落とされたゲーム台がある。
なんと懐かしい。
カウンターにはカラオケの機械もあるし。
この店は夜もやっていて、ご近所さんのためのカラオケバーになるんです。
でもそんなものを置いているなんて、本当に美味しいのかと疑ってしまいますよね。
店の佇まいを見る限り大変ごもっともでございます。
最近やたらと場外の食い物屋が増えている。
観光客目当ての食い物屋だから、大量仕入れの低価格路線の店が多いように思う。
安く食べられると言うのはそれはそれで良いことなんだけれど、市場の近くだから安いと言うのとはちょっと違う。
築地市場の近くに必ずしも旨いものがあるとは限らないと言うことです。
そんな話を場内で働いている知り合いとしていたら、この店を教えてくれた。
『安くて旨いもんなんてあるわけないだろ?!
そんなもんがあったら、こっちは商売上がったりだ。
上物が高いのは当たり前だよ。
手頃で旨いもんが食いたけりゃ、市場に溢れかえってるもんか上物の端っこ食うのが一番だよ。』
旬のものは安くて旨いし、上物の端っこは高級店は買ってかないから安く手に入るという訳です。
そこで教えられたのがマグロの中落ちを出すこの店。
最近の場内外の食べ物屋はごった返しているから、落ち着いてゆっくりと食べるならここが良いと教えられた。
それから何度も伺ってます。
頼んだのはマグロなかおち定食。
この店の中落ちは本物の中落ち。
その辺で売っているネギトロや中落ちは、混ぜ物がしてあったり別の部位の切落としだったりすることがある。でもマックモアの中落ちやカマトロは場内の中卸から仕入れているから、言葉通りのものなんです。
素人が魚を捌くと中骨にたくさんの身が付いたりする。
そうであれば中落ちもたくさん出来るんだろうけど、築地の中卸はプロだから出来る限り骨に身をつけずに捌き切る。一本200キロのマグロを捌いたあと、中骨に付いた身を掻き集めても1キロにもならないことがあるらしい。
それだけの腕を持っている中卸なら当然目利きでもあるわけで、中落ちの取れる量は少ないが身質は保証済みということになる。
その中落ちとお新香、煮物、味噌汁が付いて950円。
しかも里芋の形を見れば分かるとおり、煮物も味噌汁もいい加減なものじゃない。
いい味付けです。
この日は11時頃に入ったので、味噌汁だって香りが立っている。
この日のマグロはバチ。
メバチマグロの中落ちなのだが、いい色してるでしょう。
骨の周りについている肉は美味しい。
本マグロのようにツンと来るような血の匂いはしないけれど、マグロの香りはちゃんとある。
口に入れて飲み込んだ後に鼻に抜ける香り。
魚を生で食べるときのひとつの味わいです。
それほど脂が乗っているわけではないのに、ネットリと舌に纏わりつく。
身質はシッカリしているのに、食べていると溶けていくような感じがする。
旨いマグロの身を食べているという気にさせる。
中落ちの量も5〜6切れなんて言うことはなく、十分な量があるのも嬉しい。
普通の店の刺身定食と同じ感覚でご飯と中落ちを食べると、最後には中落ちが余ってしまうくらいです。
たいていはメバチマグロの中落ちが出てくるのだが、その日の状況では近海の本マグロだったりすることもある。そんな日に当たるとラッキーだ。
本マグロに当たらなくても、普通の日のメバチだって物は間違いがないですよ。
マグロは冷凍ではなく生のマグロなのです。
生のメバチマグロの本物の中落ち。
如何にメバチマグロとは言え、生の上物の刺身がこの量で出てきたらとてもじゃないが1000円じゃ食べられない。
『安くて旨いもんなんかねぇ』と教えられたこの店だけど、安くて旨いもんがちゃんとありました。
マックモアは分かりにくい所にあるだけに、大混雑や行列とは無縁だ。
長い長い行列に並んだり、やっと入っても肩寄せながら食べるのでは旨いものも旨く感じない。
外の喧騒とは無縁の店内で食べる生マグロのなかおち定食。
美味しいものを落ち着いて食べられる、今の築地では希少な店です。

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