「木場 CURRY HOUSE 1/2 カツカレー」
カレー図鑑
築地で買出しをするために自転車で駅まで出ようとしたのだが、あまりにも陽気が良いのでそのまま清砂大橋へ。自転車で築地に行くのは久しぶり。
いつもお店を順番に回って最後に魚屋に行くと、鱒がやたらと安かった。
2キロオーバーの鱒が2600円ぐらい。
普段の半値に近い。
こんなにいらないのに衝動買い。
鱒寿司でも作りましょうかね。
色が濃いロシアのウニも1パック500円。
ウニソースのパスタにするのなら、見栄えは関係ないからこれも買い。
鶏肉、豚肉、魚介を満載して帰る途中、木場あたりでお腹が空いてきた。
家でパスタをするつもりだったのに、腹が減った思ったのはCURRY HOUSE 1/2の前を通った時だった。一度は通り過ぎたのに、逆戻り。だって食べたい時に食べたい物を食べるのが、一番良いと思いませんか?

店の名前の『1/2』は、オーナーが半人前の主婦だからとか、主婦とカレー屋の二足のワラジだからとか、いろんなことを聞いた事がある。でもご本人に確認したことがないから、本当の由来は分からない。
店内はカウンターのみ。壁にも幅の狭いカウンターが取り付けてあるので、お客さんは背中合わせに2列並んで食べている。
店に入るとメインカウンターは近くのOLと思しき若い女性で埋まっていた。壁カウンターに男性が1人。なので私も壁の方へ。女性たちが1人ふたりと食べ終わりメインカウンターが空き始めたのに、後から入ってきた男性はみんな壁の方に座って行く。
男は壁際という暗黙の了解なんでしょうか。
そんなことないよね。
カレーはビーフカレー 850円が基本のようだ。
コロッケカレー 900円
カツカレー 1000円
オムカレー 1000円
オムライスやエビピラフなんかもある。
何にしようか迷ったが、久しぶりにカツカレーを頼んでみた。
最近はインド風カレーばかり食べていると言っても、カツカレーやコロッケカレーが嫌いだとか邪道だとか思っている訳ではありません。寧ろ好きなんですよね。たまにゴルフに誘われると、『カツカレーの旨いゴルフ場なら行く』と言うぐらいですから。
ゴルフ場はインターから近い方が良いし、コースも美しい方が良い。でも、一番の基準はカツカレーが旨いかどうか。
前半のハーフが終わって食堂に行くとまず頼むのはビール。
一応メニューは見ますが、それは選んでいるんじゃなくてカツカレーを探しているだけ。ゴルフ場のカレーって、ほぼ間違いなく欧風カレー。これに揚げたてのカツが乗っかると最強です。
他の人の食事よりも出てくるのは遅くなりますが、食べ終わるのは早い。
だって、カツカレーは喉ごしで食べるものだから。
だいたい最後に出てくるから時間がない。
だから出てきたカレーをカツごと一気に掻き込むことになる。
もうほとんど飲み込むような感じで食べると、カツのコロモが喉に引っかかる。
この時の喉ごしが堪らんです。
ガンガン頬張り、グイグイ飲み込む。
ご飯とカツが一体となってグビグビと喉を通って行く時の感じは、中学高校時代を思い出させる。
いくら食べても腹が減っていた頃。
でっかい弁当箱を抱えながら食べていた頃。
いくら時間がなくてもガンガン食べていた、あの頃。
どういう訳かカツカレーを食べるときは、そんな風になっちゃうんですよ。
出てきたカツカレーは、正にカツカレーでした。
町田にある
アサノのカツカレーも好きですが、こういうカツカレーらしいカツカレーも大好き。
持ってこられた時に『揚げたてでカツが熱いのでお気をつけ下さい』と言われたが、言葉通り熱々のカツが乗ってます。カツ自体は小さめで厚みもない。特別何がどうというほどのカツではないですが、揚げたてが良いですね。
お皿が小さめなので、ご飯はてんこ盛り。そして小麦粉を炒めてトロミを出したカレールーがたっぷり。こういうカレーはあまりスパイシーじゃない方がいい。むしろ隠し味的な果物や野菜の甘みが旨味に変わっているようなカレーの方がいい。
でも
田のカツカレーほど甘みとスパイスは主張していない。
具がゴロゴロとたくさん入っているわけでもない。
下手すればインスタントの家カレーと変わり映えしなくなってしまうところを、手間と丁寧さで『お店屋さんのカレー』に仕上げている。
結構旨味の濃いカレーになっています。
この店の最大の売りは、店主であるお母さんですね。
パンの工房も持っているこのお母さんの優しい人柄。
お勘定を済ませたお客さんが店の外に出るまで何度も『ありがとうございました。またお待ち申し上げております』と頭を下げる姿に、嫌味なところは微塵もない。
決して手際が悪いわけではないが、13席ある店内がいっぱいになるとカレーが出てくるまでに多少時間がかかる。それは物腰が丁寧だから。でもその丁寧さは多少の待ち時間なんか帳消しにししまう。全然嫌な気持ちになどならない。
このへんに女性客で一杯になる秘密があるような気がします。
なんでもないカレーのようだけど、今や4店舗を構えるようになった『お母さん』カレー。
このカレーを食べて思い出したのはホルトハウス房子という料理研究家。
料理好きの方はご存知かもしれない。
鎌倉にケーキのお店も持っているが、この人が20年ぐらい前に書いた『カレーの秘伝』という本がある。副題は『これぞ最高の家庭料理』。現在は入手不可能に近いが、数年前に神田の古本屋で見つけた。
この本にはカレールーを使わない家庭料理としてのカレーレシピが載っている。手間はかかるが、それだけに愛情たっぷりの料理が出来上がるというもの。このレシピ通りにカレーを作ったことがあるが、インドカレーとも欧風カレーとも違う、ちょっと変わったカレーができあがる。カレールーを使わないのに、バーモントカレーに深みのある味を加えたようなカレー。
CURRY HOUSE 1/2のカレーを食べた時に、果物の甘みを活かしたホルトハウス的家庭料理カレーを思い出してしまった。何処にでもありそうで、なかなか見つけることの出来ないこの店のカレーは、ホルトハウス的家庭料理の流れを汲んでいるのではなかろうか。実際にホルトハウス房子の弟子ということではなくても、同じ調理発想と味のデザインを持っていると感じます。
『食を金儲けの手段にする人の気が知れない』なんて微塵も思っていないが、『金儲けだけで作っているわけじゃないんですよ』と言われているようなカレーもいいもんだ。少々高めの値段設定と感じるかもしれないが、それだけの手間と気持ちが込められたカレーだと感じる。
だから店内の空気は優しくて柔らかいのです。

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