先日の記事で触れたSidewaysの邦題はサイドウェイになっているが、これは誤訳である。原題は名詞sideway(横道、脇道)の複数形ではない。形容詞sideways(横向きの、傾いている)であり、語尾のsが落ちることは決してないのである。
おそらく配給会社の担当者が名詞の複数形と勘違いして、別にsがなくともよかろうと削ってしまったのだろうと思われる。本作品は
たまたまこの誤訳をあてはめても違和感があまりないストーリであった、という偶然は配給会社にとっては幸、一般日本人にとっては不幸である。
カリフォルニア、ワインロード、人生が熟成していく贅沢な
寄り道...(
公式サイトから抜粋)。あ〜あ、コピーからして間違っちゃってるよ。個人のレビューやブログを覗いても、寄り道・横道をキーワードにした文章が多く見られる。彼らは当然、公式サイトやパンフレットその他を参照にしたのであろう。
すぬが
原題は形容詞であり断じて名詞ではないと言い切れるのは、以下の三つの理由からである。
1)ポスターや関連商品に描かれている
イラストを見れば、一目瞭然。ワインボトルが横向きになっている!!
2)名詞であるならば、題名はThe Sidewaysになるはずである。百歩譲ってこの作品は「人生の寄り道」を描いたものとしよう。無冠詞複数名詞は一般概念を表すので、世界中のありとあらゆる横道脇道寄り道のことを指すのだが、それらが出てくるだろうか?否。出てくるのはあくまで主人公達の寄り道のみである。つまりThe sideways (they took)にならなければならない。
3)約半年前に主演俳優のTVインタビューを観たからである。インタビュアーはマイルズのキャラクターについて色々質問し、現代に生きる我々は皆マイルズのようにsidewaysなのかもしれませんね、と言っていた。He is sideways. We are all sideways. つまり 横倒しにコケてしまった人生、斜めに傾いて真っ直ぐでいられない精神状態などを意味しているのである。(参考記事は
こちら)
すぬは未読だが、原作を読めば「寄り道」ではないことは明白であるに違いない。原作小説の翻訳までは間違っていないことを祈りたい。この種の初歩的誤訳は、映画・音楽業界に多いように見受けられる。時間も予算も限られているから、誤訳が起こるのは避けられないのだろうと同情もする。人間誰しも間違うことはある。私だって間違う。
だからと言って、どっちだっていいじゃないか、たかが映画、単なる娯楽じゃないか、というような開き直り的体質は許されないと思う。映画配給会社だけでなく大手企業・団体は、できる限り正確な情報を一般消費者に伝える
社会的責任があるのだから、その努力を怠ってはならないはずだ。
くどくど書いてしまったが、言いたいことはただ一つ。
たとえ公式をうたっているサイトであってもすべてがいつも正しいとは限らないので、こと英語に関する情報は鵜呑みにしないほうがよいですよ、ということである。アカデミー賞何部門受賞とかいう部分の間違いは、まず無いと思うけど。
それにしても映画の顔とも言えるタイトルくらい、ちゃんと翻訳してほしいものだ。実はそれが一番難しいことなのかもしれない。