「あ・・・いけない!」
・・・ちょっと休むつもりで横になったら、こんな時間まで眠っちゃった。・・・
昼近くになって目を覚ましたレイコは、休憩室のベッドから飛び起きて乱れた髪と衣服を手早く整えた。
・・・課長やっぱり遅刻のことまだ怒ってるのかなぁ?・・・
レイコは鏡の前であわてて化粧をなおすと事務室へいそいだ。
レイコは緊張して壁の影からそっと顔をのぞかせて課長の様子を伺いみた。課長はこちらに背を向けて机に足を投げ出したまま考え事をしているようだった。
・・・ま、まずい・・・なんとかご機嫌を直してもらわなければ・・・。
「・・あの・・・すみません・・・。」
レイコは壁から顔だけをのぞかせた状態のまま小声でよびかけた。
「30分ほど横になって休むつもりが・・・こんな時間迄寝ちゃいました・・・。エヘっ」
レイコの声が聞こえているはずなのに課長は背中をむけたまま微動だにしない。
・・あわわ、やっぱり怒ってる・・・なんとかせねば・・・
レイコはいったん顔を引っ込めると今度は壁の影から足だけを出して、
「カ・チョ・オ・・・チラッチラッ。」っとスカートを腿の上にひきあげて見せた。
・・・ダメだわ。効果なし・・・。
レイコは意を決してうつむき加減に壁の影から歩み出ると、課長のデスクに近づき深々と頭をさげた。
「ホント申し訳ありませんでした。・・・もう二度と遅刻はいたしません。・・・だから・・。ン?」
そこまで言っても全く反応しない課長を不審に思ったレイコはそっと前に回りこんで・・もう一度スカートの裾をもちあげて、
「チラッチラッ・・・。カ・チョ・・・ゲゲっ!寝てるぅ!!」
「お!レイコ君!オハヨっ。」
「なにが レイコ君オハヨっ・・ですかぁ!私てっきり課長が怒って口もきいてくれなくなっちゃったんじゃないかと心配したんですよ。」
「いやぁ・・すまん・・。窓から陽が入り込んでポカポカしてたら・・つい。」
と頭を掻く課長の顔には怒っている様子は微塵もなかった。レイコはホッとして先ほどまでの緊張がとけて一気にまくし立てた。
「ンもう〜!課長何も言ってくれないから、ぜーったい遅刻のこと怒ってるんだとおもって・・・。私課長に機嫌なおしてもらおうとさっきからずっとこーやって・・・。チラッチラッってやってたんですよ。・・・なのに、課長も寝てたなんてぇ・・・私バカみたい。」
「ははは・・・相変わらずわが社は暇だな。こうして二人とも居眠りしてても業務になーんにも支障がないなんてね・・・はは。それじゃあ、今日は久しぶりに一緒に昼飯でも行くか。」
「はい!うれしい!!」
レイコは課長が怒っていないとわかると心の重みがすーっととれてウキウキと跳ね上がりたい気持ちだった。
・・・よかった・・・ア!?・・・
パソコンの電源を落とそうとしている課長を見ていたレイコは何気なくモニターを見て気がついた。
・・・ファイルの更新日時が・・・
モニターの画面につい10分ほど前の更新時間がついたファイルがある。それを見たレイコは悟った。
・・・課長は居眠りなんかしてなかったんだ。私が起きたのに気がついて・・遅刻をした私が寝てるあいだに自分が仕事をしてたら気まずいだろうと眠ったふりを・・・。
「課長!」
いきなりレイコは課長に飛びつくとホッペにチュっとして耳元で
「ス・・テ・・キッ。」とささやいた。
「何をいまさら・・さ、ランチだ。」


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