5月22日から28日まで横浜の有隣堂ギャラリーで私が所属している東京イラスト
レーターズ・ソサエティの展覧会が開催されます。今回のテーマは「わたしと、
この一冊」なので感動した一冊の本を選ぶためにアレコレと思い巡らせました。
今まで多くの本の装丁絵や挿絵などを描かせていただき、ゲラ原稿や本を読む
機会もありましたが、イラストレーションの仕事なので私自身の意志で本を選ぶ
という訳ではありません。今回は仕事のような制約や注文ではないので、私に
こだわって自由に一冊の本を選び、絵に描く事ができたように思っています。
私の名前の「蒼」という字から井上 靖の「蒼き狼」が初めに思い浮かびました。
森村誠一の「地果て海尽きるまで 小説チンギス汗(ハーン)」もありますが
「蒼き狼 地果て海尽きるまで」は映画DVDで観ましたが、原作はまだ読んでいな
かったし、モンゴルの英雄・成吉思汗(チンギスカン)の激しい闘争をくり返す
征服欲の物語は私には畏れ多くて、ぐうたら平和主義の私向きではありませ
ん。それに、どちらかといえば狼よりも猫の方が私の主義に合うので猫に関する
本を探しました。
夏目漱石の「吾輩は猫である」やエドガー・アラン・ポーの「黒猫」そして
海野十三の「透明猫」やペローシャルルの童話「長ぐつをはいた猫」それから
萩原朔太郎の短編小説「猫町」など、どれも物語なので具体的な内容が
イメージされて挿絵になりそうで困りました。
さらに自由な発想を求めていたのです。やっと、萩原朔太郎の詩集「青猫」に
たどりつきました。抽象的な詩集なので言葉からインスピレーションを得て
自由に描く事を試みました。
小説の物語から解き放たれたイメージはイラストレーションというよりも
アートに肉薄するかもしれません。霊魂が静かな空想に戯れ、私の感情が吹き
込まれます。青猫とは都会の憂鬱か、幸福の青い影なのか、私は夢想しながら
ペンタブレットを撫でるように手描きし、デジタルアートとして水彩画用紙に
出力される絵は一点だけのジクレー版画となりました。
版画は複数なのに一点だけとは矛盾した表現ですが、
それは展示作品一点限定で絵の花部分に小さなクリスタルを20個貼り付けて
あるからです。スポットライトに反射する小さな輝きの展示作品を
是非ご高覧いただければ幸いです。
「わたしと、この一冊」をテーマに描かれた、134人の参加イラストレーターの
作品 有隣堂ギャラリー(入場無料)にて展示、134点を販売いたします。
5月22日(木)〜5月28日(水)
午前10時から午後6時 (初日5月22日と最終日5月28日は午後5時終了)
会場の地図
http://www.yurindo.co.jp/gallery_rental/index.html

絵は展示の作品 萩原朔太郎の詩集「青猫」

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