昨年末に未知の人から既に本になっている拙作仙人の挿絵を使用した
いと電話で打診された。挿絵の再利用かと少々気落ちしながらも快諾
したところ、本決まりになったら再び電話します、と付け加えられた。
年が明け、その人から電話があり、打ち合わせに訪ねたいと言ってき
た。1月末の約束の日時にその会社の担当者と専務さんの二人が長野
県から千葉県の拙宅へ乗用車で来られ絵を依頼された。ところが、件
の仙人絵ではなく全く別の図柄の蔵元焼酎ラベルで、しかも2月中に
仕上げなければならない2種類の新酒ラベルだったので戸惑いました。
依頼内容が漠然として把握しきれないので具体的なイメージを依頼主
と確認しながら進行しようと考え、酒名は既に決まっていたので、と
りあえず酒名ロゴの作成を先行させてから絵等のデザイン全体を決め
る心づもりで、大まかなイメージをラフスケッチにして送信しました。
酒瓶商品が並ぶ酒屋店頭には毛筆的な文字だけのラベル・デザインが
ほとんどで、店頭で目立つためには酒名イメージに合ったデザイン的
ロゴやイラストも良いと考え新感覚のラベル・ラフを制作した。その
ロゴを送信したところ、依頼主は従来の毛筆的書体を要望していた事
を知り、急いで毛筆的ロゴのラフデザインに描き直して送信しました。
酒名イメージからコミカルな動物のイラストも描いたが、食品なので
動物はダメといわれたり、反対に面白いとの社内意見もあると依頼主
の意向がまとまっていない様なので困惑した。そうこうしていると二
種類の一方の酒名商標に問題が発生して一つは延期になってしまった。
それで、残りの一種類だけの制作になり、しかも制作時間に余裕がで
きた。イラストにロゴをかさねればデザインが出来る様な単純ではな
く、ロゴ、蔵元の住所名称、内容説明文、バーコード等の全体的配置
などを考慮しラフスケッチを重ねながら一応ロゴは本決まりになった。
依頼主もラフ図を実物の一升瓶に貼り検討していて、さらにイラスト
内容に具体的な細かい注文があり、なんと動物も新たに描き加える依
頼がきたのには少々意外でした。ついに、2月中に拡大サイズに制作
したほぼ仕上がりのラベル図を送信し、先行き不明ながら進行中です。
このように、まず不完全なままのラフスケッチを迅速に依頼主へ送り、
次に依頼主からの修正依頼がきて、これを何度か繰り返し依頼主との
コラボにより依頼主の要望どおりのイメージになっていく慎重策です。
アートは作者自己のために制作するが、イラストは万人のために制作
する。イラストは商品化され日常生活の中で何かの役に立ち使い捨て
られ使命を果たすが誰かを喜ばせる事ができればそれで本望だと思う。
フリーランスというのは思いがけない業界の人との出会いがあり楽し
い。人生で邂逅した人との一期一会が私のお宝だなぁと、しみじみ感
謝しています。下記はそのラベルのまだ制作途中のラフスケッチです。

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