かわいい子猫あげます!と小さな紙に電話番号も書いて電柱に貼り付けておいたら、深夜に電話がかかってきた。大事にかわいがって飼ってくださる方か確かめるために少し話していると、いかがわしい不審なことばかり話しかけてくる。都心に住んでいた頃に捨て猫を拾い飼っていて子猫も生まれ飼いきれなくて仕方なく手放そうとした昔のことだ。電話してきた男は隠語のニャンニャンするなどピンク貼紙の符丁だと思っているようだった。
そんなプッシーキャットの思い出のように猫はほとんどメスを多く飼ってきた。生き物は好きで、野良で健気に生きている姿を見ると「元気で生きろよ」と無言で話かけている。自分が生きている間にできるだけ沢山の生き物のお世話をしたいとも思うが、生き物に心奪われ冷静になれず自失してしまうので出来るだけ関わらないように自制している。それにもかかわらず今は猫6匹と同居していて、これ以上増えると生活に支障するのでオス3匹にメス3匹の去勢と避妊手術を済ませている。
最近、その中の16才くらいのメス1匹が歯も衰えて硬いドライキャットフードを食べるのも難儀しているようなので、ノドに詰まらせないように小さく刻んだチキンの生肉を与えていたら元気に若返ってきた。しかし、なぜか胴体の毛がいつのまにか束ねたようにゴワゴワに固まり長い鱗をまとったような怪奇な姿になってしまった。
食べ続けたチキンの油が皮膚に染み出て毛が固まってきたのかもと妻が言う。それで毛に付着した油分を落とすために湯で身体を洗うと可哀相なことに部分的に固まった毛束ごと抜けるありさまで慌てて洗うのをやめた。当の老猫はいつもどおり平穏な自分の居場所で幸せそうにグルーミングしている。老齢化のためだろうと思うが、今も毛束はほぐれる気配はなく異形な風情のままだ。
そんな怪奇な姿になっても猫は愛らしく、鋭い牙や爪なども怪奇イメージなのに不可解にも楽しい。怪奇な楽しさというと、ホラーテイストの仮装をして「お菓子くれなきゃイタズラするぞTrick or Treat!」と言いながら夜に近所の家々をまわりお菓子を集める可愛い小悪魔ちゃんたちの跋扈するハロウィンイベントもあり、これらの連想から怪奇な幻獣を描いてしまった。
自分と違う価値観がたくさんあり、近年では何でもありのアート状況だ。それらの全てを受け入れ開かれた心で自由な感応を楽しむが、自然を写し取り模倣するだけでなく、自然からインスピレーションを得て創造する創作こそがアートだと考え、それが拙作の制作意図となっている。「竜猫 」 DragonCat Size A4 Photoshop CS5 2014年10月制作
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