今朝の朝刊で
樋口先生のご逝去を知った。
京都在住中は
ユング心理学セミナーに
何度か通ったことがある。
また、教育分析を受けた
阪先生のお師匠さんでもある。
河合先生の朋友でもあり
日本のユング心理学の
第一世代の方であった。
Eテレでの『ユング心理学入門』は
未だにテープに録ってある。
書棚には
先生の著書が
数冊揃っている。
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『あまちゃん』を語る
創造的退行
奈保子。ユイ・ママが出戻りしてきましたね。
先生。うん。針のムシロを覚悟してね。
奈保子。子どもたちからは、「自分たちを捨てて、どの面さげて帰って来た!」と罵声を浴びせられましたね。
先生。「りあす」では修羅場だったけど、家庭に戻ってからも辛い日々でしょうな。
奈保子。でも、ご主人は許してくれているのが救いじゃないですか。
先生。そうだね。やっぱり、子どもたちは若いから、自分中心で考えるものね。足立先生は、さすがに元教育者だけあって、人は弱いもの、人生に紆余曲折はつきもの、ということを理解しているよね。
奈保子。ユイ・ママは、背伸びしてきたけど、逆境に遭って、それが続かなくなったんですね。
先生。そう。それで、一過性の退行状態になって、自己喪失したんでしょうね。都会に逃避行したのは、そこに埋没することによって、一度、自己溶解させたかったんじゃないかな。
奈保子。それで、春子たちと再会して、自己再体制化に向かったんですね。
先生。うん。彼女の行動を見ていると、creative regression(創造的退行)という感じだね。
奈保子。なるほど。単なる不適応で終わってしまう退行ではなく、次のステップに自己進化するためのものだったんですね。
先生。単なる不適応で終わってしまい、いつまでも「引きこもり」続ける人は、自我強度が脆弱なんだけど、彼女は、それほど弱くはなかったんだね。
奈保子。三陸にいくらかでも住んだことの恩恵でしょうか。
先生。ああ。それもあるかもね。知らずしらず自然や人に育てられていたのかもね。
奈保子。でも、まだまだ、子どもたちとの軋轢を修復するのに時間がかかるでしょうね。
先生。それこそ、真の親子関係になるための通過儀礼なんじゃないですか。
奈保子。ユイちゃんは、早くから母親の「無理」を見抜いていましたものね。
先生。そうそう。何らかの行動化か身体化は、早晩、起こるべくして起こったんですよ。

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