2005/9/29

渚  歌詞




砂浜に 落としたピアス 「もう探せないから構わない」
あの頃は ふとした歌が 運命のように聞こえてたよ

「あなたのシャツをはおるのが好き」そう言って
華奢な身体を静かに並べ 寒そうに
何度も僕にくちづけをせがんだ
まるでさみしすぎる子猫のように

夜をすべるほうき星のような長い髪が
僕の頬をくすぐっては消えてしまいそうで
ひとりになることがとても怖くて 何度も君の名を呼んだ
愛が寄せてくる渚の片隅で

遥か沖 霞んだ帆影 子守唄ばかり繰返してる
夢ばかり さらわれてゆく もうどんな足跡も残らず

焦れてるカモメが餌を探して 円を描く
綺麗な記憶が切り刻んでく 僕の頬
港に泊まる鮮やかなフェリー
秋の光をいたずらに遮る

どんな夜の中に居ても君は少女だった
怯える僕を諭すようなやさしい微笑み
どんな願いなら君を救えた 運命を変えられたのか
君は天使だとずっと思っていた

君が消えた海の側に僕は独り残り
水平線を見つめただ子守唄歌う
命を紡ぐリールがひとつ消えて 空回りする僕の傷
面影がずっと心を掻き乱す

ひとりになることがとても怖くて 何度も君の名を呼んだ
愛が寄せてくる渚の片隅で


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2005/9/28

飛翔  




冷めた夜の景色の中へ、僕は駆け出す
説明出来る事柄など、指先ほども無かった
だから踵を返して、君の前から踵を返して
こんなにも遠い夜の中へ駆け出していくんだ
恋人、哀れに思うのは止めてくれ
君を満足させる為に道化を演じた訳じゃない
ああ、いつの間にか
世界は冷たい風が吹き始めたんだな
寝苦しいほどの熱は
いったい何処へ逃げてしまうんだろう
走り出すことなど長いこと忘れていたのに
信じられないほどに膝はよく動いた
悲しみから逃げるための羽根を手に入れた
そんな気がして
いつしか僕は笑い始めていたんだ
ああ、恋人
別れは不幸ではない、きっとそうだ
足りないものを知る為に一人に戻るんだ
街の魂の様にネオンが歪んでいく
余計なフィルターが多分
さっきから僕の目を覆っている
恋人、君は鮮やかに駅へ向かうだろう
それが大人の態度だときっと信じて
街の魂はますます増してゆく
君が僕を引き止めないで良かった
ピエロ、何処まで飛んでゆく
勇敢な振りをしたピエロ、明日は
ステージ・メイクの必要が無いな
素敵だろう、その悲しみを
僕は自由と名付けていたんだぜ
自由になれたら素敵だなんて
盲目な夢をよくもよくも
君はきっと呆れた様に笑って
僕をリストから削除するだけだろうさ
走る、走る、走る
夜のリズムを変える様に懸命に
どうしてこんなふうに走ることが出来るんだろう
君の姿はとうの昔に雑踏の中へ消えただろうに
僕はいったい誰から逃げているんだろうと思いながら
真夜中の雑多な雑踏の中を不似合いな必死さで走り続けた
街の魂は次第に消えてゆく、どうして
どうしてそれは流れてしまったのだろう
歩道から車道へ、車道から歩道へ
動きを止めないことだけがすべてだった
疲れないことに気付いた時そのことが分かった
自由だ、僕は叫んだ
それが夢でも現実でもどうでもよかった
僕のことを知らない誰かが
僕の思いを知らない誰かが
僕を奇異な目で見つめていたって
そうだよ、他人
僕のこの回転は
君の何十年にも相当するよ、分かるかい?
移動することがすべてだ、動き続けることだけが
君は何処にいる、君は何処にいる、君は何処にいる、君は何処に
まさか今でも
僕の知っている番地に住んでいるんじゃあるまいね?
叫ぶことが出来なくなっても走ろう
出来るだけ無様な姿を晒せるようになるまで
僕は走る、僕は走る
君の移動など僕の足元にも及ばない
どれだけ泣いても足りないほどに僕は身軽になったんだ
畜生、この街は狭過ぎる!
横断歩道を叩き割って新しい道を歩いた
クラクション!せいぜい鳴らすがいい、僕は怖がらないぜ
お前のタイムスケジュールなんて
僕の犠牲に比べたらゴミ屑みたいなもんさ
降りろよ、降りて隣を走ればいい
煩わしいことなんか多分無くなるぜ、生きてる分だけ地面を叩くんだ
アクセルがとうに錆付いてしまったことに気付けないなんて!哀れだ!
ああ、哀れだよ!お前!
長い坂道の下に見える停電の様な世界、僕はそこを目指して走る
あそこに行けば眠れる気がするんだ、誰のことも恨んだりしない
あそこに行けばきっと眠れるような気さえする



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2005/9/25

艶めく唇の闇  散文



相反する表裏を反転させる様に夜の歪みの中で俺は懸命に分離していた。
不整脈の様な覚束無いリズム、神経症的なノイズが眼球にレッドラインを引く、ああ、俺は不思議なほど甘んじてカオスの誘う先を見た。
中性的な微笑を持つ忌々しい瞳の天使、契約書を読み上げるまでも無く彼女は俺の首筋に甘美な腫れを刻み込む、ああ、俺は悲鳴をあげる事すらしようとはしない…それはあらかじめ決められていた絶望の認知の様だ、キリストは多分、受け入れることをとても懸命に行うことが出来たのだろう。
彼女がマーキングした幾つかの印から本質的な血液が伝うのを感じた、俺はきっと何らかの取り決めによって形を変えられたのだ、それなのに―癌の様に体内に喰らいついている悪魔は牙を抜こうとはしない。
俺は闇に棲まうモノに見初められたのか?
血液は模様の様に不自然なほど真っ直ぐに身体の中枢をなぞる様に黒曜石の艶の上に落ちてゆく、指先で辿るとそこから隠したものが次々と漏れている様な気がした。
俺は何かを組み違えたのか?それはしかし問いほどに明確な輪郭を持ちはしない…だいたいが俺はいきなり深部に達そうと欲を掻き過ぎるのだ。これはどうだ、まるで身体の方が先に、
どうにもならぬと泣いているようではないか?
言葉のすべては粗忽なものよ…天使は唇を濡らしながら購いを求める様に床と同じ色味の声を持って囁いた。だから貴方は犯すみたいに言葉を綴っているのでしょう?
違う、と俺は答える。まるでそれが真理であるかの様に。
だがその実は、くちばしの長い鳥がどんな蟲にでも喰らいつく様なそんな程度の反射でしかなかった。天使は指を舐めながら唇の端を耳に突き刺す様に笑う―多分彼女にはすべて見えているのだ。けれども彼女は俺の背中にあるものについて一切言及をしようとはしない。おそらくそれは彼女にとっては取るに足らないことなのだろう…俺が彼女の欲望をすべて満たすことが出来るわけでもないし。流れた血は凝固して皮膚に絡みつく。まるでつたない身体に無為な奉仕の見返りを求めようとするみたいにね。その幾つかの筋を見ているとまさしく、俺の人生は性悪だったのだとそう思えてくる。
天使はオクターブ上のキーで笑い始める―呆けた俺の眼差しの中にあるものを真っ直ぐ見つめながら。ああ、お前は悪意で語ることが出来るのだな、光を通す水晶の様な艶めいた肌の天使。お前の愛情は多分鋭利な刃以上の鋭さを持って突き立てられるのだろう…俺の心臓にもし価値があるのなら戯れに狙ってみるか?夜が白み始める前に…俺の回帰熱が息を吹き返す前に。
天使は唇を舐める―夜は、
夜は何かを隠す様にいっそう闇の色を深くした。

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