2005/10/30

ジャッジ  






古い傷口を新しいものの様にいつまでも留めて
触れては傷みがそこにまだあることを何度も確かめていた
許される程度の致命傷が欲しくて、そんなのは
甘えに過ぎないことだと嫌というほど理解してはいても
この世界の中で呼吸をするための分かりやすい目印が欲しいだけさ、誰もが俺をそっとしておいてくれる様な
何か取っ付き易い―仕草や顔色、そんなものが欲しいだけなんだ
路地裏で唄を繰り返すだろう?誰にも聞こえない様にこうしてモノローグを構成していると
何時かくたばった時の為の準備をしている様な気分になる時があるんだ、この生それ自体には大して意味が無い様な
肉体を無くして初めて理解される様なさ
ねえ、存在っていうのは魂を撹乱する一種のフィルターの様なものなのだろうか?生きているということはそれだけで不明瞭な現象なのかもしれないね
傷み続けるものは腐敗したりはしないさ、単純だろうがなんだろうが、それはリアルには違いないじゃないか
何かを見落した様な気持ちがあれば怯え続けているしかない―初めて暗闇の中へ歩みを進めた幼子の様にね
俺は今でも怯え続けているのだろうか、君は今でも暗闇の中で息を潜めているのか?
こんな言葉が誰の元へ届けば俺は満足するんだろう、それが理解か誤解かに関わらず?
無機質という静寂が降り積もる真夜中、唾を飲み込む音を数えて丸くなっていると
異世界からの甲高いチョーキングが聞こえるような気がする、それは判決かあるいは誘いなのか
もしも俺が冷たくなっていたら―




君に何時か確かめて欲しいものだな





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2005/10/28

呻きのリビングデッド  




訳知りに頷きながら、時の刹那に消えていった幼い志しの面影
強固な拳で殴りつけた様に陥没した壁の亀裂には
まさにこの俺の血管の膠着を具現化したみたいなもどかしさがあった
明日には多分消えるんじゃないのか、欲望をキラキラ輝くものに見せようとした
ただ生きて居たいのみの愚かな色の花弁
ひとりごとの跡を辿って自分の心を探そうとしたんだ、笑い話に聞こえるけど本当のことなんだ
行き着いたのは喜びも哀しみも無い白色の砂漠だった、鼻腔をくすぐる空気には―ささやかな傷みがあった
切り刻みながら肥大するものが本来なら人生と呼ばれるべきなのだ、そう悟ってしまうともう行くべきところは無いのか?
行先の書いていないぼろぼろのチケット、終点だと感じたなら―そうとも、多分そうしてしまえるのだろう
無人駅のホームで
何かを構築しなければならない、晴れた空の下で隠れるべき場所が無い
レールは見えるかい、ベイビー、どこかにあると感じられるならきっともう一度浅はかな夢に溺れることが出来るだろう
レールは見えるか、ベイビー、レールは見えるか
このまま死刑執行人の合図に任せても構わないのかい?
無人駅のホームには圧迫が設えられていた、死神と踊るにはまだ少し早い気がする
生きているならことは起こるさ、たとえ今日の列車がすべて終わってしまっていても
明日にはきっと乗り込むことが出来るんだと思うぜ―新しい雑誌を置いている売店のある駅で気まぐれにニュースを買い込むんだ
鮮やかでなかろうが、細胞が死に続けていようが―知ることが出来ないわけじゃない、後が無いってことは
少しばかりやんちゃになれるかもしれないってことさ
誰も抱いてくれない冷たい建物の影で夜を明かす覚悟はあるかい?少なくともベンチの上に居れば
余計な埃を吸い込まずに朝を待つことが出来るぜ
ゴーストに怯えることなんかもう無い、だって俺も同じ様なものなんだから
にっこり笑って挨拶をしてやるのさ、話してみれば意外といいやつだったりして―魂である以上、存在するのには理由があるんだから
レールは見えるか、ベイビー、コードを拾って
今夜の向こうに続くブルースを紡ぐんだ
新世紀間も無い、暮れ方の無人駅のホーム
俺はゴーストの様に無人駅のホームでルート・フォームを繰り返している
掲示板のダイヤは風に擦り切れている、砂埃が目に飛び込んで―今日この日一番




リアルな傷み






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2005/10/26

マイアミか天国  






照りつける太陽が土地を老けさせる
踏みっぱなしのエンジン、スピードじゃ手に入れられない
果てしないものの為にアクセルを踏み続けている
エアコンは効かない、チキンの様に俺の皮膚は蒸しあがる
片手間の舗装、車が跳ね上がる度に
ステアリングが二つも三つもに分かれて見える
鼻からなんか吸い込めない空気
犬の様に舌を垂らしている
スピード・メーターを心に近いところまでぶっ壊す
どんなにカッ飛んだって間に合わないことはとうに判っているのさ
きっと俺は人生を追い抜こうとしているんだ
セント・ポーリアで出会った少女は
お互い名乗り合う前に俺が詩人であることを見抜いた
きっと俺の顔には普通じゃありえない致命的な穴が開いていたんだ
そいつの為にアクセルを踏み抜かなきゃならない
あの年端もいかない、ポニー・テールの女の子の肌のぬくもりの為に
もう三日も前から
カー・ラジオは何も受信出来なくなった
まじめに生きてりゃ良かったと思うのは決まってそんな時だ
死ぬほど
ロックン・ロールに身を沈めたくなる時も
マイアミに行こうよ、このまま踏みっぱなしで
マイアミか天国
マイアミか天国
最後のコインは神様に投げてもらうさ
裏でも表でも恨みやしない、だって俺はすでに死んだことがあるんだから
マイアミに行こう、ジョン・ベルーシがそう歌っていたから
あの偉大なブルースのポーク、俺の心をもう一度躍らせておくれよ
俺は死んじまおうなんて思っちゃいなかった、あんたのネクタイにかけてそう誓うよ
あんただってそんなこときっと考えちゃいなかったはずさ
まじめに生きてりゃ良かったと思うのは決まってそんな時なんだろう
フリー・ウェイはイカれたキッチン、そこら中で生きたものたちが焼け付いている
オーバー・ヒートした50年型のエンジンの様に致命的に
マイアミに行こうよ
マイアミに行こうよベルーシ
あんたと一緒に
黒いスーツでステップを
神様がコインを無くしたりしなけりゃ
きっと向こうでバンドは喚き出すさ
チューナを生まれた数くらい廻してみたけど、穿きっぱなしのタイヤの悲鳴が聞こえるだけで
相変わらずさ
相変わらず誰かが必ずイカれてやがるんだ
そいつは俺の脚をアクセルから離してくれない
マイアミに行こうよ
先でも後でも構わない
無事に着いたら着替えて待ってる
黒いスーツと
針金みたいな細いタイ
めいっぱい飛ばすから
ブラス・バンドで抱いてくれるって
ねえ、約束しておくれ
俺はいつでも
生き返ろうとしているんだよ







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