2005/12/30

マグリッドすら分からない  



トゥ、トゥルルッと
無邪気な口笛

まるで何にも知らない、ゆえに美しい
ゴムとびに興じる少女のように

メアリー、お前の神経の規律はいつの間にそこまで退化してしまったんだい、俺がお前に捧げた日々は、まるで無駄だったとでも言わんばかりのその無垢の加減

お前はすでに囀る鳥のような
優しい意味しか持ち合わせてはいないのだろうね…だけど聞いて欲しい、幸せそうなお前を見るたびこの胸は震えるんだ、誰が、何が、何故、お前をそんな窓辺に誘ってしまったのか?問いかける相手の見当もつかないままに
あの日を境に失われた本当のお前のことを今でも探し続けている
教会に行くのは止めたよ、お前には何の役にも立たないって分かったんだ、神様のことを嫌いになったわけではないけれど
神様は私たちのことをお気には召さなかったようだ…ごらんよ、メアリー、お前の大好きなマグリッド、ルーンの店で安く手に入れたよ―お前があの頃うるさく口にしていた可笑しみ…私にはてんで理解出来なかったけれど
どうしてだろう、こんなお前を目にしていると何故だか笑えてくるほどに良く分かるんだ


トゥ、トゥルルルッと
無邪気な口笛
愛しいメアリー、お前にはもう
マグリッドすら
分かることはないんだね…





0

2005/12/25

悲鳴  





カタログの隙間を縫って、最も共鳴するものを見つけ出せばいい
それはいつか君を果てしない高みにまで連れてゆくだろう―鼓動にも似た上昇のリズム
身動きの取れない真夜中狂ったように内奥で暴れだす本質という名の観念が
どうすれば静まるのかなんて本当は聞くまでもないことだと知っているんだろう?
カウントするんだ…おぼろげにでも天蓋が揺れるのを感じるのなら
君の呟きが聞こえる、小さな声だがゆっくりと何かをカウントしている
暗闇のさなかに見える光はただの点でも確実に網膜を射抜くだろう
どこまでも散らばりたい、必ず拾い上げられると信じているから
血流にまぎれていつかのスペルが疲労した身体を信仰している
吐いた言葉のいくつかに生かされているような気がするんだ、吐いた言葉のいくつかが俺の襟首を掴んで
虫唾が走るような世界の端っこに引きずり戻す、おい、自由になりたいからって
靴を脱いで走ろうとするのは止めな、路面には死んだアンテナが散らばっている
もっと上に行けるか?もっと先に行けるか?
カウントを取るんだ、どうしても止めちゃいけないリズムが必ずある
どんなにノイズが溢れていても俺は耳を済ませているよ、本当に手に入れたいものは必ず見つけなければ
確信のある盲目になどなりたくはない、ほらよ、そこらじゅうで唾を飛ばしているじゃないか
何も決めないでいる、そうしているしかない
心は自由だ、表層が拒んでも
きっともっと近づいてくる物は見分けることが出来るのさ
カウントだ、それがなければ
俺は何もかも捨ててしまうだろう




0

2005/12/14

蒼の下、時の墓石にて  





地団駄の夕方に哀歌を吹きながら
誰の影も無いうち捨てられたビルの踊り場で
ひとつの季節の終わりがかすれた雲にしなだれ過ぎてゆく
唄われた思いのすべてがグレイの記憶のセロファンに誤魔化され劣化したコンクリの歪んだ配列にひっそりと隠れるとき
突き抜ける天上の蒼は非情なまでに真実を湛えていた
廃棄された物陰から仰ぐ無限、迷いの無い光線が差し込む小さな窓の煌めきに魅せられるままに
腕時計の文字盤の規律を信じることを止めた
形骸の中で息を潜めている小さな神、そいつの蠢きを捕まえようとしていたのに
すでに途切れた旋律の中に俺は共鳴していた
空白は絹のように揺れる、天蓋を離れたカーテン
舐め合うような優しさの中で俺をしなやかに包んでくれるのかい
水に溶ける華、どんな生命であれば永遠を許してくれるの?
鼓動の無いものたちさえ亀裂の広がりの後で
粒子のように足元に沈んでゆくというのに
冬は澄んでいる、処女性のような触れがたい何か
真実はきっと零下の中で
途方も無い永遠を求めて凍てついているんだ
何もかも透けて、何もかも透けて曖昧な輪郭だけが
網膜の中で陽炎のように立ち昇っている
ここを昇っていけば屋上にたどり着くことが出来るのかい
足元は崩れたりはしないよね、流れ去るものに比べたら
亀裂なんてずっと確かなものじゃない
屋上にゆきたい、あの直線の原点を見つめることが出来るかもしれないのだから
光を教えて、目を背けたくなるような
魂の深遠まで照らしてくれる光のことを
俺はいつか解き放たれることが出来るのかい、砕けたセメントの粒が靴の底で憎しみのようなノイズ
閉ざされたドアの鍵は簡単に外れた、それにはもはや意味など無かったのだ
ノブに触れる指先は少年に似ていた、憧れと迷い
壊れてゆくときの中ではそれはよほど鮮やかに輝くのだ
ドアは開け放たれる、限りない蒼


俺は
お前になりたい


0



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ