2006/4/29

鳥の名前  






懐を抜け出した昔が、タンポポの綿毛のように舞う
少し常軌を逸した気候のことだったね
海を見下ろす、人気の無い展望台は
腹を空かせた獣のような太陽に脅されて
しんと息を詰めていた
遥か眼下の海は、いけないことでもしているみたいに少しだけ波の音を聞かせて
ある種の言葉にならない感情のように満ち引きを繰り返していた
遠くで旋回を繰り返す珍しい形の鳥の事を君は知りたがっていたが
あいにく僕にはそれを補えるような蓄積は無かった
おかげで絶え間なく風が吹いて
時折は身体さえぐらりと揺らぐくらいだった
あの時何か一言投げ捨てることが出来たらきっと季節は凪いだのだ
奇跡は嘘と同じようなものだってあの時僕らはまだ受け入れられずに居た
執拗な爪が裂いたような雲がたくさんたくさん太陽を飾って
空はどちらにも回る渦みたいに見えた
沖に浮かんでいた船、砂浜で遊んでいた猫、旋回していた不思議な鳥
みんなみんな気づかないうちに姿を消してしまう
長く伸びていた影が脳天に重なったとき
真実なんてどうとでもなってしまうものなんだと僕らは悟った
それで余計にどうしようもなくなって、隣に誰も居ないみたいに
爪先で短い草を探ってばかり居たんだ
取るに足らない出来事みたいに鼻歌が零れて
坂道に隠れていた雀達が着弾の瞬間のようにぱあっと飛び散った
飛行機役も兼ねるみたいにそいつらが不恰好な編隊を組んでどこかに飛び去ったので
笑おうと思って口を開いたのだけどそれがどういうことだったのか忘れてしまっていた
どうしてあんなに意地を張り続けなければいけなかったのだろう
風にはほんの少しだけ海の哀しみが混じっていた
何かを強引にひっくり返そうとして、おそらくは御伽噺の大団円のように
手に取るべき君を捜したのだけれど
そんな思惑を抱いたときには君はもう数歩向こうへ行ってしまっていたんだ
懐を抜け出した昔が、タンポポの綿毛のように舞う
少し常軌を逸した気候のことだった
あのとき、手に取り損ねたものが
今もあの風の中で鳥の名を尋ねている








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2006/4/25

凍結のLIFE  歌詞






生温い雨が 夜の街路を まどろみの様に濡らす
酔いつぶれ 彷徨う 死霊のような僕
何処からか跳ねた 鈍い光りが くたびれた目を突っつく
目を覚ませ 無意味な 夜明かしは止めろと

古い映画のような だんまりの街 せめてもの雨も 細々と弱く
沈み絡まる記憶 散らばる日付 拾い上げるほど 昔にもならず

美しい歌になだめられて眠りたいわけじゃない
新しい日々が欲しいなんてまだ思ってもいない
雨がもう少し強くなればいいとか 風がもう少し寒くなればいいとか
伸びすぎた爪を気にするように今はそう思うだけ
暗すぎる夜のさざめきの中少しそう思うだけ


住所録の中 死んだ名前を なぞっては闇に捨てる
眠っては 目覚める 寸断の明け方
朦朧と騒ぐ 乾く鼓動が 網膜に影を残す
狂ってる 疲れて 哀しみもあやふや

何度も顔を洗い 自分を覘く 落ち窪んだ目と こけた頬笑い
誰を憎むでもない 悪意が溜まる 傷を負うほどに 明確でもない

新しい朝に鍵のかかる部屋で沈黙してる
窓を刺す光り眩しすぎて不自然な気さえする
君が居なくなって錆びついた時間が 水音すら跳ね返るこの部屋でただ
真実のようにフロアを満たし僕を閉じ込めるだけ
暗すぎる夜の感触を軋ませて植えつけるだけ


美しい歌になだめられて眠りたいわけじゃない
新しい日々が欲しいなんてまだ思ってもいない
新しい朝に鍵のかかる部屋で沈黙してる
窓を刺す光り眩しすぎて不自然な気さえする
記憶などない 明日などない

美しい歌になだめられて眠りたいわけじゃない






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2006/4/24

Rain Fall  







どんな結末なら良かった
どんな過ちなら
こんなに胸を痛めずに済んだんだ
春のさなかに至らないほど
冷たい雨が肩で遊んで
苛立つ風が転がした
空き缶の行方をただ眺めてた
窓明りに照らされ
街路で跳ねる雨粒は
どんな術もままならぬ
俺の影を炙るようだ
何も無かったのか
この胸を掻き立てたあの光
確かにあると感じたそれは
水溜まりのように掻き消えてしまうのか
雨に混ざれない
哀しみが心のひだを
撫でるように落ちて行く
くずおれて
決して見つけられなかった
選択を探し出したいのに
どんな結末ならよかった
どんな道化なら
こんな街角で迷わずに済んだのか
甘い映画のように滲む道の向こう
台詞を思い出せず
捨て置かれた役者のように
退き時の分からない
濡れそぼる街路
誰にも認識されない
宝石のように光を弾いている
帰るべき道が見つからない
帰らなくちゃいけない
意味を見つけることが出来ない
本当は止んでいるのかもしれない
俺だけの上に
降りしきるのかも
拭う力もないまま
野良犬のように痩せている
いつかはこの雨の中にも
見たいものがあったはずだった
静寂が神なら
俺は背を向けよう
悟りの気に怯えて
汚れた道を逃げて行こう
どんな結末ならよかった
どんな騒ぎにも
答えられるものは無く
ああ
冷えて行くんだ
凍えて行くんだ
駄目だった
すべて駄目だったよ
雨は
きっと止むことは無いだろう
俺は
夜の中で
亡霊と化して
そして
いつか雨に







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