2006/8/14

僕らは空に向かいて二発の銃弾を撃った、それはまるで購いを拒むかの様に  








僕らは空に向かいて二発の銃弾を撃った、それはまるで購いを拒むかの様に
何者にも僕らを理解させない、それは声無き約束であって、しいて言えば
即席で設えた僕らなりのしきたりであったのだ、潰れた農場の上に切れ長の雲を引く秋の初めの空で銃弾は果てしなく彷徨い
硝煙は雲になろうとしてるみたいにゆっくりと頼りなく風に乗っていった
たったそれだけの決意で僕らは英雄になったつもりでいたのだ、安物のカクテルのさじ加減も手伝って―今にして思えばあれは悪夢だった、そうとも、本当に悪夢だったらこんなに喜ばしいことはなかったのに
僕のミスだった、引く必要はなかったはずのトリガーが火を噴いてしまったのは
ストアーの親父が僕らに金を渡した後で、急に身をこごめて…今思えばあれは命乞いのようなものだったのだろうに
酔いの覚め始めていた僕は怖気づいて思わず指に力を込めてしまった
あんなふうに見えるのだ、人が何かを奪われる瞬間というのは―それは長い年月が過ぎた今でも少しも色褪せることはなく、むしろ
いっそう激しくコントラストを増して脳に染み込んでくる
耐え切れなくなった、きっと君は耐え切れなくなった、その光景に、ねえ、きっとそうなんだよね
魅せられたみたいに君はそれをじっと見つめていたのだもの、そして僕もきっとそうだったのさ
僕らは空に向かいて二発の銃弾を撃った、それはまるで購いを拒むかの様に
真夜中にシーツを幾重にも束ねながら君はきっと戻れない道を思い涙を流し続けていたんだろう、君が自ら階段も上らずお祈りも捧げず刑を執行したと聞いたとき
僕は自分の両手にべっとりと粘りつく動脈からの血の幻影を見たよ
どうしてあんな風に思い出すのだろう
まるで恋の記憶の様にあの空はそよぐんだ
僕らはまるで新しいゲームではしゃぐローティーンみたいに
殺傷能力のある火薬の匂いをうっとりと嗅いでいた、あのときの銃は今はどこにあるのだろう―きっとポリスが処分してしまったに決まってる
君の体重が編まれたシーツに掛かる音がする、それは長い長い廊下にずっとエコーして
少しくすんだ色になった僕の両手の上で
運命が深紅のコートを纏って踊る
あの日、僕らは英雄の様に銃弾を
潰れた農場の




秋の始めに






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2006/8/12

ハウリン・ウルフ  







土に汚れた、本物の爪を鳴らして
この夜の向こうまで駆けてゆけ俺のオオカミ
誰かがライフルでお前の横腹に狙いをつけている
誰かが草むらに細工をしてお前を捕らえようとしている、すべての優しさに
すべての優しさに唾を吐いて駆けてゆけこの俺のオオカミ
真夜中過ぎは野性がむずがる時間
遠い記憶の塊が鼓動の源泉でレゾンデートルを突き上げる
牙を無くしてしまったからと、何物にも喰らいつかずに終わるのか
白か黒かしか、お前の真実は無いのかと?
目を閉じろ、いつか遠い昔に
本物の爪で何処かも知れない荒野を駆けたときの
昂ぶりがすっかり消えたわけではないだろう?
お前はまだ覚えているはずだ、生温かい身体を持つ以上、俺たちは変わらずいきものなのだから
まだ脈を打つ生肉に喰らいついたとき、生命のすべてを知ったじゃないか、血や、肉や、臓腑の
冷やりとしたしかし力強い、誰のものともつかない教えがそこにはあったはずさ
何もかも違う風に生きようなんてそいつはきっと許しちゃくれないはずだ、だって俺たちは今でも食べているのだから
記憶の中で
何もかもを焼き尽くすほどの夕日が荘厳な夢を唄う、ああ、腰を抜かさんばかりの神がそこには居たのさ
土に汚れた、本物の爪を鳴らして
この夜の向こうまで駆けてゆけ俺のオオカミ
お前は誰にも撃ち殺されることなど無い
お前は誰にも捕らえられたりなんてしないはずさ
だって俺たちの野性は剥き出しなんだもの
狙いをつけるのは卑怯者のすること
罠を仕掛けるのは臆病者のすること
お前はただ爪を鳴らして、ニュー・ワールドの煌めきをその眼に焼き付ければいい
駆けることが出来る、駆けることが出来るその世界の速度を思うと、俺は溢れてくる涙をこらえることが出来ない
なんという風、なんという風景、すべては一体のオオカミの描くいろとりどりの線画となりて
いきものとしての一番誇らしい何かを左胸に埋め込んでくれる、鼓動を聞け、俺のオオカミ
それは連鎖だ
それは真髄だ
それは悟りだ
それは昂ぶりだ
それは残酷で、そして見事なまでに美しい
両極端が巨大な天秤の上で見事な調和を生み出して
秤をぶら下げる腕は地平線のように真っ直ぐだ
俺は信じている、お前が再び太陽に出会うことを
俺は信じている、お前を殺せるやつなんてどこにもいない
俺は信じている、お前の牙は誰よりも強く
釈迦よりも様々なことを知っている
駆けてゆけ、駆けて行っておくれ
永遠の足音を俺に聞かせておくれ
太陽は死ぬことは無い、だっていきものは生まれ続けている
駆けてゆけ、駆けて行っておくれ
そして吼えておくれ
その声はきっと



俺の痺れた脳髄を新たに揺り動かすから











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2006/8/11

いつしか見送ってばかりになるのかもしれないね  








少しさまざまなものに囚われすぎた午後、二階から見上げた積乱雲の頂点
八百万の総括のような太陽が二度目の日の出を果たしたのでどうにもいたたまれない気分でアイスのカフェ・オレを息継ぎ無しで飲み込んだんだ
猛暑、各地で熱中症、今年もまたこれ言わなきゃいけないのねといった調子で女子アナが
とても必要があるとは思えないきちっとした目線でそう話した
津波のように襲い掛かってきそうな雲を避けるためにカーテンを引いたけれど、すぐに暑くなって風を入れるためにまた開けた
襲いかかられるまぼろし、いつかの夏もそんな妄想に転げまわったっけ
無理して食事をしたら胃袋がでっかいカシューナッツになったんだ
肉と皮ごしにばしばし殴りつけたけれど
そんなもの内臓まで到底届くわけは無いよね
憎しみでも抱いてるんならまた別だろうけどさ
心霊手術が出来たらな、引っ掻き回してチューンナップするんだけどな、だけどどっちみち気をつけなくちゃいけないことが沢山あるんだろうからこの部屋じゃまあ無理としたものなんだろうな
だけど、引っ掻き回してみたいって願望は常にあるんだよな
郵便配達が手紙を落とす、ポストはいつでも究極の受身で入れては出されて入れては出されて
あーあんたみたいなやつをもう一人知ってるよなんて話しかけてしばし自己嫌悪に陥る
朝にはもう少し涼しい風が吹いていたんだけどな
冷風扇なんて糞の役にもたちゃしねえ
ああ、暑いな、季節のことはいつも独り言にしてしまう、みっともないから止めなって友達にはよく言われるんだけど
近頃地球は狂ってるらしくて
夏はとことん暑く冬はとことん寒い、四季折々はそろそろ崩壊するかもな
そのせいか最近人を見送ることが多くて
作法もそこそこ覚えてはきた…人を見送るほどに生きてしまったのだなぁ
台風がどうのこうのと五月蝿く言っていたけどどうやらすっかりそれてそのこと自体は別に悪い気分じゃないけれど
まといつく汗だけは何とかならないものか
昔よりも頓着することが少なくなった、しかしその代わりに
些細なことで人を憎む機会が増えたような気がする
コミュニケーションという単語はとっくの昔に俺に愛想を尽かして逃げていった、あの人もしばらくは仲良くしてくれているけど
俺の陰口を話しているのをなんか聞いたような気がする、気のせいだったらいいんだがって常々思っているんだが
まあそんなこと考えたってどうなるもんでもないやね
嫌われることにはとうの昔から慣れていて、それもこれもわけも無く嫌われることが多かったからなんだけど
どうやら人の真似が出来ないことが原因らしいよ
まあそんなこと考えたってどうなるもんでもないやね
今日何度まで上がるって?あーん、安いやつでいいから温度計を買っておけばよかったよな、知りたい気分ってのはいかんともしがたいや
馬鹿になって生きるのもいいが
馬鹿になると出来ないことがやたら増えるので
俺はまあ一生懸命抱えていくことにした、まあそんなこと決めても
どうなるってもんでもないけどね


おっと
雲が居なくなっちまった








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