2006/12/31

ニューイヤー  








閉じた眼差しからうかがえる視線だ
破れた鼓膜がとらえる音だ
耳まで裂かれた
おぞましい唇が放つ母音だ
指の根元に裂傷を作って
壁を殴ると赤いラインが引かれる
注射器を盗んだ少女が見よう見まねで空気を注ぎ込む日曜日
色めきだった虫たちが電光掲示板を目指して飛ぶ
熱い国で捕獲された
戦犯が戦犯に処分される
テロリストの卵がまた植えつけられる
虫眼鏡で死体写真を眺めていた
虫眼鏡で眺めた死体写真は
リアルとはまたひとつ趣の違う
克明な輪郭というものを持っていた
死とはなんぞやと問いかけてみるつもりだったが
ネガのフィルターに阻まれて匂いまでは届かなかった
人が首を切られる動画の
真偽が問われる時代です
実感など性的玩具の
チラシにくるんでマクドナルドに落としてきてしまえ
猫のエリー、昨日自己顕示欲の強い
弱虫に踏まれて死んだ
上面だけで猟奇を捕らえるなんて
列挙される被害者達に失礼だというものだ
ショッキングカラーのアイデンティティばかりが流行ります
なんでも手に入る時代じゃそんなもんだよね
アダルトムービーのボカシが偽善的に見える世代
子供だって発育が良いから
私服でならばラブホテルもちょろいもの
色めきだった虫達が電光掲示板を目指して飛ぶ
数グラムいくらで取引されるドリーム
廃ビルの上で長く生きたカラスが含み笑う
踊ろうよお嬢さん、今日はみんなが懸命にけじめをつけたがる日
音楽は古いものにして
プログラミングにはビートなんてないから
虫眼鏡で君がひた隠しにしているものを拡大したい
フロアの床が少し沈むのは
下に不具者が隠れているからじゃないよね
ジャック・ナイフを持っているから
そんな悪戯は容赦しないよ
七色のライトの速い点滅だ
人の影が分身して
よからぬ企みを忍ばせている
ここに刃を当てると
どんなやつでも簡単に死ぬんだぜ
この前の葬式の
主役だったひとが笑っている
まるでふくよかな鳥の鳴き声だ
正しい焼香の仕方を知らないから
誰もきちんと見送った事がない
ああ、セロハンで加工されたライトの色味は
死体写真のそっけなさにどこか似ている
血は隠さなければならない
それが小便のように温かいことや
間欠泉のように
出口を求めていることは
禁忌のように隔しておかなければならない
色めき立った虫達が電光掲示板を目指して飛ぶ、時々バシッと火が弾けるのは
一瞬にして存在が消滅するせいだ
注射器を盗んだ少女が紫に化けて倒れている
廃ビルの上で
カラスが残り時間を数えている









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2006/12/29

半睡の白んだ路上(アティチュードに激しさだけを求めるのはお門違いだ)  










眠れずに彷徨い出た、明方の街の遥か彼方は白色に輝き始めていて、ああ、俺は完全に眠り損ねたのだと空缶蹴っ飛ばして唾を吐く
すんなりと眠れるわけが無い、いつでも俺はがっくりとしたものに圧し掛かられていて、加圧の下の肉片とでも呼ぶべき内面の様相を呈している
プレッシャーというのは慢性的なものが一番始末に終えない
だって我慢出来ない事も無い重みだから、それが正しいのかどうかも分からないまま―骨が軋むまで抱え続けてしまう
そうなってからでは選択出来ない、そうなってからでは何も選択する事なんか出来ないんだ、折り曲げ続けて破れ始めた膝の上皮から
重圧に押されて断絶した膝の骨が食み出しているぜ、そうなってからでは何もかも遅い、ああ、選択を間違えたのだなと
潰れるまで抱え続けるしかない
お前が今現在抱えているものは、お前が本当に抱えるべきものか?やり直しが聞かない場合は確かにあるぜ―それが心を削らなければいけないものなら尚更だ
もしかしたら俺は膝が破れ始めてるのかもしれないと思う事があるよ、すでに俺の膝関節は加重に耐えられなくなっているんじゃないかと
眠れずに彷徨い出た、明方の街の遥か彼方は白色に輝き始めている
明るくなるとなぜかみすぼらしい繁華街の店のドアが開いて、最後の客を女が見送っていた、にっこりと笑って手を振って―まるで友達にやるみたいに
客の背中が小さくなるまで見送ったあと年代もののイブニングの女は
振り返りざまだけに心情を吐露した
野良犬が自分の仕事を遂行している、週末の朝はきっと稼ぎ時なのだろう―変な団子なんか食わされるなよ、痩せこけた野良犬
お前の仲間はこの街でどれだけ死んだ?
金の無い若いカップルが凍えながらバスを待っている、男はうたた寝をしていて―女の方はこれが本当に愛というものなのだろうかというような顔をしている
その日最初のバスがもうじきやって来るだろう方角を見ながら、彼女はきっとバスに乗り込むために目覚めた彼氏の最初の一言にささやかに賭けているのだろう
浮浪者がさっきの野良犬に石を投げている―無駄だろ、生きようという意思はやつのほうがずっと強いもの
お前は野良犬と張り合うだけの人間だってことだよ、詩でも書いてみな―胸がムカつくようなリアルがそこにはあるかもしれないぜ
大きなホテルから洒落たサラリーマンが何人も出てくる―あいつらはきっとコンピューター関係の仕事さ、明方から―日付変更線までプログラムと睨めっこをするんだ
彼らの夢は10進数か16進数、あるいは2進数で表示されるに違いない
コンビニのマークをつけたトラックがシグナルが変わるのを待っている、運転手の名前が後ろに貼り付けてある、でもよ
そんなのがいったい何の保障になるっていうんだい?情報公開が求められるような仕事じゃないさ、仮に何かあったとしても―みんなロゴマークの事しかきっと覚えちゃいない―商業的観念に埋没する個性、お、白々しいいいフレーズだ、今夜使うことにしよう
公衆便所で代行の運転手が歯を磨いていた、磨くそばから雑菌を放り込むようなものだが―きっと晩飯がよっぽど脂っこいもんだったんだろうな、あるいは
そもそもそのくらいの意識しかないか、どっちかだ
どこかのマッサージ屋で客引きをしているチャイナガール達が首を振りながらなにやら話していた、仕事を真面目にやりすぎたのかもしれない、一時間前なら俺も危なかったかな―風俗って仕事は多分現代の吸血鬼なんだな
ノスフェラトゥって言ってやった方がやつらは喜ぶのかもしれない、細かなニュアンスというのは外国人のほうがこだわるんじゃないか―そうでなきゃ日本にだってもっと優れた詩人はいっぱい居るだろう
いや、優れたってのは、良くないな…そう、イカす詩人がたくさん居るんじゃない?
24時間営業のタワーパーキングからパリ・ダカールででも走ってそうなステッカー貼りまくった車、アスファルトの上を爆音でぶっ飛ばして行った―命を賭けなくていいレースなら誰だって一等賞だ、ギター・フリークスで最高得点を出せばジミヘンだって黙らせることが出来る、それがこの街のアティチュードってもんでしょうよ、掲示板でグラミー賞にケチをつける顔の無いやつらども
バスが来た、バスがやって来たよ―バス停を振り返ると



女の姿はもうどこにも無かったんだ












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2006/12/29

漆黒  







あなたの漆黒を喰らい尽くしたい
あなたの漆黒に自ら口をつけて
あなたが阿呆のような幸せを得るまで喰らい尽くしたい
それであなたがもしか何かを永久に失うとしても
それが私に出来るただひとつのことであるならば
私はそれを迷いなく遂行するでしょう
私を愚かだと思いますか
私を愚かだと思って
私を独房に閉じ込めて飢え殺しますか?
私は喜んで従うかもしれません
是であれ非であれ
それが私のしたことの結果であるのであれば
あなたは漆黒を抱いています
私にも漆黒が存在しています
私たちは漆黒のためになにを失うのでしょう
私たちは漆黒を前に何が出来るのでしょう?
たくさんの人がそうと知らずに
その中に飲み込まれて死んでゆきます
いつも見送るだけの私たちに果たして
どれほどの価値があるというのでしょうか?
そもそもその漆黒は
なぜこれほどにも私たちを飲み込もうとするのでしょうか?
時折昨日のことが思い出せなくなります
なくしてしまったあとのがらんどうには
なにか大切なものがしまわれていたのではないかと不安になります
それが取り返せないことが分かっているからです
このいまいましいがらんどうを前にして
私たちに出来ることはなにもありません
どこに行くのでしょう
大きな傷を見つめたまま
どこへ行くのでしょう
欠損を抱えたまま
遠い明日は震えながら
太陽を待てずに壊死していきます
それであなたがもしか何かを永久に失うとしても
あなたが阿呆のような幸せを得るまで喰らい尽くしたい
漆黒があります
それを前にしていったいなにが出来るというのでしょう?







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