2007/2/26

術式の標的  










記憶の陽炎が
燃え盛る
熱の無い炎のように、俺の頬を打つ、おお
死に例えるほどの苦しみは
もう、無くなってしまった
蒼褪めた頬が削げ落ちたぶんだけ余計な言葉を覚える
君の心臓のひだに俺の致命的な欠陥を移植したくなる、お近づきの印しに
ブレイクビーツのようながらくたの鼓動を忘れられないと思って欲しい、君の心臓に致命的な俺を
昨日の雨音を数えていた、今になって
認識という感覚にそれほどまでのタイムラグがある
フィルムをセットして三日後ぐらいに
ようやくオーバーチュアを映し出す映写機のようなものだ
いったん針が飛び出すとデジタルは対処のしようがない、それが怖くて
新しいしきたりとやらを取り入れる気になれないのさ
記憶の陽炎が燃え盛る、熱の無い陰鬱な紅い炎のように
何を燃やしているのか俺には判り過ぎるくらい判るよ、あの中で縮こまる曖昧な肉塊は
まさしくこの俺が取り逃がしてきた大切なもの達さ
それは他の誰でも無いこの俺の落度なのに
被害者面をして蹲る荼毘の午前零時
指先の震えは交感神経の欠損だと皆が言うけれど
俺はそんなもの認知した覚えが無い
人ひとり老け込んでしまうほどの長い長い年月の果てに、ようやく見つけたものがそれしきのものだなんてどんな脚色を施しても嘲笑えない
墓穴を掘るには往生際が悪過ぎる、死後硬直の姿勢にはきっと
四肢をぶった切らなきゃ棺に収められないような手間の掛かる形を選ぶだろう
なにかがぶすぶすと焼けて灰を天井まで舞い上がらせている、ささやかな気流によってそれは渦を巻いて
まるで神に拒まれた天国への階段のようだ(どんな韻律を使用してもあの上まで辿りつくことは出来ないだろう)
鼻先をなぞるように外気は冷たく暗く
陰鬱な紅い炎が壁に投影する揺らぎに照らされながら温度を失っていく
劣化劣等ホモサピエンス、いったいどうしてこんなものにしがみついてきたのか
子供のころに集めた切手が全部くだらない紙切れに見えるみたいに、壁を抜けられない自分の影に中身の無い感慨を投げつけた
中身の無い感慨は卵のように脆く壁の上で砕けて
跳ね返った破片が右の眼の眼球に刺さる、俺は意地でも眼を閉じようとは思わなかった
それは具現化された熱の無い炎、涙のように俺の目尻から滴ってくるのは
傷を受けたことを幸せだと思った、俺の存在は
手早く施工された細工よりはなんとかなるものかもしれないということが判ったから
それがいったいどういう意味かなんて誰に説明するようなことでもない―そんなことがあったって説明だけでそれはひとつの証明になる類のものさ―ト書きのついた日記帳に書かれているものは日記ではなくて脚本のはずだ
説明の仕方を間違えることだけはしないんだ、それだけは確実に上手くなるものなのさ
取扱説明書なんて、書くにも読むにも蓄積が必要になるとしたものだろう
俺は説明の仕方を間違えることだけはしない、それは俺の存在を
のっぴきならない場所へ追い込んでしまうことにもなりかねないから
もっとも、それが出来たからってこんな場所に居るようなら―それはまったく無駄だったってことになるんだけどさ
熱の無い紅い炎はこちらの思惑を全て理解しているらしくて
噛みつかない程度に執拗に炙り続けている、その中で追い詰められる影のように縮こまる肉塊が
いったいどんなものを抱きしめていたのか俺はきっちりと理解している
炎が消えるころ降り積もる灰は遺書の代わりになるのかもしれない
俺は遺言を残すほどの規律を求めてはいないから
降り積もる灰の形状に様々な言葉を見るのかもしれない
死に続ける暁に見える灰の形状とはいったいどういうものだろう?炎はまだやむことを知らない、それがもしも俺という存在を媒体にして燃えているのであれば―俺はメスを左胸に突き立てて脈を打つ心臓を君に差し出すかもしれないね
移植したいんだ、君に
その無軌道な流れを記憶してもらいたい、存在などどんなことをしても永遠になどなれないから
オペは何時でも始められる、俺は




無造作に身体を床に投げ出せばいいだけさ










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2007/2/23

すべてリザーブされない(例えば雨の長いスパン)  











くらがりで神懸かりな瞬間を待って
おざなりなからくりが転がるのを見てた
戯れるいきどおりほつれる袖先
うずくまる悶える淡くなる途絶える


百万回も刻まれた嘘
遠雷のこだまする窓
挽回が砕け散る音
ぞんざいな捨て台詞の末路


きみの思い通りに失速してあげよう、大きく眼を見開いて、失策の認識を演出してあげるよ、ハロゲン・ライトの照射域みたいに出来過ぎたピッチで果てしなく
嘲笑の標識は大きめの方がいい、きみが欲しているシナリオに沿って、そんな振りをして
ぼくは道化師になってどうかしたみたいな素振りを連続するんだ


きみに見せてあげよう
きみに見せてあげよう
きみに見せてあげよう
きみに見せてあげよう
きみに見せて
ちょっとやそっとじゃ出来ない満足を充満させてあげよう
それはぼくのパーソナリティとは少しも関係がないから
ぼくは際限無く、愚者で在ることが出来る


ところで旅行してるんだ
短い旅の一夜なんだけど
冷たい雨が降り続くせいで
醜悪な内観を余儀なくされているんだ
醜悪な内観が雨と同じだけ降り継いで
乗り継いだ列車の数が曖昧になって
まどろんだ瞬間に一番酷いひと隅を見つけた
そこにはぼくがいた
そこにはぼくがいて
一番熾烈な記憶に死に継いでいた
ここはぼくが知り尽くした領域ではないから
貪るだけの猥褻動画みたいな感じでずっと受け止めていた
あぁ、時に依っては甘美な感覚に違いないのに
自由にならないってことはとっても辛いことだよ


明るいものを見つけたいけど雨がやみそうもない
明るいものを見つけたいけど雨がやみそうもない
きっと喜ばしい震えなんて
逆行催眠にでもかからなきゃ引きずり出せはしない
窓に顔をあずけて濡れた路面をずっと見ていた
雨は明日にはやむらしい
濡れた路面はぼくに余計な予感を加算するだろう
アラームなんか仕掛けない、ぽっかりと空いた時間ほど



眠りは
素っ気なく終わるものだから











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2007/2/17

寝床はとうに凍結していた  









寝床はとうに凍結していた、オレは百万回分を一回に濃縮還元したタメイキを吐いて


その日一番オレにイヤな思いをさせたとあるやつのハラワタを


想像上の作業台で麻酔も打たずに引きずり出したのさウヒャハハハ


なんて
みみっちい話したところで気分がハイになるわけでもなく


暖房器具は不器用な女のような局地的な優しさばかりならべてる


そんな夜に、雨戸まで閉じた暗闇のなかでじっと籠っていると


自分の人生が誤植まみれの週刊誌みたいに思えてきて、誰あろうこのオレサマこそが誰よりも憎らしい


別に自戒とか自虐とか自棄とかひけらかしたい気分でもなかった筈なのに


ワイルドローズの香りの効能に深層心理とか関係してたかね、それよりもいつからか凍結したままの寝床、オレを二月の間中眠らせないつもりなのか?


枕に左右のパンチを叩き込んだが、超みっともない感じがしただけだった


愚行がきらびやかなのは思春期だけの特権なのさ、そりゃあもちろん理解しているけど


誰もがそれを捨て去ることが出来るってわけでもねえじゃんか


ああ、冷たい寝床だ、震え上がるくらい冷たくて


心がどこかに逃げ出しそうになっちまう


暖房器具は不器用な女のような局地的な優しさばかりならべて


オレはまだどこかでそいつがなんとかしてくれるんじゃないかと考えてる


眠れなくても夢は終わるぜ
でも、そのあとには


執拗な長いエンドロールがある、だけど


本当はその画面に、なにが書いてあるのか



眼を凝らして、読んでみるべきなのかも、な








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