もとの、もくあみ  
















薄暗がりで誰かを嘲笑い過ぎて、いびつなかたちにかすれたこころだ
綿菓子のように頼りがいがない、真下へ向かって飛ぶジェットプレーン
あなたは明かりを消した部屋で、わたしは名札を出さない家で
小さいけれど剥げないシールみたいな暗闇を見ている、床に根が生えたよう
今宵の世代の黙示録は数枚めくれば終局を迎える
あなたは真横に引いた傷で、わたしは胃まで零れる嘔吐で(サルトルなんかメじゃないネ)
近ごろの暖かさのせいで雑草を食らう羽虫が迷い込み―食欲を満たそうとする、わたしは違う、わたしは違うよ
雑草なんてハードコアには一生ご縁のない内奥
ライトの明かりをふたつ落してかりそめの休息の準備をしよう―悪夢の中で出会うことがあったら声をかけておくれよね、閉塞の中で期待してるよ
プリンスがコンピューターのうたを歌ってる、最近の音楽はターンテーブルに乗らない
あなたはノートを閉じた机上で、わたしは誰かに書かされる言葉で
ねぇ、ねぇ、本心なんてさ、どんな分からなさで語られたって構わないものじゃない?
こころのかたちを直そうとして何度もしくじったあとで
それは直してるんじゃなくて改ざんしてるんだと気付いた
腫瘍のようにわたしたちは、真実を求めて生きていくのですね
きれいなことなんてないね、きれいなことなんてないよ、いろんな言葉がチェリーブロッサムなおもむきのこんな世界で
いったいどんな確信にしがみつけるっていうんだろう?溺れる者はわらをも掴んで、わらと一緒に沈んで行くんだ
沈没が沈殿になって、いつかは地層になって
何千年かあとに研究なんかされてたら笑っちまうよね
王様以外の、庶民とかのミイラってどうしてできるか知ってる?
それは災害と放置、災害と放置、災害と放置のたまものなのさ
報われない死が掘り出されて、レンドゲンを撮られる、ガッシャン
それで歳とか性別とかを割り出してるひとたちがいるわけです
何の為って
さあ
なんででしょうね
明かりをつけることは
わりといいことづくめだって
昨日
新聞で読みました
だけど、寝るには眩し過ぎるから






また
もとの
もくあみって有様です















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タイミング  












飛び降り自殺の野郎の影が派手なネオンを一瞬遮り
それよりも派手で忘れられない思い出を付近にばら撒いた
時刻はだいたい七時半過ぎ、小腹を空かせて転がり込んだ老若男女が
食べられないどころか吐き出しながら、でも
事の顛末を見届けるまでは立ち去れない覚悟で遠巻きに輪を作っていた
誰かが交番に走ったのか、それとも店舗の誰かが連絡したのか
驚くほどの早さで警察がやってきた、彼らは飛び降りた男の状態を確認すると、何事か頷きあって
ひとりが無線で「死亡」と告げた
それは多分素人でも可能な確認だった、無脳症の赤子の写真みたいな様子で
騒ぎの主は仰向けに倒れていた、携帯電話のカメラのシャッターの音がふたつ、誰かが咎めるように振り向く
「あんただってずっとここにいるじゃないか?」そう囁かれたら
あいつ、いったいどんな顔をするだろう―俺はそこを離れて、どこかで食事を取ろうとした
件のビルからそう遠くない路地で派手な髪の女子高生が電話をしながら吐いていた
「そうなの、マジ見ちゃって〜、ぐしゃぐしゃでさ、ぐしゃぐしゃ…あーちょっと待って…(ゴボゴボゴボ、フィーッ)もうほんとサイアク、肉食えない…」
なんでか知らないが彼女達は俺のスイッチを入れてしまった、俺は周囲を見回した―こちらを見ているものは誰もいなかった、俺は彼女らのいる暗がりに近寄り、丸い背中を一度づつ蹴り飛ばした、「おほっ」と彼女らは言った
俺は何食わぬ顔をしてそこを離れた
少し歩いたところで見知らぬ女に腕をつかまれた「こんばんわー」「こんばんわ」女はおじさんにウケそうな清楚な身なりをしていたが微笑が胡散臭かった
「おつかれですかぁ〜?」俺は語尾を長く伸ばす甘え方が世界で二番目に嫌いだった「凄くお疲れだよ。」
「癒されたいと思いませんか?」「思うね〜。」
「じゃあ、私達の集まりにきませんか?魂のレベルでキレイになれますよ〜?」俺は彼女の腕から自分の腕を引き抜き、彼女の方を強く抱いた
女は、えっ?という顔をした「ちょうどよかった」と俺は言った
「ついさっき、そこで飛び降り自殺があったんだ。そいつの魂を癒してやってくれ、さあ行こう。」あ、えと…と女は言った、明らかに困っていた
「なにか飲みたくないか?缶のお茶でよければ奢ってあげる。」と俺は助け舟を出した、うん、うん、と女は頷いた「待ってな。」
自販機のところで振り返ると女は一目散に逃げていくところだった、俺は人目も気にせず大声で笑った―おまけに女は自殺の現場に向かっていた
缶コーヒーを飲んで一息つくともうやることはないような気分になって帰路についた、

あーあ






ダブルブッキングなんてまさか思いもしなかったぜ









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インターミッション  












削除して
削除して
削除して
それで
記憶まで失くした気になった、僕と君とのインターミッション
風が吹きぬける右隣を連れて見つめた街灯は、水晶体を傷つけるくらい眩しい
コンビニエンスストアの明りにほっとしてしまうのは
彷徨っているのが自分ひとりではないと納得してしまえるせい
孤独な気分なんてそう簡単に受け入れられたりするもんじゃない
状況は急変するだろうか?すべて消してしまったと思っていた物理的な君がレターボックスの隅っことかからひょっこり現れて、そこに記された君の住処が現実よりも遠く思えるそれとぴったり一致するかどうか何時間も眺めて
アドレスにアクセスを試みたりするんだろうか?
そもそもこれは本当にインターミッションなのか、僕達の緞帳は一時的に下りてしまっているだけのことで
開幕ベルとともに物語は次へと進むのだろうか?
僕は「ターザン」を立ち読みする、肩凝りに効果のあるエクササイズを頭に叩き込んでポテトチップスとクリームツイストを買い、凄く遠回りをして部屋に戻る
時刻はもう真夜中近い、「約束されないけれど次に何かがあるのかもしれない空間」の中にいま僕は居て
そして、そうした空間はとても苦手とするところ
買ったものを袋から出す事もせずにまんが喫茶へ向かう、インターネット席を取って、匿名の掲示板で乱暴な言葉遣いをした「引っ込んでろ、厨房」と言われたのでさらに暴れてやった、誰もが誰もどうでもいいことを躍起になって言い争っていて、それが「真夜中過ぎ」の出来事である事すらどうも実感が無くなる
一段落つかせてコーヒーを取りに行って戻ってくると誰かが僕の上着のポケットを漁っている「やべえ間違えた」とそいつは薄ら笑いを浮かべてそそくさと離れていった、僕はそいつの後をつけて、そいつが何番の席に居るのか確認した、席につくときに目が合ったからにやりと笑ってやった、もちろんなにかしようなんて考えてもいなかった
掲示板に戻ると誰かが新しい火種を持ち込んでいた、僕はもう参加はしないでじっとリロードしていた、とんでもない言葉が時々現れたけどタイミングや論調についてはおおむね非個性と言うより他無かった
まあ僕だってさっきまでその中に居たんだけど
コーヒーを飲み干したら眠りそうになる、脳内に蒸気が充満する、ほんの少しチャンネルを変えればいいんだよ、湯気に隠れて誰かがそう囁いた、ん、と僕は生返事をした
六時間潰して、明るくなる少し前に外に出た、途端
背中に熱湯をぶっ掛けられたような痛み、振り返るとついさっきも見た背中が朝もやの中に走り去っていくのが見えた、あぁ?と僕は叫んだ、途端に熱が身体中を走った、不思議なほどに気持ちは落ち着いていた、携帯を取り出して救急車を呼んだ
「背中を刺されました場所は…」話ながらこれってちょっとかっこよくね?とか考えた、幸い傷はそんなに深くなかった、病室に来た警察にありのままを話した、席を確認していたのでそこから犯人が割り出せるだろう
病室でひとりになった、僕は







君がそこから入ってこないかと
ずっと
考えていた











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