2007/6/1

ベイビー・ブービーの憂鬱(有能な爆弾処理班)  










なんとなく返り見た国道の終わりに
羊歯のように垂れ下がっていた死神の笑い
今夜もブービーだった
ケツについてるのは
今日までに死んだ誰かの残滓さ
伝えるべき事があったはずなのに
途切れた昨日に手を伸ばしているうちに忘れてしまった
ウー・ラ・ラと
誰かが歌っていたんだ
狩猟犬みたいなしわがれた声で
今にもペッと痰でも飛ばしそうな
ザラザラでガラガラのしわがれ声さ
なのになんで
こんなに美しく聞こえるんだろう


点滅信号、点滅信号の下に、俺は立ち尽くしていた
「押してください」と赤いランプが控えめな女のように脅していて
押したはいいがいっこうに青色になろうとしない
渡ってしまってもよかった、馬鹿正直に待ちつくしてから
向こう岸に立ったときに初めてそんなことを思う
追いつけるものが数えるほどしかない、偉大なる内奥はいまだに遥かな地平を目指している
ヘイヨー、舵を未来に目指せ
自分のことを笑ってくれる人間のカウントをこの世で最高値にするために
ベイビー・ブービー、かろうじて呼吸をしている人間の
お前はまごうことなき最後尾さ
なんとなく返り見た国道の終わりで
羊歯のように立ち尽くしていた死神の
三日月のような鎌の切っ先のエロス、それは確かに誰かの存在を
暗い沼の中へ放り込んだのだろう


国道沿いのレストランの窓際に腰をかけて
(おそらくは)大々的に宣伝しているレディースグラタンセットを食べている着飾った週末のOLと視線が合った
俺は出来る限り切迫した表情を作って
「爆弾が仕掛けられてる、逃げろ」
と、昨日マンガで読んだ台詞を口パクで言って
後ろを気にしながら全速力で逃げた
しばらく走った後でネスカフェのコーヒーを買って飲みながら
あのあとレストランが大騒ぎになって
ローカルニュースで報道されたらそりゃあ…なんとも虚しいことだろうなと考えたんだ
一息つきたくなって
ツタヤに入って週間プロレスを立ち読みしていたら人差し指でチョンチョンと肩をつつかれた
きょうび知り合いに出会うことなんてもう無いと思っていたなと思いながら振り返ると
そこに居たのはついさっき爆弾の告知をしてやった着飾ったOLだった「作戦は失敗したわ、グリフォン」とそいつは肩をすくめながら言った
「爆弾は私が処理しました」
俺はしばらくぼんやりと立ち尽くしていたが、「そうか」と一言口にして
週プロを置いてツタヤを出た
女は黙ってついてきて
俺が赤信号で立ち尽くすと距離を詰めて腕を取った
俺は空を見た
雲が少し多いけれど
星がちらついて見えた





そうか
爆弾は処理されたのか。








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