2007/12/14

暗闇の色味を塗り分ける(決して塗り潰すものではなく)  












凍えた指先にへばりつく意地だ
壊れた玩具に染み込んだ過去だ
廃れた音楽に閉じ込められた未来だ
硬く閉じた唇の中で四散した言葉だ
数えた死体の数は歳の分だけ
逃した獲物の大きさは身の丈と同じくらい
ここに無いものを真実と呼んで生きさらばえてきた


血の中に錆が混じる気がする
やがて全身を侵食していくんだ
すべての関節が濁音を交えて起動し始める前に
鼻先にぶら下げられた人参の様なこの断層を飛び越えることが出来るのか?


明日の朝はより寒くなる
明後日の朝は雪になるかもしれない
上空に寒気団が留まっている
だけどやつらはその気になればいつでもさよならと言うことが出来る
まあ
さよならと言うことが出来ないやつなどもしかしたら
この世に一人とて存在し得ないのかもしれないけれど


すでに死んだ人の数を数えて
明日生きる糧になるかどうかと考えてみた
生きていてくれたほうがよかった
生きていてくれたほうがよかったけれど
生きているときにはそんなこと考えもしなかった
それは取り分だ

日捲り暦が言う
これまでに聞いた
どんな言葉よりもじんとする響きがあった
一日ごとにやつらは命を削られているのだ


甘い世界は夢の中
瞼の中で目玉をぐるぐるさせながら
百万光年離れた幸せの夢を見た
幸せの夢はぐるぐると回りながら
ダウン系の薬の様に俺の脳髄に気だるいフィルターを差し込んだ
甘い世界は夢の中
おお
現実感が嫌な色味の糖分に犯され始めてるぜ
飢えた蟻が目ざとく匂いを嗅ぎつけて
俺の身体を這い回り進入口を探す
生きることしか考えていないやつらは食いもんにかけちゃ滅法強い
それがおぞましい光景だなんて思いつきもしないんだろうぜ
俺は好きにさせてやる
夢が覚めればこの蟻もそっくり居なくなっちまうんだろう
感覚は不在を誤魔化すために在るのかもしれないな


冬に掻く汗のことを考えたことがあるか
冬に掻く汗には封をして置くべき事柄が詰まっているんだ
冬に掻く汗はどこかに流れ去ってしまうという認識すらないから
落し物の様にそいつらのことを忘れることが出来る
本来冬は汗を掻くべき季節ではないのだ
秘密裏に処理されなければ
神経がショートしちまうような出来事だってあるだろうさ
探さないほうがいい
気付かないほうがいい
何のために秘密があるのかってことについては考えすぎるほど考えてみたほうがいい
忘れることが出来なければ人間はおかしくなっちまうそうだぜ


雨戸を閉めたら確実に孤独になれる気がしないか
それは部屋の中に確実な暗闇が出来るからなんだ
俺たちは自分で思っているよりもずっと
感受性ってやつを存分に振りかざしているのさ
孤独ってやつは誰が考えたって
きっと黒に近けりゃ近いほどしっくりくるんだろうな
孤独というものについては特別考えることはない
考え事をするにはもってこいの
機能的な側面だってある
俺が部屋の中を暗くしたのは
様々なものに感覚的な色があるって話をしたかっただけのことだ


昨日の会話の数を数えてみたかい
その中に
心を震わせるような言葉はいくつかあったかい
良いほうにでも悪いほうにでもいい
心を震わせたり騒がせたりするような出来事が少しはあったかい?
それはせせらぎのようなものだった
誰の足元も濡らさない
誰も渇きをも潤せない
小さなせせらぎのようなものだった
良い悪いじゃない
言葉というのは本来日常に吐き捨てられるリズムのようなものだ
耳を澄ませてみろ
その中にある響きを聞いてみろ
心の中までは届かないから
聞こえてくるものがたくさんある
拾い上げるほどのものでも無いことは二つ三つ摘んで見れば判るだろうさ
だけどそうと知りながら見過ごすのと
何も知らないまま見過ごすのとじゃやっぱり違うものなんだ


そして朝が来るまでには
暗闇の中で覚えたことはみんな忘れなくちゃいけない
暗闇の中で覚えたことを明るい光の下まで持っていくと
お前の人格には足りないものがいくつも出来てしまう
それは自分を虫食いパズルに仕立てるようなものだ
関心が付加されない問いは
宙ぶらりんのままどこかへ返されるのみだぜ
朝が来るまでには暗闇の中で覚えたことはすべて忘れるんだ
記憶することが大切なんじゃない
それが一度身体の中を通り抜けたかどうかということが大事なんだ
窓を開ける前にそのことについて考えなくてはならない
太陽と月の間には入れ替わるものが必ずある


正しく話すことは出来るか
正しく伝えることは出来るか
宣教師の様に愚直に
アジテイターの様に下世話に
内側でぐずぐずと錆びていくものたちを
白日の下に吐き出すことが出来るか
飲み込んだものを吐き出すことは
痛みを知る上では必要なことだ
痛みを知ることが出来なければ






すべての昼と夜はきっとごみ箱に頬り投げられて終わるだけになってしまうんだぜ














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2007/12/8

餓鬼を切り刻め  




















今度は許さない、殺し損ねた俺自身の
殺し損ねた俺自身の中の餓鬼
やたら飢えて、やたら喰い散らかす、喰い損ねたもののことをいつまでも話す
やつの喰い残したものが喉元まで上がってきて俺自身の消化を妨げる
今度ばかりは許さない、不確実な要素のままで分離した俺自身
神に見放されたヒルコのように胃袋にしぶとく
胃袋にしぶとく吸い付いてしまったある種の俺
その俺の吐く息が誰も彼もを俺から遠ざけようとしている、一度目をやり損ねたら
とことん、断層は深くなるばかりだぜ
それは誰かを喰らうために大きく開けられたままの巨人の口のようだ、そうだ
世界には際限なく餓鬼が潜んでいやがる、俺の口腔にも、誰かの肩口にも
求めるものの違いで潜む位置が変わるのだ、その法則は際限なく飢えたやつでないと理解できない、俺はそこそこ飢えているけれども
際限なくなるまでこらえていることは出来ない、純度の高い餓鬼になんかなれない、餓鬼を見たことがあるか
飢えた腹はものすごく膨らむらしいぜ、そしていびつな膨れ方をするんだ
際限なく飢えた後では欲望の形は畸形化するらしい、見ろ、着ているものを捲り上げて
お前の胃袋の辺りをようく確かめてみろ、角のような
肉体に置くにはあまりにも不自然な何かが飛び出したりしていないかい、時には見えるはずさ
俺たちの正常はある意味でとても畸形だもの、それがどういう意味だか判るか?
自分のうちにそれを認める前に気にしなくちゃいけない物事が多すぎるからさ、自分とt照らし合わせたときに
正しいと思える誰かは非常に自分に近しい内面を持った誰かしか居ないはずだ
そういう符号を
正常と呼んだほうがそいつらには差し支えないのさ、あらゆる人間に適応するものなどこの世にはないのだ
あるとしてもフリーサイズの靴下とかそんなものばかりさ、何かを知ろうとするときにはてんで役に立たない
餓鬼を取り込もうとしているのかい、餓鬼になろうとしているのかい?
お前の歯にこびりついている食べかすのシリアルナンバーを確認してみろよ、きっとこの世にはあまりない印字のはずだから
ただ飢えていただけのものは死んでも飢え続ける、なぜ、飢えていたのか
そのわけを知ろうとすることを試みなかったせいだ、俺の胃袋にも餓鬼は潜んでいる、餓鬼は余計なものばかり喰いたがる、しかもその中に詩になりそうなものはひとつまみもありはしない
だから俺はこれを考えずに書いている、もちろん時々手を止めるところもあるけれど
それは書くために考えているわけじゃない、それはちょっとしたリズムの調整みたいなものなのだ、全身がタイプライターになる感じって判るかい、半ば適当にリモコンで指先をあちらこちらに操作されてるような、そんな感覚を楽しんでいるんだ、そこそこ、餓鬼ほども重くはない程度に飢えながらね
一線を越えることはよくない場合だってある、そういう示唆が餓鬼のいびつな腹の中には隠されている、俺はその腹を夢想しながら、それならばどうして俺たちは飢えてしまうのだろうと考える
そんなことについてどれだけ考えたところで、機能はアクセントであるなんてくだらない言い回ししか浮かんではこないのだけれど
今度は許さない、そのいびつな腹を割いて二度と満腹になることが出来ないようなそんなシステムを構築してやろうじゃないか落ちた天使ども
隠してあったやつだ、隠してあったやつだ、いつまでたっても消化される気配がないと思ったら餓鬼どもがこっそりくすねていやがった
卑しいものどもは空腹を満たすためならなんだってするんだ、餓鬼の腹を、餓鬼の腹を長いナイフで
蛙の解剖のように
罪悪感をすっと飛ばかして
ごらんよ、こいつの腹に詰まっているもののおぞましさ、長く長くかけてようやく消化をされ始めたばかりの
餓鬼の腹にたまったものの不快な色合い、まてよ、こいつらすでに腹は満たされているんじゃないのか?こんなに胃袋にものが詰まっているのに、飢えるなんてありえないはず、だけど
何かを目論んでいる、ある種の俺のような餓鬼、腹に石を詰めろ




懐かしいな、童話は意外と役に立つぜ











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2007/12/4

回帰線  















歩む側から忘却に放り込まれるような日
空に向かって突き上がる厳しい風を見たような気がして
傷つくはずの雲を探した、長いこと、眼を凝らして
昨日、少しだけ降った雨の後
呑気な冬が重い腰を上げ
縦横無尽な氷が四肢にまとわりつく、瞳が何かあらゆる直視を避けようと画策する日


海の音がした、確かに波の音が
寂れた繁華街に近い公園の側で
驚いて振り返ると
鮮やかな落ち葉が
こぞってどこかに流れていくところだった
波打ち際で遊ぶ子供のように、腹ペコの鳩どもがその中で地面を突いていた


どこかの養護学校の生徒が作ったパンを売りに来る移動販売車の脇を
三本足の痩せた犬がひょこひょこと飛んで行く
そのさまは軽やかだったけれど
進めば進むほど沈んでいくみたいに見えた
ああ、痩せた犬、お前の汚れたその尾には
誰かに見せつけるような誇りがまだあると言うのか


近くの宗教施設がひっきりなしに誰かを呼び出している
そこには祈りは感じられない、てんでシステマティックなただの組織だ


女子高で女子高生が騒いでいる
野良猫でも迷い込んだらしい
可愛い〜、と叫ぶ彼女らに
一抹のずるさを見たような気がして早めに通り過ぎた
コンビにのレジの女はいつも
(この人はどうしてこんなに表情がぎこちないのだろう)とでも言いたそうな目で俺のことを見る


まあ、自分に非があることを否定したりなんかしないさ
それでもやっぱり昼飯は食いたくなるもんだ
この前から少しの間胃の具合が悪かったけど
きっとそれは妙な濡れ衣を着せられたせいなのさ
まったく高給取りがぞろぞろうろついてるくせに
鍵の管理もまともに出来やしないんだから


13のころから通っていた小さな古本屋が潰れた、入っていたビルごと取り壊された
そういう取り決めは誰かの記憶すら込みで奪っていく事を知らないやつが居るんだ
耐震構造なんて別に気にするような事じゃない、本当の天変地異がくれば
俺たちみんな口を開けたままぼんやり死に絶えるさ


死んだらどこへ行こう
死んだらどこへ行こう
思い出の景色の中へ行こう
思い出の景色の中に行って
思い出の路地や
思い出の曲がり角にある
思い出の本屋を探そう
そこにはたくさんの背表紙が並んでいて、そのどれもに俺の名前が書いてある
その背表紙を飽きるまで眺めていよう
どうしても読みたいものがあればもって出ればいい、誰も咎める事は無い
そこには誰も居ない、そこには死んでしまった俺の意識しかない
その場所に俺以外の誰かが来ることなんてない
思い出の本屋は
思い出と同じ香りがするだろうか
積み上げられた無数の
積み上げられた無数の本の香り
俺は助走をつけて積み上げられた本の中へ真っ直ぐにトペ・スイシーダ、そうすると眼前には必要な景色が広がるんだ、必要な景色、必要な景色――いつかずっと昔に、その景色を見たような気がする、何度か、何度も――俺は首をひねる、だけど断片すら思い出せはしない


空に向かって突き上げられる厳しい風を見たんだ
失うものの数を呆然と数えていたある昼下がりに














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