2008/3/24

だから教えも踏み抜いた足の数だけ在る  













身体が放つものの速度を計れ、質量を把握して
その持物で、何が出来るかをよく考えな
優劣よりも先に個としてのポテンシャルの、性格というものをきちんと捉えるんだ
それが無いのなら仮にお前が飛び抜けたスピードを持っていたとしても―カーブを曲がりきれずに激突するのが落ちだぜ
身体が放つものの速度を計れ、質量を把握して
始めたからにはとことんまでやれる目算を固めるんだ、こういう場合には意気込みなんて結果には結びつかないとしたもんだぜ
失速するんなら始めから足を踏み入れないことだ
誰が忠告してくれるわけでもないし、誰が導いてくれるわけでもない
フラグの立たないロールプレイングゲーム、たった一度のゲーム・オーバーまで
過ちの総数を知ることは出来ない
夢を見るような目をしてリアルを語るなよ坊や、無駄な思いのように溢れた唇のよだれを拭きなよ
純粋さが先に立つのは囲われた世代の証なのかい?
今から行こうとしている世界の
冷たさを感じたことがあるかい?
今から踏み入れようとしている暗闇の
向こう側にある更なる暗闇について少しでも
聞きかじったことはあるかい?
それを知らないなら止めておけ
それを知らないなら止めておきなよ
世界に出るためのものじゃない自尊心しか持ち合わせていないのなら
その熱はプレイステーションにでもつぎ込んだほうがずっと有意義だ
知識と方式とトラディションを身にまとって格好良く繰り出しても
剥き出しの心が真っ先に傷つくんじゃしょうがない、己のエンジンを燃やすのは
己の胸のうちに潜んでいるものじゃなくっちゃ
実力テストで高得点を取るような
エモーションなんかはっきり願い下げだぜ
システムから抜け出してもっと偏屈なシステムに身を隠すくらいなら
最初の住処を離れる意味なんて無いじゃないか
それを知らないなら止めておけ
それを知らないなら止めておきなよ
ラブ・ロマンスと同じで
始めに激しく焚きすぎると後が詰まらないよ―本当に美しい花は
いっそうの時間を掛けてゆっくりと花弁を開くものさ
身体が放つものの速度を計れ、質量を把握して
最も効果的に扱えるやり方を見つけ出すんだ、それは
お前以外に決して見つけ出すことは出来ない
お前の心臓のリズムが何らかの形になるのならそれが一番いい
最も効果的に扱えるやり方を見つけ出すんだ
誰も約束なんかしてはくれないよ
真実に約束なんか絶対に無いんだ
いくらか理解出来るような経験を積んだとしても
時々はひどい痛みを伴う瞬間がある、自分自身が選んだ途方も無い自由の中には
二度と見たくも無いものばかりがデスクの上に整列することだってある…払い落としたくなるのを我慢して
そいつらに整理券を配ることが出来るなら拍手喝采ってもんさ
判るかい、こうしてると
世界が自分の首を絞めにくるときがあるんだ
世界が自分の首を絞めにくるような空気を感じたことあるかい、そいつは本当にとんでもない圧迫なんだ
2分もあれば頚椎がすべて砕けてしまうんじゃないかと思うくらいだ
それがどういう気分なのか判るかい―理解を強制しているんじゃない
イズムの数は河原の石ころほどあるはずだから…本当は
ただ知っておいてもらいたいんだ、ただ知っておいてもらいたいのさ、ほんのわずかでも
お前が渡ろうとしている橋は
紀元前に架けられた吊橋のようなものさ
それはずいぶん高いところに架けられている、だから
眺めは、この上なく素晴らしいものだ、だけどさ―






余計なとこ踏み抜いたら、そう
お前さんそこからどこにも向かうことが出来なくなるぜ…













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2008/3/20

あさ うたうけど ひとり  











いきをとめた
ときの
ちんもくのなかに


ながく、とじこめた

ひどいこと


ゆるしたくなんか
なかった


ゆるしたくなんかなかった
なにも
なにも


ゆるして
しまいたくなんかなかった


あさがた、のたうちまわるまどろみのなかでみたものは

こどくと
ふじつと

ひじょうしき


こわいものなんかひとつもいないのにこわいゆめ
そんなゆめ


ぱいぷまくらをひきさいためざめ



すごくながいながいむかし、もっといいゆめをみたことがある

むしがいなくて
へびがいなくて
ひとが
いなかった



ちょうこうそうびるをうえからしたまであるいた
おもしろかった
ひじょうぐちとか


こわいものなんかひとつもいないのに
こわいゆめ
そんなゆめは



おきていたって
みることができるから




さけたまくらのなかにてをつっこんで
ぱいぷを
ひとつ
てにとって


かじる
かじる
まくらのないぞう
おいしくないので
おしっこをする


しーつに




だれもいない


ゆかにおりるとくうきがうごく、わたしは

わたしには
それが
いささかいらだたしい



めざましどけいがなる
そんなものはいらない


めをさましてまで
しりたいことなんかもうない
めをさましてまで
はなしたいことなんか、もう




なにもない





わたしはわたしで
せつめいをきょぜつしている
つよいはるのかぜは
きづかいもなく
ちいさなまどを
がたがた、がたがた
わたしは
すりっぱをぬいでなげつける
とまるふりなんか
しないで

しないで




おねがいだから


ねがいがかなうなんて
しんじるのはつらい
あすのじかんをきめてしまうと
めざましは
ぜったいになる


そんなもの
わたしは
しんじたくない






あるはれたあさ、わたしは
べっどからおりました
おりたべっどから
おしっこが
たれました


こんな、おはなし
だれもよろこばない


こんなわたし





ぱんをやきました、たべるためではありません

とーすとのにおいで
しあわせになりたかった


やわらかなにおいで
しあわせに



しあわせに




うたをうたいました
へただとよくいわれます
よくいわれますが
きょうは
だれもいないので
ゆめのように





かべですてっぷして、うたはかえってきます
うけとめますが、それいじょう
どうすることもできません


わたしのやくめはひとつだけ
いつでも
わたしのやくめはひとつだけ
ひとつだけ
ひとつだけ







おなかが
ひえる




うたが
かえってくる













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2008/3/20

思い出せない(いつのまにか死んでしまうものたち)  












すべて
いなくなった誰かの写真だった

すべて
風に舞う木の葉だった

すべて
破られた約束ばかりの伝言板だった


すべて



自殺未遂の挙句植物化した

弱虫どもが眠るベッドだった



俺は馬鹿みたいに喉が渇いていて
尻から炙られている蛙のような切迫感で
何度も何度も
大量の水を飲み干した
ギターの弦をピックで擦るみたいな音を立てながら
喉の仏はその度に浮いたり沈んだりした
昔よく遊んだグラウンドで
打ち捨てられて錆びた自転車を見た



グラウンドからほんの少し北に下った
喫茶店のある小さな交差点で
昔飼っていた犬が
轢き逃げされて首の骨を折られて死んだ
運転手を見つけ出して殺そうと思っていた



でも忘れていた




犬はその後二匹も三匹も家の庭先に繋がれた

ろくに血の色が見えない死だって在るさ







すべて
もろくなった廃墟の柱だった

すべて
喉を失くしたうたうたいだった

すべて


自分の書いたものすら判らなくなるほどに
もうろくした古い詩人だった






ずう、と車が目の前をよぎるたびに
いつかの記憶と現在がシンクロする
あの時と今と何が違うというのだ
先を急ぎすぎた心臓が抑揚の無いビートを刻みだす
丸い、丸い夕日
酸を引っ被ってしまった後の眼球みたいに
精神の一隅を
跡形も無く塗りつぶす

おお、赤い

俺は言う

それがリアリズムだと青臭い時代には思っていた







すべて
首がぐらついた雌犬


すべて
時折の辛辣な殺意


すべて
同じ交差点の一瞬



すべて
土の下の長い死





死体
死体
死体
死体




小さな頃に拾い上げた鼠の…
鼠の頭蓋骨の不自然な白さ


白すぎて白じゃないみたいだった
白すぎて





白じゃないみたいに俺には見えたんだ









公園の遊具で吹き飛ばされて
鼻骨骨折したあの子の泣声とおびただしい赤い血
そんな景色をどうして今の今まで忘れていた
あの子の鼻の形は違うものになってしまった




どうか痛まないで
どうか痛まないで
どうか痛まないで

どうか





どうかそれ以上痛むことなく



謝ったのかどうか思い出せない
心から
心からそうだったのかどうか


取り返しのつかない痛み
あれは
十代になったばかりの頃だっただろうか







女の子の鼻を蹴り飛ばしたことがある
四年生の頃のことだった


お腹の辺りを
軽く蹴っただけだったと思っていたのだけど
ふざけて一目散に逃げたから気づかなかった
次の日先生にこっぴどく叱られた
そんなことをするつもりじゃなかった
ふざけて遊んでるだけのことだった
鼻血が出たのよ?そう言われたときの
違和感のことなどどうしてこんなときに思い出す









親友だったやつと喧嘩になって
指を思い切り踏んづけたことがある
あいつの名前は誰だったか
記憶の中にあった名前は
それより数年前に引っ越した奴の名前だった
あのときのあいつは誰だった
あのときのあいつはいったいどこの誰だったんだ
毎日いつもつるんで遊んでいたのに
どうして顔も名前も少しも思い出せない



母親が笑いながら見ていたことだけは何故だか覚えている









女の子の背中を殴りつけたことがある
あれは多分五年生の時のことだ
転校生で、とても気の強い子だったから
なにかとても腹の立つことを言われてやりかえしたのだろう
だけど
何が原因だったのかなんて例によって少しも思い出せないのだ
たった一発だった
彼女は避けようとして背中を向けたのだ
だむ、という音がした、たった一発だった


彼女は泣いた
俺は狼狽して





廊下へ飛び出し、階段の踊り場まで逃げたけれど(多分昇降口を目指していたのだ)
級友たちに捕まってものすごく責められた
あの時の級友たちの怒号
俺は涙をこらえていた
きっと
悪いことをしたという自覚がなかったのだ
きっと腹を立てていたに違いないのだから







(もしかしたらただなんとなく殴ってみたかっただけかもしれない)




だむ、という音は鮮やかに蘇ってくる


生体を殴るとあんな音がするのだ







友達のインベーダーの消しゴムを筆箱から盗んだ
焼却場の炎をずっと見つめていた
あまり高くないブロック塀から
三年生ぐらいの子供が落ちるのを見た
何もしなかった
俺のすぐ後ろを歩いていた六年生くらいの女の子が
すぐに駆け寄っていろいろなことを聞いていた


(おそらく彼女はあの子が落ちるのをどこかで待っていただろう)
俺はそう思っただけだった
そうだ
そう思っていただけだったのだ





そしてそれは多分きっと今でも











すべて
死体だった


すべて
死体だった


すべて
首がぐらついていた




すべて
わずかな血しか流さなかった






思い出せない
思い出せない
思い出せない









教えて
教えて












教えて














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