2008/4/2

二度と羽ばたけない羽なら捨てることもまた飛ぶことだ  














遠雷の様な耳鳴りを含ませた渦巻き管があらゆる配列を狂わせる
小鳥の死体がうずたかく積もった廃墟ホテルの階段の見てしまう美
壊れたものはなんだった、コードの切れた黒電話の受話器を耳に当てたら
忘れられたものたちの慟哭が囁きの様に聞こえた、薄い刻印を指でなぞり続けてるみたいな時間
不思議なくらい長い冬だったね、何に凍えているのかも判らないまま
浮浪者たちがのたれ死ぬスプリング・セールさなかの商店街
汚れたコートのすそを丸っこい子犬が鼻先で突っつく
詩について語りすぎる詩人には短い詩しか書けない
(そこにいれば安全だ、はみ出すことさえしなければ、どんな世界に居たって大切なのは節度だ)
いっそのことみんなで脳味噌にねじまきを仕掛けようじゃないか、生き残ったやつだけで幸せについて語ればいい
壊れたものはなんだった、コードの切れた黒電話の受話器を耳に当てたら
不要な性器を処理するみたいに迂闊な心が吸引された…屋上に行きたい、施錠されている
屋上に行きたい、施錠されていても
踊り場の窓はみんな割れていてうんざりするくらい暴力的だけどそこに潜むテーゼが霞むことは決して無く
割れたガラスが頚動脈に触れるまで首を突き出してみるんだ、偶発的なギロチン
物理的に不可能な首が断ち切られたら誇らしげにぶら下げて帰ろう
(どうしても開けることの出来ない錆びついた鍵を開けるための手段を模索することは無意味だろうか)
模索しないよりはマシかもしれない、だけどね
それにはやっぱり何の意味も無いかもしれない
浮浪者のコートを嗅いだ子犬は次の日タントに首根っこ轢かれて死んだ
首輪をしていたけどそれは誰かが泣いてくれるという保証ではなかった(あいつは金で買われてきたんだ、小さなショーケースの中から)
誰かが頭を撫でたいときだけあいつらは存在している、同じことだ
車道だろうが歩道だろうが同じことなんだろう
コードの切れた黒電話の受話器の中にはそれと同じ形をした透明なゼリーが詰まっていて
飲み込んだものたちをただそれだけのものに変える
(ただそういう形をしているというだけのひとつの物音のような物体に)
配列の狂ったものたちが汚れたみぞれになって憧れの屋上を静かに鳴らしている、ああいう静けさをいつの間に無くしてしまったのだろう?
(生まれ落ちたときに母親の乳房よりも先に本当は求めていたもの)(惜別の間合いだけは本当に秀逸になったものだよ)
死んだ浮浪者のコートのポケットには誰にも読めなくなった遺書があった、ここで語るほどの理由もそこにはないけれど
死んだ浮浪者のコートのポケットには誰にも読めなくなった遺書があった
窓から吹き込んだみぞれが控えめな太陽を反射しながら足元に散乱したガラスの破片を弾いた
死んだ浮浪者のコートのポケットには誰にも読めなくなった遺書があった
屋上に上がる階段はコンクリートが劣化していて扉が開いていたとしてもそこに出ることは出来なかった
あそこが開いていればすべての配列を組み直すことが出来たような気がする
あそこに続くドアが、あそこに続く階段が閉ざされてさえいなければ
これはきっとずいぶん後からやってくる種類の絶望なのだろう、と認識しながら
引き返すための段差に足を下ろしていくとみぞれが少しずつ止む
寒くなるのか暖かくなるのか判らないけれど
飛び立つ術を知らない雛の前でも
蒸発の様に世界は明日へ流れていくのだ












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