2008/10/30

渇いた樹皮降る、腐葉土の寝床に  














近しい者たちが古木のように渇いて、俺の周辺に立ち尽くす
これは何の冗談だ、灰になってこぼれるみたいな息をしやがって
俺の至らなさはお前たちのものじゃない、俺が死ぬまで懸命に抱えてゆくものだ
判ったらここから出て行け、判ったらここから出て行け、立ち尽くすだけのものなど俺は信じない
ほんのふた月前に比べりゃ何もかも楽になったはずなのに、どうしてこんなに奪われている
何を見ているんだ、何を見ているんだ、肉塊の中に深く潜伏したままの言葉を持たない腐葉土の俺、光の届かない場所でどんな輪郭を見てる―お前の見ているものが俺をこんなところに追い込んでいるんだろう?すでに死んでいるんじゃないかと考えることがある、どんな瞬間にもコネクト出来ない重みだけのコアを腫瘍の様に抱えていると、すでに死んでいるのではないかと―俺か、そいつかの、どちらかがさ
釈然としない要因のもとにこっぴどく死んじまっているんじゃないかと
遮光カーテンの蒼をずっと眺めている、欲深くなって死ねなくなったパンク・ロッカーのアルバムを聴きながら
死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのが
死なないでいないと先を見ることが出来ない
当り前のことだがみんな判らなくなってしまう、熱意のもとに傍観する終わりはちょっと美しく見えてしまうからだ、俺はハンマーを手に持つ
古木の様な近しい者たちを―打つ、打つ、かたっぱしから―血生臭い破片を浴びて涙を流しながら
憎まないでいるならその方がよかった
憎まないでいるならその方がよかった
憎まないでいられるならその方がよかったんだ、だけどもうすべては遅い、俺は関わりを殺し始めてしまった、ありがとう、愛してるよ―だけどもう俺に関わらないでくれ
古木の破片は俺の顔に張り付いて涙で発芽する、ああ、ああ
もう一度繰り返すのか、もう一度繰り返すのか?
俺の至らなさを浮き彫りにするために離れない者たち、もう一度始めるのか、もう一度…消えかけた足跡を刻み直すみたいに?何度やったって同じさ、何度やったって同じなんだ、きっともっと変えられるものだっていつかには思ってたよ、ぶん投げられる、散らばる、くたばる、砕ける、こじれる、行方知れず―責任なんて背負うことすら出来なかった、縁の無い者の振りをして、ああそうかと見つめていただけだ、繋がりなんか求めないで、俺の配線は心臓のところで断線しているんだ
羽根のように散る古木の破片、ああ、さようなら、さようなら
別れの瞬間なら告白も御愛嬌だ、寒くなるよ、風邪など引きませぬよう




今宵は暖かくしてお休みくださいませ












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2008/10/28

刻まれたものは擦り切れるまでは息遣いで在り続ける  










取りこぼした一日のことを思いながら濡れた路面を漂っている午後の温い焦燥、底が破れ始めた靴のせいで靴下はすぐに嫌な湿気を持つ―吐き出したガムの形状が悲惨な最期を遂げた誰かみたいで、名前を思い出す前に踏みつぶして殺した
たくさんのアドレスに電話をかけた夜のことを思い出す、他者を介さなければ判らない真実があるって信じていた時代はいつの間にか昨日へ流れていた―流れてしまえばすべては同じ昨日、そこにどんな特別な思い入れがあったとしてもさ―太陽の光はさりげなく注がれていたけどもう暖かくなることは無かった、ほらみろ
我々は否応なく冬のさなかへ押し込まれる、ラッシュ・アワーに雪崩れこむ乗客みたいにさ…割り切ることと受け入れることはまったく種類の違うものだ、一見少しも違いは無いように見えるけれど…そこに牙があるか無いかの違い、って言えば少しは分かってもらえるかい?
音楽を聴くのにもう手順は必要ない、小さな箱に電池を入れてメモリーを選べば―その気があれば一日中だってフェバリッツを聴き続けていられる、だけどねえ、それは全く俺の知ってる音楽とは別物に思えるぜ…懐古主義者だと言われればそれまでだけど―デジタルは記録するだけ、アナログのように刻まれはしないじゃないか?滑りのいい引き出しみたいなものさ、すっと何の抵抗もなく―開かれたスペースから選択して取り出すだけさ
刻まれたものそれ自体が振動しながら鳴っていた時代のことを俺は知ってるぜ、大好きなものだって擦り切れていくんだって誰もが知っていた時代のことを、いや、違うんだ、そのこと自体は大して重要なことじゃない、味わおうと思えば今だっていくらでも味わえるものだしね…余談ついでに言わせてもらえばターンテーブルは黄色いヒップ・ホップの遊び道具じゃない、それだけはちょっと気にかけといてくれるかな、それは本当の息遣いを知るための道具なんだ
熱い季節が過ぎてうるさいくらいに道路工事の数が増えた、笑顔を浮かべながら静かに旗を振る交通誘導警備員は―その仕事の成り立ちや意義について、全く疑いを持っていないように見えた、俺もあそこに立ったことがある…金だけはたくさん手に取ることが出来たな、だけどそれ以外にいいことなんかなかったよ、でもそれは別にこの仕事に限ったことじゃない―一生懸命にやればなんだって同じようにこなすことが出来る、なんて、脳味噌まで体力で出来てるやつらの専売特許さ…どんなところに行ってもやたらに切りつけられるだけさ、俺がいくつかの詩を隠し持っていることがやつらには分かるんだ、麻薬犬のように鼻が利くからね
近頃コンビニも兼ね始めた中古セルDVDの店に入ってガムをひとつ買った、そんなもの噛んでいたいわけじゃなかったけれど、見飽きた景色が続けばひとつぐらいはなにかを真面目に変えたくなるものさ、そうすりゃ日記だって少しは張り切ってつける気にもなるだろう…思うに俺の肉体の傷が最近とみに増えてきたのは―やっぱりいくつかの振動が身体に刻まれたまま癒えてないせいなのかもしれないな…消えないことはもう知ってしまっているし―シックでもホリックでも呼び方はなんだってかまわないけれど―ミニサイズのホットサンドみたいな粒になっちまったガムからはデジタルな味がする、そこには舌触りがないせいなのさ、俺は思うんだ、表面を滑らかにしちまえば大抵のものはデジタルに見える―70年台にどんな新世紀が描かれていたか思い出してみろよ、そしたら俺の言ってること少しは伝わるかもしれないぜ?
堤防に出た、雑草まみれの歩き辛い堤防だ、だけどそこを歩いていると河の側だという感じがする、夕暮れ前の光を黙って受け止める緩やかな流れの川面は死を身近に感じ始めた老人のように見える…シンパシーを感じるのは決して良いことではないぜ―安易な結論を求め過ぎてしまうのは頭でっかちになってる証拠さ、程よく行動が伴っていれば―結論に固執するのは愚かしいことだってすぐに判るようになる、思うにそこにも振動ってやつがきっと絡んでいるんだろうな
デジタルな音楽を聴きながら、デジタルなガムを呑み込み、アナログな振動について考えながら、アナログでアナクロな身体を揺らせてモノクロな橋を渡るとそろそろ家に帰りつく時刻だ、堤防から見る家並みはすべてが裏側だ―勝手口のドアの脇に積み上げられた明日廃棄されるためのゴミの堆積、俺はそれだって詩と呼んじまう、韻律とか文法よりそんなもののほうがずっと重要なのさ、汚れなきポエジーなんか話のタネにもなりゃしねえ―すれ違う自転車の若者たちがどいつもこいつも唇を少し突き出しているように見えるのは気のせいか―?
もうすぐ夕暮れ時だぜ、今日の空は赤くなることは無い…ただ光が無くなって、もう少し冷えるだけさ…そろそろ帰るぜ




シャワーを浴びて、デジタルを洗い流そう


俺の身体は、プログラムじゃ動きゃしないからな










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2008/10/26

休日  













クリアブルーのスカイの中に融けてゆく影、背中に置手紙は無く
風に混じる最後の言葉も無かった

黒い刃物の様な
羽を広げたカラス、ある種の領域を制定するみたいに
いくつかのリングを繋ぎながら光源の彼方に消えた

とあるフューチャーなビルの壁面では
ショート・カットのオードリー・へプバーンが
最新のスタイルを売るのに利用されている
彼女なら墓場から
出演料を要求したりしないからだ

オープン・スタイルのレストランで
異邦人がパスタを啜っている
痩せこけた彼の頬は
エンの基本的な価値を理解することでいっぱいいっぱいに見える
肘の脇のコーヒー・カップを
漫画みたいに弾き飛ばさなきゃいいんだけど

繁華街が終わり、住宅街へ続く長い坂道を、速度を変えることなくずっと歩いた
時間の概念がまどろみの出口みたいで
上手く数えれば数えるほど馬鹿みたいに思えた
団体で手を繋いでUFOを呼ぶ儀式ぐらい馬鹿げたことに
齧ったキャンディの糖質がワームの様に
いくつかの細胞を血だらけにしてる気がした
もちろんそこには傷みなんて存在しないのだけど
それだけに長く尾を引く厄介の様な気がして忌々しかった

帰ってラジオをつけると
出かける前にやっていた番組がまだ続いていた、今日は休日なのだ
コーヒーメーカーがつつましやかに働いている間に、カレンダーの今日の日付を消した
そんな事をしたのは生まれて初めてだった
自分の中である種の認識が求められていた、それがもちろん
日付を塗りつぶすという類のものじゃない事には薄々気づいてはいた、ただ
コーヒーが出来るまでにやれることなんてそんなことぐらいしか思いつかなかった
10月の透明に思うより惑わされているのだ
時代遅れの移動手段みたいに
コーヒーメーカーが蒸気を吹き上げた、その瞬間
ラジオが嫌いになったのでスイッチをオフにした
流行歌がどんな余韻も残すことなく
ワンルームのキッチンで飛散した
爆破、と呟いたけど
それが冗談なのか本気なのか理解出来なかった

洗面に潜り込んで髭を剃った
洗顔フォームを塗りつけると肌を傷つけることはない、何故
傷つけることをそんなにも避けるようになったのかは
今のこの瞬間まで考えたこともなかった
考えてみれば
剃刀の刃が鼻の下を裂いたところで何が変わるわけでもないのだ
そんな些細な傷を凌駕するものはこの世には幾つでもある
納得のいく答えに辿り着ける可能性は極めて薄かったので
それ以上はこだわることなく修行僧のように顎の裏を剃った
肌は傷つけなかったし
顔はすっきりと整理されて見えた
だけどそこにはどんな方向性も確認することは出来なかったのだ
髭があったはずの場所をするすると撫ぜて
洗面の明かりを消して窓際のソファーに腰を下ろした

電柱のてっぺんでカラスが二羽、此方を窺いながら何か深刻な問題について話し合っていた
もしかしたら此処に
何か致命的な通告を届けに来たのかもしれない
あまりに致命的な内容なので躊躇しているのだ、思うにあの二羽のどちらかが
さっき坂道の下ですべてを見ていたのかもしれない
しばらく視線を向けたままでいると
一羽だけが数度頷いて其処から飛び去った
どこかの屋上で羽を休めている長老にお伺いを立てに行ったのかもしれない、残された一羽は
「別に俺だって好きでこんなことをしているわけじゃない」と言いたそうに
視線が合わないようにじりじりと向きを変えた

コーヒーを飲みほすと何もすることがなくなった
カップを流しに置いて
帰ってくるとカラスは居なくなっていた
空っぽの電柱のてっぺんから電話のケーブルを辿ると
そのまま眠ってしまいそうな気がした、背中に置手紙は無く
風に混じって聞こえる最後の言葉も無かった





それが
欲しかったのかどうかなんて考えもしなかった















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