2008/12/31

狂えないというゴキゲンな現象の中で俺は歯ぎしりをする、そしてそれはお前だって同じだ  





お前の奥底で悲鳴を上げたおぞましい感覚の吹きだまり、沸き立つマイナスの腐臭を浴びながら幾時間が過ぎただろう…お前は歯の裏にこびりついた、些細な食物のかすのことばかり気にしてすべてのことに気付けなかった、動脈を彷徨う血液の赤味が変色して…お前の細胞は暗闇のような空気を孕んで無様にひび割れた、秘密裏に執り行われる不具者の葬列だ、棺を担いだ小さな一群がゴルゴダに届かない陳腐な丘を目指すとき、陰鬱な明け方を描く空には降る気の無い雨を含んだ雷雲がある…もはや未来を見ることに疲れた予言者がそいつに語りかける、含まれたままの水の気持を…雷雲は己が身体の切れ目を歯を剥いて笑う悪魔のように見せつけながらそれを知ることの意味を問うのだ、知りすぎて疲弊した予言者の、錆びたブリキのような色をしたその脳髄に…予言者は打ちひしがれてそれきり自分の爪先以外の景色を目に留めることは無かった…意味を失った彼の機能のすべては新しい年が来る前にすべて停止するだろう
棺を担ぐ教会の使用人は肩に食い込むそれの感触に違和感を覚える、単純な重みではないものが彼らの感覚を袋小路に向かわせるのだ、その日死んだものは当り前の生命など所有してはいなかった、迎えられたり送られたりするような、そんな…当たり前の生命など…言っただろう?秘密裏に執り行われる不具者の葬列だって…使用人たちは死体について深く知らされることは無い、深く知ってしまうと担げなくなることもあるかもしれないからだ、家族は往々にして年老いていて、誰も新しい苦しみなど持とうとはしたがらない、使用人たちのわずかに陥没したどちらか一方の肩は、しいて言えば彼らが宿命的に引き受けてきたもののいびつさの象徴なのだ、喉を鳴らす猫のように雷が鳴り始める、暗い明け方に始まるものはすべてが報われない…排水溝へ流れ込んでいく黒ずんだ水の流れのようだ…(おかしいのだ)、長い長い時間をそうして生きてきた担ぎ屋たちはおいそれとは堪えられない違和感に耐えながら歩みを進め続ける、もしも彼らに今よりもほんの少し、神に仕える身であるとの自覚が足りなかったとしたら、彼らは葬列を外れて茂みの向こうに身を隠し、棺の釘を引き抜いてその中に潜むおぞましいものの容姿を目にしたことだろう
お前の感覚の奥底で悲鳴を上げたおぞましい感覚の吹きだまり、葬列の足音が報われぬテーブルの冷えた飲み物をわずかに振動させるとき、お前はそれが本当にその身に起こっている事柄なのだと悟る、気も狂わんほどの感覚…本当に怖いのは狂えないことなのだとお前ははっきりと悟る、脳天から肛門までを鮮烈な雷に貫かれたかのように、両の手のひらで身体を支え、お前はめまいを夢のようなものだと感じることに努める…狂えないのならば距離を置くより他に手は無い、お前はすぐにそんな方向に結論を求めてしまう…汚れた身体に食い込む腐臭の真実の状態はなんだ、お前はそれが何なのか本当に判らないとでも…?葬列の足跡はひと足ごとに組織を傷つけてゆくような気がする、お前はそれが何なのか本当に判らないとでも…?人は生きながら死に絶えることが出来るのだ、眼を開き、確かに呼吸を続けていても…もうそれ以上無いという瞬間を認めてしまったら、そのまま…永らえる死はそのほかのどのような悪しきものよりも始末が悪い…何故ならばそれはどんな論理をもってしてもその死そのものについて認めさせることが出来ないからだ
陳腐な丘の上に葬列は辿り着く、牧師は神と死者の為の言葉を読み上げる、だけどそれが何処にも届くことが無いことは彼にだけは判っていて、そのことが彼の喉を息苦しくさせるのだ、私はいったい何の為に祈ってきたというのだろう…?牧師の悲しみを使用人たちは感じることが出来るが、それが自分たちが担いできた不具のせいだということには気付けない、棺を肩から下ろした時点で彼らの役目は終わっているのだ…なぜなら彼らは祈りの言葉を唱えることがないからだ…雷は鳴り響く、湿った黒い土を中空へ跳ね上げようと目論んでいるみたいに…葬送は終わり、躯だけがそこには残る、牧師は己の無力を終わることなく悔やんでいる…使用人たちはそんな牧師の為にどのような夕食を用意すればいいのか考えている、さて!テーブルに置いたお前の両手はすべての振動を阻止することが出来たのか?不具者の葬式は終わった、お前の中のいびつなものはそのことによって報われることが出来たか?お前の有意義な生は無意味な永らえる死を押さえつけ、お前の脳髄に留まる事が出来たか?これはお伽噺では無い、悪趣味な寝物語のような、ここに現存するものと果てしなくかけ離れたものではない、葬列の足跡はどこのどんな奴の心底にもあって、いつかの永い時に向かってその歩みを続けている…現に俺の中にもあるのだ、永らえる死に向かうように、陰鬱な空の下ゆっくりと歩み続ける一団の葬列が…俺が永らえるか死に絶えるか、あるいはここで新しい生命の一片でも手にすることが出来るか、それはまた別の問題だ、では、ごきげんよう!








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2008/12/29

瓦礫の上で行くあての無い祈りが始まる  








暴動の幻想の中で肋骨をいくつか失った、痛みは果てしなく体内を駆け回る、霞む視界の片隅に紛れ込む原色の感情、コンクリの壁にもたれた時の洒落たボディのアジテイターの薄笑い、誘ってくれるのはお前か、ふしだらな死神のように、俺の気分を河岸まで連れて行ってくれるのは?バン、バンとオートマチック、肉を削ぐ熱い鉛、かすれた声の悲鳴、すでに死に犯されているのか
火薬が静かに肉を焼く反応の鋭さ、声が無くなるのはあっという間さ、傷みを知らずに生きる者の末路はみんなみじめなものなのさ、撃ち尽くしたのか、ええおい、アジテイター、撃ち尽くしたのか?装填しておけ、装填しておけよ、お前には他人の死を笑うまでの覚悟は無いのかい、その、コンクリートまで踏み抜けそうな強烈なブーツで、この傷口を踏み抜いてみろよ
肉の焼ける感触を俺は知っている、俺は撃たれなかったものたちを笑うことが出来る、違うか?この体内から流れ出た血液にはせめてそれぐらいの権利を与えてみたってかまやしないだろう?地に帰る血液の虚しさをお前は知らないのか、枯れても散ることを許されないような花弁のような虚しさのことを何も?どれだけの肉塊を撃ち抜いてきた、どれだけの肉塊を撃ち抜いてきたんだ、その振動によってお前が得たものは果たしてスマートにポイントを捕える、たったそれだけの瞬間なのか?
地面の瓦礫に腰をついた俺のこと、正面の窓から見つめている子供の目がある、それが生きているものの目つきだとはどうしても思えず、痛みをこらえながらそのぼんやりとした光の中を覗きこんだ、アジテイターは役目が終わったみたいにじっとしてこちらをただ眺めていた、窓越しの子供の目に似ていたが、決定的に違うところがあった、生を知っている目つきと死しか判らなくなった目つき、生と死のふたつの概念に俺は見張られていた、命は、どこへ流れてゆくのだろうと結論を先送りにするように俺は考えた、それは決して俺が知りたいと願っていたような事柄ではなかったのだけれど
闇にまどろむような意識が見せる景色は深海に潜り込んだかのような孤独だ、そんな孤独を享受してしまってはもはや何に対しても明確な答えを導き出すことは出来ない、だけど俺は孤独を忌むべきものとして捉えたことは無いけれど、深海に潜り込まれたような孤独と撃ち抜かれた脛の感覚は酷似している、だけどそんな気付きを得ることがいったいどんな効果をもたらすのだろう?俺は傷みを忘れてほくそ笑む、手に入れる気づきは結局、それと欲していたものでは決してないのだ、深海に潜り込むような孤独とはまさにそんな蓄積から生まれてくる生態ではないのだろうか?
窓越しの子供の目は少し微笑んだように見えた、窓越しの子供の目、あいつは何かを理解したのだろうか、瓦礫に過ぎなくなった幸福の梁の下で、目の前の傷を受けた男の脳裏をよぎった孤独の仮定について、なんらかの感触をあいつは得たというのだろうか、静かにこちらを見たままのアジテイターとは明らかに違う動きがその目の中にはあったのだ、そいつの目を見返す、脂汗とも冷や汗とも呼べなさそうな汗が目の中に入り込む、消えそうな世界の中でじっと目を凝らしていた、子供と、アジテイターは僅かな瞬きすらしないみたいに見えた、何故だ、それが俺とやつらの見つめているものの違いなのか
子供の目が持っている空気について知ることが出来るか、その網膜が何を貫こうとしているのか、その先を追ってみたことがあるか?俺には理解しがたい、知っているのかいないのかまるで読めないその形態、知らな過ぎるということは知りかけたものを惑わせる、戻って来いと叫ぶ近しきもののようだ、汗を拭ったけれどそれは余計な不具合をいくつか増やしただけだった、イラついたところで俺の懐にはもはや撃つべき銃も無く、どこで落としてしまったのだろうと瓦礫の先を睨むも壊れたものの中にそれが隠れているはずもなかった、そもそもの成り立ちがまるで違うのだ、壊すためのものと壊れるためのものでは
次の銃弾を待つべきなのか?何も手は無かった、いつもそうだった気がする、思えばいつも手など無かった、丸腰でいながらそうじゃない振りをしていた、拳骨を食らわされても痛くないような振りをする、あるのはいつもそんな覚悟だけだったんだ、だけど、もう呪うことは無い、もう呪うことは無い、そんな自分を、呪ったりするような気持はもう長いこと持ったこともない、もうそんな歳じゃない、いつまでもそんなシンドロームに首を突っ込んでいられるような、そんな甘い世界はどこにもないはずだぜ、丸腰であるのならどんな武器もひけらかしてはいけないのさ、それが戦闘をおろそかにしたものの責務ではないのか?ひどく身体が冷えてきたような気がするけど怖がりはしないよ、ひどく視界が霞んできたけど怖がりはしない、致命傷でさえなければ不幸なことでは無いんだ、致命傷でなければ
それにしてもあの子はひどくはっきりとした視線を持っている、死しか判らなくなった視線、それが見つめる半端な生、それは好奇心なのか、渇望なのか、呪詛なのか?はっきりとした、だけど決して距離を詰めてくることはないその視線、恐れるには確か過ぎる、恐れるには確か過ぎるのだ、痛みが骨を揺さぶる、アジテイターはどうした、アジテイターは?子供の視線を気にしすぎてしまう、あいつはなぜ立ち去らない、まるでまだ何も終わっていないと言いたげに、新しい鉛を取り出すでもなく、強烈なブーツで同じ大地を踏みしめ続けている、暴動の幻想、幻想なのだ、為し得ることが叶わなかった暴動の宿命など、すべて





新しいマガジンのスタッカート、チャンバーが引かれて、冷えた銃口のキス、勿体ぶりやがって……射出口にクロスを添えてくれ、得体の知れないものの為に










祈るから









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2008/12/18

半端な命は下水管で腐敗するんだ  














不死のまぼろしに怯えた昼下がり、食いかけたドーナツを駐車場のゴミ箱に破棄して
敷地の終わりの公衆便所で泣くように吐いた、意識は未消化のパン生地みたいで
流しても流してもどうしても流れないものが和式便器の片隅でここだと叫んでいた
忘却のような体温の低下、ぶるぶると震える身体は衰弱のリズムを刻んだ
俺はあらゆる苦しみを無きものにする仕様ではない、胃袋を押し広げるほど―胃袋を押し広げるほど抱え込むから
細胞がひび割れる音をいつもどこかで耳にしている、破損、破損と叫ぶ声が聞こえる
嘔吐の後に見る夢の中身はいつでも同じだ、それを覚えていることは決まってないけれど
洞窟とモンスター、見上げるほどの縦穴の中に居る―そんな連中が嬉々と跳躍する断片だけは残り続けて
しがみつけない和式便所の喉元に呪詛を零しながら鍵を開くと世界は驚くほどの光に満ちていてそのすべてが俺の網膜を焼こうとする、やめろ、やめろ…俺はまだ祝福など受ける腹づもりじゃないんだ
足もとに夏の蝉の死骸、落葉とともに落ちてきた夏のぬけがら、拾い上げようとしても崩れ去るだけ
心残りを抱いた泡のように…引っかかりながら割れて消えてゆくだけ、ああ、何を見ようとしてる…駐車場の向かいの横長のマンションの角部屋からけたたましい子供の笑い声、俺は蝉を拾おうとした姿勢のままで新しい呪詛ばかりを撒き散らしてしまう、よかろう、汚れたものだ…もとより気持は固めてあるさ
ガラスを透かしたみたいな青空、しなる鞭のような一時間前の飛行機雲、流浪の大道芸人が大通りに落としていったエコーズ…カラフルなハットの中にやつは生きる術をすべて詰め込んでいた
火を噴くような羨望はいつしか薄れた、故郷の無い旅が苦なのか楽なのか判らなくなったから…もしも終着駅に辿り着いたらあいつはどこへ引き返すのだろう?いつまでたっても旅と言い切ることが出来ない彷徨いのようだ、そんな儚さを俺は受け入れられそうにないよ…ミネラル・ウォーターを買って口をゆすいだ、子供の笑い声が母親の怒号に代わる、その子がいつまでもそのことを忘れなかったらどうする、おかあさん
北風が吹きぬける短い通り、うう、上着を着て出てこようと思っていたのに忘れてしまっていた、愚かに見えるほど薄く済ませてはいないけれど…心もとなさと例えたらあんたは笑っちゃうんじゃないのかい―北風が吹きぬける短い通り、朝集められた落葉が時は来たと高く舞い上がる、出来損ないのつむじ風に乗って…
内臓は固く凍てついたまま、ぬくもりを取り戻そうとしない、この年の終わりのあたり、俺は口を開けられなくなった乞食に等しかった、木の側のベンチに腰掛けて長い息を吐くと、どうやら動く気分だけは取り戻すことが出来たけれど…損なわれる気分って判るかい、俺が石つぶての様に受け続けてきたもの、俺がでくのぼうの如くに受け入れてきたもの…首をひねることもなしに知らないって言ったら俺はあんたを殺すかもしれないぜ
上昇する風、上昇する風に乗って俺のいくつかが亡きものになり光の中へ逃げてゆく、行かないでくれ、憎んでいたけど別れたくはない…憎んでいたのは目をつぶることが出来なかったからさ、判るだろう!判るだろう?行かないでくれ愚かしいものたち、どうしてこんななんでもない日にお前たちを見送らなければならないのか、葬送など俺は望んではいなかったぜ―激しい、怒りのような悲しみを抱きながら指先ひとつ動かずに俺はそれを見送ってしまう、ああ、死んだ、また死んでしまった…誰かを見送る用意などもう無い、見送れば見送るほど俺自身が白骨に近づいてゆくようなそんな気がして、見送った者たちに報いる為にはそんなことしかないような気がして…さよならの言葉を言うのはやめてくれ、俺はまだ何も飲み込んではいないよ、お前の死骸など見ていない…そんな風にして
俺を少しづつ殺していくのはよしてくれ、俺は何も享受してなどいないのだ、眩しい、ああ、眩しい、一秒ごとに押し寄せる奇妙な憎しみ、指で撫ぜたら奇術のように蒼く燃え…




ああ、消えてった
底なしの便器のような晴天だ












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