2009/1/15

REBET  







バスルームの隅に腰を下ろして、お前は世界が滅びる夢を見てる、古びた壁のタイルの亀裂からはみ出た小さな甲虫が眼を潰された預言者のように出口を探している…開ききらない錆びた窓から唇だけが逃げ出そうとするみたいに叫んだのはいつのことだったか
世界は滅びたりしないのだ、少なくともお前の苦しみほど自傷的には
手の甲に痛みが走るほどきつく締めても涎を垂らしつづける浴槽の蛇口からうんざりするような情念のメロディ、渇いて冷たい景色の中で普遍的に反響している、古びて…すべてを確かに聞き取れてしまう、それはそんな独り言に似ていた
排水溝から鼠が囁くような気がするけど、姿が見えないのならいまいましく思うこともない
息を吐いたらぼんやりとした影になってすぐに消える、当てのない魂の最後の行先を見るようだね
路上駐車していた誰かのシトロエンが静かに走り去る、盤上で踊りつづけるピエロの人形のような一定した動作でいつも同じ時間に出てゆく…その日じゃなくてもいい一日の連続する感じ、だけど
毎日など本当は捨てていくだけのものなのだ
幾つめの夜明けを迎えたのかはっきりと感じられなかった、ただ弱い呼吸に耳を澄まし、頬を撫でてゆく冷たい微風を感じていた、微風…最もささやかなものが生命のギリギリのラインを維持していた、ホワイトノイズが堆積する脳下垂体で
お前は世界に亀裂が走る瞬間を待ち望んでいる、だけど
今更そんな約束を果たそうとする神などどこにも居やしないのだ
人間を愛してるって言いなよ、うんざりしながら齧るチリ・ドッグの、口元に少し残る多すぎるソースよりは確かに愛してるって…拭い去るのは仲間の方がずっと簡単だったはずさ、ティッシュ・ペーパーにこびりつくようなしつこさなんて少しも無かった、アドレスはほぼ空白、忘れられないいくつかを除いて―一番愛せるのはいつでももう連絡の取りようがない奴らの名前
お前は理性的な白痴のように静かに時計を気にする、そして数秒後にはすべて忘れる、必要さについてまるで上手く考えることが出来なくなっているのだ、それはいつも手遅れになってから気づいてしまったいくつかの出来事がこびりついているせいだ…出かけなければいけない用件があったような気がする、だけどそんなこともう考えても仕方がない…モザイクみたいな細工の窓で拡散する光、お前の目の上で湖のように揺れて
いつかしらもこんな時間があったような気がする、もはや実感にすらならないいくつもの過去が存在するなんて時間を想像すらしなかった遠い遠い昔の中に…お前はどこかで別人になったのかもしれない、誰かに思われているお前のままで、だけど確かに果てしなくかけ離れた何かがそこにはあり…記憶の奥底でその感触だけをお前は辿ってゆくのだ、そこに行けば何かを思い出すだろうか、なに、なにを…?隣の部屋からロックンロール、リズムを取る代わりにいくつかのもうはっきりしない断片のことを忘れるように努めた
すべてが白紙のルーレットがいくつものチップの前で回り続けている











おそらくそいつはまだ止まることがない











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2009/1/5

誕生はまだか、誕生を知っているか、誕生を、誕生のことを  











地殻の下で芽を出した植物の憤りなんてものがお前たちに想像できるかい、ただひたすらな気持ちこそが薄暗い心を地上へいざなう、なんて、本気で信じているわけじゃないんだろ?キラキラが降って湧いた思考の楽園、胞子のように飛び散ったたくさんだけれどささやかな愛たちが何もできずに汚れた路面で灰になる、そんなもんさ、そんなもんさ、そんなもんさ、憧れに出来ることなんてよ…スローガンの前に本物の内臓をさらけだそうと考えたことはないのかい、例えば心臓、例えば肺…自分自身の鼓動、自分自身の腹腔、自分自身の…いいかね、志に出来ることは何もない、イラつく話だ…同じメロディを前に囀り始めたってそれぞれの歌があるべきなのに―ヘイヨー!お前たちは美しいよ!うんざりするほど美しくて吐気がする、インプットしたドリームでヨガってるだけじゃあ祈りを捧げたほうがマシってもんだぜ、そいつはプリミティブなものじゃない、そいつはプリミティブなものじゃない、そいつはプリミティブなものじゃない、そいつは…そいつは神格化したただのキャッチコピーさ
少し違う歌を歌う気はあるか、そこから出て…今まで気にしたこともないようなやり方で?少し違う風に吐き出してしまわないか、理にかなったものに破壊できるものなんて所詮は概念だけなんだ…少し違う歌を歌ってみないか、下世話で、卑劣で、あざとくて、直視を躊躇うような…ダーティーを知らないクリーンに何を語ることが出来る?お前らは、お前らは、たったひとつの細胞の増殖の挙句のかたちみたいだ―出来あがったものなんかほっとけ、そいつは少なくともどこへも逃げたりなんかしないから―ああそうだ、口上だけはひどく上手ときたもんだ!地殻の下で芽を出した植物の憤り、人間を激しく狂わせるものはまさしくそんな感情なんだぜ、狂えないものは正しくはなれない、判るか、言ってること…狂気がなければ正気だってありゃしないんだ、選択のループの中でひとは道を辿る、どちらか一方しかない道の上で何を悟ることが出来る?俺の言ってること判るか、俺の言ってること判るか?撃ち抜け、撃ち抜け、撃ち抜けよ、終点のプラットホームで全速力で足踏みするような真似をこの先も続けてゆくつもりか?お前が理解を求めるのなら脾臓の匂いまで差し出して見せるぜ…全的な俺の細部までどうか検分してくれ、俺は存分に愚かしいけれど何も見失ってなどいない…少なくともそのことだけは判ってもらえるはずだ
なにもかもが透き通って見えなくなってゆく、なにもかもが透き通って見えなくなってゆく、なにもかもが透き通って見えなくなってゆく、見えなくなった後で俺たちは何をする、言葉の枯れ果てた思考の砂漠の上で俺たちは何をすればいいんだ、パイオニアの名前なんかどうだっていい、何かを生み出そうとするなら…誰もが初めてのものを差し出せなければ無意味なんだ、フォロワーは何も深化させない、蒔かれた種を根絶やしにするだけさ、終点のプラットホームで全速力で足踏みするのか?乗ってきたハコにはもう少し燃料が残っているかもしれないぜ、そう、もうひと駅分…新しい駅に辿り着くぐらいの燃料が―足踏みするのか、折り返すのか、それ以外に手がないなんて決めたのは誰なんだ?そいつはただそこで終わってるだけのものさ、そいつはたまたまそこで終わっていただけのものなんだ…終点など無いんだ、線路の先を繋げるつもりがあるのなら…、歩くことだって出来るんだ、燃料タンクがカラになっていてもさ、オーオー!新しい靴を汚す覚悟があるなら先へ進めよ!膝がギクシャクするほど歩いても構わないって覚悟が出来ているんならさ…歩き出した先で迷っちまうのが怖いのか?そこからどこへ行けばいいのか判らなくなることが?歩き出しなよ、歩いたことのない道に標識は無いんだ…踏み入れたことのない道では何も決められてはいない―好きなようにして、誇らしく歩き続けるだけでいい
地殻の下で芽を出した植物の憤り、この世で最も光を求めているのはそういう存在さ、この世でもっとも新しい世界を知りたがるのは…お前はどこで生まれた、お前はどこで生まれた?誕生はまだか、誕生を知っているか、誕生を、誕生のことを…生き死にの中に描かれている系図が果たしてどれほどのものなのかを…!靴下を選ぶみたいに韻を踏みたがってる場合じゃない、すでに砂漠の上に立っているのかもしれないぜ、新しい道を引くんだ、新しい道を引くんだよ、己の心に従って…己の見たいものを見て、感じたいように感じて―感覚によって、つじつまを合わせていくんだ、昆虫がそうするように、蟻がそうして歩いてるみたいにさ…見つめるものは目だけじゃない、聞くものは耳だけじゃない、嗅ぐものは鼻だけじゃない…すべてのものを感じることを考えなければならない、血流のスピードと同じ速度で綴り続けることが出来るか―?俺がままならぬゴミのようにばらまいているものを見ろ、捨てられなかったものが倒壊してゆくみたいに溢れてくるそのさまを…それをポエジーと呼んで何の差障りがある…少なくとも俺が見知って選択してきたものの中じゃこいつは一番正しい感覚だ、見世物気分でさらけ出しているわけじゃない、いい加減あんたにだって判ってもらえてるだろう…革命を!革命を口にするやつらがいまひとつ胡散臭いのはさ、それがスマートに行われるものだと信じてるせいなんだ…殺す覚悟や殺される覚悟、そういったものが足りないせいなのさ、判るだろう、牙を剥くなら野性のようにやりなよ、牙というものの意味が分かるか?生かして、殺すもの、生かして殺すものだ、それは、生かして、殺すためのものなのさ…イデオロギーの戦いじゃない、革命とは、生肉を屠る覚悟でなければならないはずだ、ヘイヨー!ヘイヨー!ゲバラの面がそこらじゅうに溢れているぜ、まるで成功したみたいに!
違う歌を歌う覚悟はあるか?既存の、なんて意味じゃない、いままでお前の中に存在しなかったような新しい歌を?野性の脚をもって駆け抜けてゆくような、そんな言葉を歌いたいという覚悟があるか?息切れをすると首根っこに牙を立てられるぜ…生かして殺す革命という牙を―生死にかかわらぬ牙を剥くやつらなど英雄でも何でもない、そいつらはこぞってチンピラと呼ばれるたぐいのものさ―こいよ、イデオロギー闘争が好きならそうするがいいさ、ただし、こちらの脳みそをぶっ飛ばすようなイズムをそっちが差し出すことが出来るのならね…俺にはイズムがない、俺にはイデオロギーがない、俺には標識によって選んだ道がない、俺には食われてすり減った首筋しかない、食われ続けることもまた革命だと言ったらお前はきっと笑うだろう…お前はヒロイズムのフィルムにどっぷり浸かって居やがるからな…誰の為なんだ、ワードは、言葉は、変換は、比喩は、選択は、コピーは、ペーストは…?俺にはイズムなど無い、ただただ本能が命ずるままにキーを叩くのみだ…投身自殺の後で路面に散らばった脳漿のようなフレーズが知りたいんだ、それこそが鼓動に最も近い言葉のはずじゃないか―食い、あるいは食われて、殺し、殺されて、辿り着いた、結末、そいつが最も鼓動に近いもののはずじゃ…ぶちまけることは本当に不可能なのか?ダイイング・メッセージのような旋律、そいつを望むことは―?誰が確かめたんだ?誰が確かめた、誰がそのことの終点を見たんだ、俺はまだ見ていない、見えるとも思っていない、移動する湖のようにそいつは座標を変えていく、そのたびにすべてが変化していくんだ、移動する地形は命の数だけあるから…俺の見たがってる地上の景色、俺の見たがっている楽園、あるいは地獄、あるいはそのどちらでもあり、少なくとも容易くはない、風景…!オーオー、俺はぶっ飛んでるぜ、もっともっと速く、もっともっと速く…そうでないときっとそいつの尻尾にすら追いつけない…仮に、それがスピードの果てにあるものではないとしても…そいつを身をもって知るまでは求めなければならないんだ、身体が知ったものが本当でなければ俺たちの人生はまるで存在する意味など無いようなもんだ!躊躇うかもしれない、お前は躊躇うかもしれないだろう、俺だってそうさ、訳が判らなくなって頭がおかしくなっちまうかもしれない、だけど俺にはたぶんそれは出来ないぜ…強欲だからどこまでもこっちに留まろうとしてしまう…生き続けられるなら永遠であって欲しいのさ、受胎の際にも似たようなことを言った記憶があるけどな…なに、昔の話さ、なにもかもみんな、昔の話に過ぎないんだ、昔話が出来るってことはまだ生きてるってことだぜ、昔話が出来るってことは先に進む余地があるってことだ、なあおい、そうだろう、そうじゃないかい、お前には判らないのかい、俺が何を伝えようと目論んでるのか…違う歌なんだ、生まれるものはすべて…そこが終点でないことを理解している限りは
形を変え続ける湖だ、そこには時々毒の魚だって住む…ひどく手足が痺れてしまうけれど諦めなければ死ぬようなもんじゃない、追い込まれるぜ、だけどひどく追い込まれる、きっと…一秒先には真実がそこにはないんだから―来る気はあるかい、手を取ったりなんかしないぜ、先に行くも、後ろにつくもお前次第だ―仲間なんて言葉で呼ぶなよ、俺の本能は俺にしかないものだ、速さや、緻密さや、激しさや、悲しさに、新しい名前を付けていくんだ、過去を食らい、殺しながら…いくつもの死骸を踏みつけて、慣れた臭いを嗅ぎながら新しい景色を見る、その瞬間きっと光は差すはずさ、その瞬間…


新しい芽は必ず地殻を突き破って、誰も聞いたことのない産声を上げる、その時こそ俺は誕生と叫ぶのだ、見ろ、俺の命がある、俺の鼓動が…










新しい歌を歌う覚悟はあるか?










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2009/1/1

「叛く」とそこには記して欲しい  










組織の剥がれ落ちた楽園
翼に認識番号を振られた天使たちが
朽ちかけたバロックの前でうたを紡いでいる


そのうたは旋律に似合わず哀れで
冬の風に騒ぐ枯草の趣
とうに死に絶えた種族を語るとき
きっと似たような哀しみがあるに違いない


生きているものなどこの世には無いのだ
その証拠に
すべての芸術は過去でしか語られないではないか
上等に仕上げられた
蚕の繭の中は空っぽ
いくつかの糸を
強欲なうたい手が強奪したから
幼虫は凍えた
何も進化しなかった
永い死を示す炭素だけが残った


過去は夢魔の手のよう
恋人の囁きのよう
逃れるもつかの間
餓えた蛇のように
どこまでも伸びてくる


誰かが管理している
どこかで検分している
分類されて
存在はファイルキャビネットの
手首ほどの幅の価値しかない
それがどこにも届かないものだと悟った天使たちは
片端から同胞に喰らいついて死んだ
噛み千切られた彼らの喉元からは
永久に産まれないスペルたちがため息のように洩れた


ほら、頭上に手をかざしてごらん、彼らの血が垂れているのを感じる事が出来るだろう
受け止めてくれる誰かを探しているんだ、彼らが諦めたうたの続きを
楽園とはあらかじめ失われた幸福のようなものだ、君がそれをもしも引き継ぐと決意したなら
もう二度と優しい笑顔など浮かべられない事を覚悟しなくてはいけないよ、どこまでも続くうたをうたおうと決意すれば
君は嘘という名の元素で構成された海に潜らなければならない
うたを持たぬ知らぬものたちが深海魚となって
雑多な口で君の呼吸を奪おうとする、君は唇をきつく閉じて
決して酸素を彼らに渡してはならない
それは君が生きるために自ずから取り込んだものだ


たくさんの死骸を見る事になるよ、君の中にも、君の外にも
生命を信じられなくなるかもしれない、深く潜るという行為はだいたいそういうものだ
もしも君がそういったものに絶望したとしても
手を差し伸べてくれるものなどどこにも居ない、その辺りまで来ると
誰もがそれぞれに絶望と殺し合いをしている
孤独とは
立ち止まってしまうやつらのためにあるものではない
孤独とは
うたを紡ごうとするやつらのためにあるものだ
誰かが管理している
誰かが検分している
翼に認識番号を振られた天使達
世界の上で誰かの興味が涎を垂らしている


どっちみち死ぬ
どっちみち死ぬ
ああ、どっちみち死んじまう
いつかは失速する
いつかは窒息する
言葉を失くし、呼吸を失くし、記憶を失くし、意味を失くす
ああ
代わりに生き続けてくれる魂が欲しい、その為に
俺たちは運命を繰り返す
犬のように走り、猫のように眠り、蝙蝠のように逃げ、虎のように猛り、シマウマのようにうなだれ、そして
そいつらのどれよりも永く情けなく泣きながら
ああ
熱と鼓動を持った致命的な有機体
その性急な震えにしがみつくのだ


組織の剥がれ落ちた楽園、翼に認識番号を振られた天使たちが
朽ちかけたバロックの前でうたを紡いでいる、それは過去だった、それはまぼろしだった、それは茶番だった、それはエピローグだった
すべての記憶は歪み、墓標に吸い込まれ
何も無かったような静けさだけが残る
その静けさの前で何を紡ぐ事が出来るだろう
哀しいと泣くように
愛しいと跪くように
うたはあどけなく零れる事が出来るだろうか?
虚偽の無い涙のように
うたは唇を伝う事が出来るだろうか?


気の迷いでいい、呆れられるような
間の抜けた告白でもかまわないと言うなら
本当のことを話すよ
君と通じ合いたい、一瞬のまやかしでいいから
俺は君の心になりたい
君の心になって
俺のうたを抱いて永遠の一部になる


俺の臨終の後に
俺の死体の後に
俺の荼毘の後に







俺の
埋葬の後に










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