2012/2/9

売春婦のバギナには意外と詩が沁み込む  









昨夜は隣の部屋に住んでる売春婦のヴィッキーがよほど景気が悪いのか自室にまで客を連れてきてあああんたのキャノンボールとてもステキなんてよく分からないことを言ってヨガるものだから俺ときたらえらい寝不足で朝からいつでも倒れられるような有様で日がな一日甘ったるい臭いの中でクッキーを焼いてオーブンの熱でヘロヘロになりながらようやく週末がやってきたと小銭を慎重に勘定して絶対に大丈夫なぶんだけバーボンをがぶ飲みしてまあなんだかんだとクソみたいな出来事は沢山あったけれどそんなに酷いというようなこともなかったから今週もまあまあいい日だったとなんとなはなしに納得して薄汚いアパートメントまで辿りついたらヴィッキーもちょうどご帰宅あそばしたところでどうしたんだい今日はえらく股を閉じるのが早いんじゃないかとからかったら最近ちょっとオマワリサンに目をつけられていてねなんて顔のパーツがぜんぶ鼻にくっついてしまうんじゃないかというほどの仏頂面を作ってそういうので儲けたのかいと尋ねたら先週まではとてもよかったと言うのでどうして目をつけられたんだと聞くと新しくこっちのほうに手を伸ばしてきた大きなタチの悪い組織が上物でオマワリのボスのモノを弄んで文字通り掌握し奴らの思い通りに動かしはじめたっていうんでそいつは運が悪いなとちょっと同情したらなんだか思いのほか彼女の気分がほぐれたらしくネエあんたお酒持ってないかしらなんていうものだからクソみたいなワインでよかったらあるよと答えたらクソみたいなのでいいのよと言うのでちょっと待ってなと言って自分の部屋からあるだけ持ってきて飲みたいだけ飲めばいいと言うとどうしてこんなにくれるのなんて目をキラキラ輝かせながら聞くもんだから何週か前に繁華街の近くで酒屋のトラックが横転したときに何本かくすねた話を聞かせてやったらゲラゲラ笑いながらでもクソみたいなのねと言うからそうなんだよと答えて俺も酔ってたもんだからなんだかおかしくなって一緒になってゲラゲラ笑いながら一本空けて彼女に渡してやって自分の分も開けて乾杯して飲んでやっぱりクソみたいだと言ったらヴィッキーも唇の端で同意してそれから俺たちはグダグダ飲みながらいろいろと話をした、彼女はまず俺がどんなことをして生活しているのか知りたがったので一日中バカでかいオーブンでクッキーを焼いていると説明したら仕事していないときにはなにをしているのかと言うので音楽を聞いて読書をして時々詩を書いていると説明したら詩について知りたがったので俺はたぶん馬鹿にされるだろうなと思いながら自分が書き溜めているものの中からいくぶん短いものを選んでいくつか聞かせてやったら素敵じゃないと言うので逆困ってそうかなと言ったらそうよと言うので詩とか好きなのかと尋ねたら自分じゃ書けないけどねと前置きしてだけどあんたの詩は素敵だわと言うので俺はちょっといい気分になってクソみたいなワインをまた飲んで仲間はいるのかと聞かれたので仲間なんていうものはあんまり居ないけれどと前置きしていろいろと朗読会に集まるおかしな詩人の話を聞かせてやりその中で他人の詩からこそこそとフレーズをくすねては小細工して短い詩を読む姑息な男の話は彼女のお気に召したようであんたもその男に詩をパクられた事があるのかなんて聞いてくるものだからたぶんあると思うと答えたらたぶんって何よと言うので俺はそいつの詩にそんなに興味はないからと言ったらまたゲラゲラ笑ってだけどそいつまるで乞食みたい売春婦以下だわと言って床に唾を吐いてそれからどうして詩を書くのかなんて話をして俺は結局ひとりでいろいろやってるのが好きだから詩を書くんだってことに落ち着いてああそういう感じ凄く分かるわよとすこしトロンとした目で同意してだけどみんなつるみたがるんだと俺が言うと大笑いしてそれからもう飲めなくなったわと言うのでワインを隅に寄せて床の上で俺たちはセックスして心配しないでお金は取らないからと彼女はトロンとしながら言ってうんうんと言いながら俺は彼女のいろいろな突起や窪みに舌を這わせて彼女も同じようにしてそれからなんだかんだで俺たちはきちんと終了してしばらく床で抱き合って眠ったが俺は夜中に突然目を覚まし便所に行って帰ってきたらヴィッキーも目を覚ましていてそれもヤケに厳しい顔つきになっていて悪いけど帰って頂戴と言うのでどうしたんだいと聞いたらあんたはセックスまでひとりでするタイプなのねと言って空になったワインを投げつけてきて俺はそれを受け止め損ねて左胸をひどく打って瓶は床で電球がそうなるときみたいな音を立てて割れてでも君もちゃんとイッたじゃないかと反論するとそういうことじゃないと言いながらワンワン泣いてラチがあかないので仕方なくおやすみと言って部屋に戻ると売春婦を傷つけるようなセックスなんて初めてだと文節をくっきり区切りながら壁の向こうで傷ついたヴィッキーは怒鳴って俺は何かそんなに酷いことをしたのだろうかと思いながらでもしこたま酔っていたので穴だらけの毛布をかぶってやれやれと思いながら昼まで眠ったら目覚めたとき俺の部屋にヴィッキーが居てあの昨日はごめんなさいみたいなこと言ってあたし時々ナーヴァスに過ぎるのよなんて洒落たこと言うのでまあいいよと答えてそれから二人で安いコーヒーを飲みに出かけて何だかややこしいなと思いながらその日は一緒に過ごしてそしてまたバカでかいオーブンの前で甘ったるい臭いに辟易しながらクッキーを焼いてこないだとは違う理由でひどい寝不足で時々サボって便所で詩を書いてそれからまたクッキーを焼いて今日家に帰ったらキャノンボールって言うのは止めたほうがいいとヴィッキーに提案するのを忘れないようにしようと思いながら。






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2012/2/4

更地を転がれブルートレイン  










静寂のまま湾曲する感情には、寄り添う言葉が見つけられない、水の枯れた川の様にかつてそこにあったものを示し続けているみたいで辟易する、ヴォリュームをゼロにして流すオーケストラのプレイみたいだ、聞こえるのは無の足音ばかり、あらゆる負の感情を呆けたふりで見過ごすのが上手過ぎていささか閉口気味の今日だ、アブドミナルストレッチの直後みたいにキリキリと痛みを放つ内臓、なに、何事か背負い込んでるふりをしてるだけさ、別段そんな状況でもないくせしてさ、深刻な振りをしたがるんだよな、まるでそうすることでなにかスペシャルなアイデアを捻出出来るとでも考えているんだろう、下らないこと言ってるんじゃない、センスなんて努力でどうこう出来るような代物じゃないんだぜ、それはアンテナの違いなんだ、それと解釈の…


今ではもう名前が変わってしまったドラッグストアの薄暗い化粧室で僅かな食物を嘔吐した朝のことを思い出した、あれは確か20代の前半のころのことだった、そんなことを思い出すのはきっと昨日あの店のあるあたりを散歩したからだ、暑い季節だった、でも真夏じゃなかったな、汗がだらだらと流れるほどの気温ではなかった、きっと初夏の頃のことだろう、クラクラと朝から目眩がして、「どうしようもない」って仕事を休ませてもらったんだ、下らない汚れ仕事だった―下らなくない仕事なんか生涯で一度もしたことが無いけど―ともかくその日は仕事を休んで、バナナを食べて茶を飲んだ。おかしな組み合わせだって?その時きっと一番手軽に用意出来たものだったんだろうね…ひと休みしたら楽になった気がして、ともかく薬を買いに行かなければいけないと思ってちょっと無理して出かけたのさ、ふらつきながら…あのころはよくそういうことがあった、鎮痛剤を飲むと何故だか落ち着いたんだ…レジで順番を待っている間に朝食ったものが込み上げてきた、商品をレジに置いたまま化粧室に駆け込み、便器に吐こうとしたが間に合わなかった、個室の入口のところで少し漏れてしまった…すべて吐いてしまってから店員に事情を説明して清掃具を借りようとしたが紙で拭いておいてくれればいいということだったので、手洗いのタオル替わりの紙を使って掃除した、軽く食べただけでよかったと心底思った…掃除を済ませてペコペコ詫びながらレジを済ませ、部屋に戻って薬を飲んで、ようやく落ち着いて数時間か眠ったんだったかな…


時間が出来ると訳もなくいろいろなことを思い出す、特別なんの示唆も教えもない、そんな出来事ばかりを―まるで記憶のフォルダが破損して、中身がぽろぽろ零れてくるのをたまたま拾い上げたみたいな感じで…まるで便器の手前で零れてしまった吐瀉物を眺めるみたいにね―俺の生まれたわけはどこにあるだろう?そんなこと考えてもしかたが無いことは分かっている、昔は時間をかけてあれこれ考えさえすれば、なんらかの答えが出てくるものだと信じて疑わなかった、だけどそんな確信が幻想であることに気付いてからは、目の前のことにあまり執着しなくなったよ、すべてはきっと風でめくれるページみたいに現れては消えてゆくのさ


あのころは1階にひと部屋の、4階建ての建物が2棟、向かい合って連結されたハイツの、4階の南側の部屋に住んでいた、ロフトがあって…3階に住んでいた水商売の女はコンクリが剥き出しの階段を夜中にヒールで踏みつけながら帰ってきたものさ…まあこちらも別に眠っちゃいなかったからべつに構わないんだけど…ドアをもの凄く勢いよく閉めるんだ、まるでそうすることが運命づけられてるみたいにさ、教団の教えで決められているみたいに頑なに…街の近くで、真夜中に電気を消していたって真昼のように明るかった、近くの大橋を渡る大型のトラックのうねりがずっと聞こえていた、朝になると近くの住宅地で飼ってる鶏が凄え声で鳴いた…まだ薄暗いうちからだぜ!…聞こえるはずのないものもあそこではいろいろと聞こえたんだ、たったひとりで眠っていても時々、女が囁く声が聞こえることがあった…いや、声が聞こえるだけならまだよかったさ、あるときなんかずっと背中を凝視されたことがあった、振り返ってもなにも見えなかった、だけどそこには確かになにかが居て…たまらなくなって逃げ出すことにしたんだ、ロフトを降りて着替えていると、ロフトの柵にもたれてそいつがこちらを見下ろしているのが分かった、そういう感じが確実にするっていうの、分かるかな…いっそなんか見えた方がマシだって思うぜ、きっと―昔歌ったことがあるライブハウスに逃げこんで数時間過ごして帰ってみるとそいつはもういなくなってた、あれは秋口だっただろうか?真夜中の場面からは季節を判別出来ない


静寂のまま湾曲する感情には、寄り添う言葉が見つけられない、コルトレーンのブルー・トレインの旋律に乗って、どうでもいい過去が垂れ流されてゆく、むかしが脳に詰まれば詰まるほど、ひとは無になっていく気がするね…







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2012/2/2

街のにおいを少しだけ嗅ぐ  






ハイブリッドタイヤでアスファルトにプレスされた鳩が、赤い薔薇の刺繍のついたスカーフの様になって風になびいていた。眠り過ぎた瞼が熱を持っていて重たかったが、コンピューターでプログラムを書き換えたみたいにすぐになくなった。橋の上から川面を眺めると、雲間から太陽が覗いて小さな波の先端に光の粒を撒いた。住処からそう遠くない小さな本屋に雑誌を買いに行ったんだ…絶望みたいに冷たい風を正面から浴びながらね。本屋の近くに、ずいぶん昔に閉店した飲食店の廃屋があって、年端もいかない連中がしょっちゅうそこに忍び込もうとして窓やら壁やらに穴を開ける。近頃じゃバカでかい板で窓のほとんどを塞いでいる。その都度きちんと処置されているということは、管理してる人間が近くにいるらしい。その廃屋のすぐ隣にハイグレードマンションが建つことになって、何ヶ月か前から工事が始まっている。屋根に穴の開いた廃屋とハイグレードマンション。工事が完了すればそれはまるで、バランスの悪い双子みたいに見えることだろう。ミック・ジャガーがブレイク・ザ・スペルと歌っている。獣のような唸り声だ。それは俺の歩く速度にある種の呪いをかける。生きながら…ブルースに葬られ。その言葉がどんなことを語ろうとしていたのか近頃はよく判るような気がするよ。工場の機械のうねりがまだ耳に残る、自分の身体が溶解されたなにかの原料になったみたいな気がする、ドロドロに、溶けた、高熱の、なにか…それはなにを形作ろうとしているんだ?どんな製法でもって、どんなニーズに答えようとしている?タフで、ハードなものか?あるいは、順応性に秀でたものか…。本屋の前の小さな信号を渡る。本屋に入り、目当ての本を見つけるが、店の中には誰も居ない。小さな店の中をしばらくうろついていると、店主が戻ってくる。俺は気付かないふりをして、とある週刊誌の見出しを少しの間読んでいた。落ちぶれた元アイドルがアダルト・ムービーで痴態を晒したそうだ、ふぅん。きっと、なにをやったって追いかけて来てくれるヤツはいるんだろうな。そんなヤツらを最後まで大事にしたら、もしかしたらそれは彼女の勝ちってことになるのかもしれないな。拍手も、称賛も、スポットライトのひとつもない勝ちかもしれないけどさ。薄暗い店内の照明のなかで読むそんなニュースには、なにかいまの気分にしっくりきすぎるものがあった。本を閉じて、レジで精算してもらった。店を出た途端に強く冷たい風が横から叩きつけてくる。巨人の平手を喰らったような感じさ、コミックでよくあるだろう、人間離れしたサイズの悪役とかさ…あんな感じ。信号を待ちながら何事かを考えたのだけれどすぐに忘れてしまった。赤信号に変わるぎりぎりで突っ込んできた車のステレオから聞こえていたくだらないヒップ・ホップのせいさ。打ち込みのビートで身体を揺らすような真似だけは絶対にしないぜ。信号を渡って、特別用事もないがコンビニを覗く。まだ時間が早いせいか、あまり人気はない。オカルト雑誌とゴシップ誌をしばらく立ち読みして、なにも買わずに出た。まだ昼前だというのに学生の姿が目立つ、試験期間中かなにかだろうか?学生のスケジュールなんかにもうどんなリアルも感じることはない。ほんのわずかな距離を歩いただけなのに、もう身体が冷え切っている。ウンザリする。そして、寒波のせいに出来ることに少し安心する。少なくとも今日という日にはそういう拠り所がある。正しい、正しくないに関わらず、理由というのはあるにこしたことはないのさ。家の鍵を取り出して玄関を開ける。朝日以外はよく当たるこの家。少し身体を伸ばす。なにかを始めなければならないことは判っている。けれどそのためには、もう少し悪くない気分とやらを味わっておかなければならないのだ。





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