2013/3/24

生まれを鎮めるためのなにか (The Collection)  







鼓膜が歪むくらい丸められ詰め込まれた愚劣な落書きにも似た囁きのあれこれは限られた空間で腐敗し膨張し支配し圧迫し痛烈な痛みを脳にまで届かせる、暴力的な静寂の中で網膜に虚ろを記録し続けている霧雨の午後、混濁した音楽が現実とは別のどこかで鳴り続ける、不法投棄された鉄の錆びの集合で流れが澱む河のような感覚だ、いつのまにか過ぎているのに決してすんなりとではなく、例えば内耳などに、陰鬱な軌跡を残して行く、日常というドラッグが移動して行く、すでに死んだ誰かの内臓を擦りつけるみたいな感触を残しながら、バッドの方角へ侵食して行くアドレナリン、廊下の暗がりにこの後向かうべき方角が掲示されている、しなだれ落ちた植物が重なり合って自らの墓場を彩る、目を離している隙にだけやつらの色は失われて行く、僅かな距離でも望遠が必要な瞬間がある、例えばそれは今だ、なにを見たい、どんなものを見たい、あるいはそう思っていた?問いは発せられる、無差別な銃の乱射のように、誰にもヒットしない弾丸、誰の血も流れない死、放たれた願いはどんな死を望んでいたんだろう、火薬の匂いに塗れながらどんな血を飲み干したかったんだろうか?湯葉のような釈然としない抵抗、そんなものがすべてを阻んでいるこんな時間には?血を欲しがるのは当然だ、なあ、血を欲しがるのは当然だよ、俺は満足しないいきものだ、なにか激烈なものが欲しくていつでも呻いているのさ、ディスプレイに向かって、キーボードを叩いて、欲しいものはいつでも同じものさ、それはいつだって決まってるんだ、生まれを鎮めるためのなにか、生まれをとろけさせる絶対的な何か、餌に群がる家畜のように俺はそいつを欲しがってるんだ、だけどそいつには家畜の餌とは決定的に違うところがあり、尚且つまるで同じところもある、つまりそれは餌には違いないんだ、食事とは違う、もっと根源的に魂を潤わせるなにか、だけどそれは誰かが目の前に投げ込んでくれるようなものでは決してなく、必ず自分がどこかから掘り出してこなければならないものだ、それが家畜の餌とは決定的に違うところさ、俺はそれを掘り出して屠らなければならないのだ、こんな時間に身を任せているのはそんな理由からなのさ、気に病むような蓄積を眺めろ、気に病むような蓄積の示唆するものを読みとれよ、ボーイ、そいつを見つめることが何よりも大切なことだ、そいつをどうにかしようとして躍起になった俺以前の誰か、そいつらがここにそれを置いて行った、俺にではない、そいつに気付ける誰かに託すために、そして俺は気付いた、そして手に取ったんだ、そして俺はそいつを眺め続けている、それは死に絶えない、それは腐敗しない、それは炭化しない、それは化石にならない、いつでもどくどくとひどいバリトンの脈動を鈍く響かせている、そんなものを見つめていると俺は時々、自分の肉体が既に腐敗しているのではないかという幻想に捕われることがある、ほら、指先から垂れ落ちてゆく俺の身体、それは俺の骨盤まわりに嫌な臭いの溜まりを作る、そこにはジャジューカのような湿気がある、俺はウェザリングを施された骨格になり、キーボードを叩く、ディスプレイには訳の判らない文字列が表示されている、ほら、俺の言葉は俺だけのものになった、そいつはきっと、俺と同じような誰かをここに導くだろう、そいつはきっと、俺と同じような肉塊をもうひとつ作るだろう、それは連鎖というよりも感染と呼んだ方がきっと収まりがいいはずさ、判るだろう、それは根源的な魂に巣食う異質な細胞さ、だけどそれは蝕むものじゃなくて貪るものなんだ、ほら、判るだろう、俺の口元を見てみなよ、俺から滴り落ちた肉体が付着しているだろう、俺はそれをもう一度吸収して、生成していくのさ、ループするんだ、もう一度、もう一度、何回でもやり直すのさ、俺は純正ではないから、再構築の際に必ず違うものが混じり込む、それを排除するか取り込むかはそのあとの俺次第さ、生まれるとはもがきのたうち回る行為だ、連続するそんな瞬間瞬間からこぼれてくるものたちのことが、俺は愛おしくて愛おしくて仕方がないんだ。







0

2013/3/11

おれはヒトゴロシにはなれなかった  







こういうの書いてなかったら
おれはたぶんヒトゴロシになってたさ
気に入らねえやつらみんな
徹底的にヤッちまうヒトゴロシになってたさ
おまえがおれと目を合わせれば
おれはありもしない悪意を読み取るぜ
そのままなにか仕掛けてくるようなら
腐った柿みたいになるまで顔面をブチのめすぜ
ホントはそういう人間なのさ
湧き上がるものを堪えられないのさ
鎮める術を見つけられなかったら
きっといまごろ監獄の中だったろうな
夜通し積もりに積もった幻覚に騒いで
牢屋番にしこたま殴られてくたばってたかもな
渦巻くものをねじ伏せて黙らせる
そんな手段が必要だったんだ
自分のやりたいことははっきりしていたさ
ヒトゴロシにならなくてもいいなにか強烈なこと
ヒトゴロシにならなくてもいいなにか懸命なこと
自分のキチガイとうまく折り合いをつけて
涼しい顔で街を歩くための方法
聖人君子になるために
こんなことやってるわけじゃないのさ
そんなことやってるやつらのおめでたさなんか理解出来ねえ
ハンドルの壊れた疾走するバイクの前輪蹴飛ばして方向を変えるような真似をやり続けてきたんだ
しくじったらどっかに激突して一巻の終わりさ
だから面倒な話をおれに持ち込むなよ
しょうもないアクションでおれの足を止めようとするなよ
次のカーブがどう曲がるのか見極めなくちゃならないんだ
止まることがまだ許されないから
そうして走っているしかテがないのさ
もしもおれの邪魔をするってんなら
おれはヒトゴロシになるかもしれないぜ
ヒトゴロシになって
おまえのことをヤッちまうかもしれないぜ
余計なことはしてくれるな
おれはおれでやってくしかない
こいつをねじ伏せながらやっていくしかない
おれはヒトゴロシなんかになりたくない
だから油断させないでくれよ
だから邪魔はしてくれるなよ
常に気をつけてなくちゃならないことなんだ
常にバランスを取ってなくちゃいけないことなんだ
おれはおれなりのまともさを
まともさを追求して生きて行くのさ
たとえばそれに誰かが納得出来なかったとしても
それはおれの問題じゃない
そいつ自身のなにかしらの問題なのさ
ひとは他人になれたりはしないんだ
共通言語なんか少ないほうがアタリマエってもんだ
そういうことが判らないやつらがヒトゴロシになったりするのさ
少しは判っているこのおれは
だからこんな時間にこんなものを
液晶画面をテカテカ叩いて書いてやがるのさ
判るかい
エンジンの掛け方さえ見抜くことが出来たら
壊れた車でもなんとか前に進むぐらいは出来るのさ
さあ
道の先が見えてくるころだ








0

2013/3/7

まだ見ていないものがある限り俺は何も知らない  

 





指先を切り裂いて、騒がしい血を全部抜いて、滴るものを飲みほして、温い悪夢を循環させる、脳下垂体に張り付いた、混然一体の俺のグラフィック、歪み、千切れ、撒き散らされながら、どんな軌跡をたどろうとしていたのか、運命は寝床の染みで宿命は下腹部の不具合だ、目の端で光がいくつも瞬くような痛み、いったい何を照らそうとしている、妙な冷たさに凍えた爪先はいつでも、存在を受け止めてくれる地平を探している、尺取虫の様に蠢きながら―生命は、存在は、常にのたうち回るものだ、死人の様な悟りなんて俺は欲しくは無い、道標を到達点だと考えるような愚かしい真似は―まだ見ていないものがある限り、俺は何も知らない、まだ聴いていないものがある限り、俺は何も知らないのだ、俺にお前の程度を擦り付けようとするのはよせよ、指についた糞をつけるみたいにさ、そんな程度のものはもう見飽きた、そんな程度のものは―こねくり回せば、積み上げていけばなんとかなるなんて程度のものはさ―お前は業なんてものについて考えたことがないだろう、やむにやまれぬ発端のことを、生身の体内で騒ぎ出すポルター・ガイストのことをお前は知らないだろ?俺の理由のすべてはそこにある、それがきっと俺とお前の違いさ、お前が言っているようなことに俺は興味がない、俺が打ち破りたいものは俺の脳髄だけ、他のことになんかまるで興味がない―ナントカ様ごっこがしたけりゃ俺の目につかないところでやるんだね―これだけのことを並べている間に、あれほど切り裂いた指先の傷は塞がり、幾何学的な瘡蓋に覆われ、あれほど溢れた血液は再び生成される、それは体内を駆け巡り、冷えるだけ冷えた温度を再び熱くする、判るかい、その繰り返しだ、俺がやっていることのすべてはそうした反復なのさ、同じ傷口に沿ってもう一度切り裂くのさ、もう一度そこから生まれてくる熱が欲しいのさ、したり顔なんか死ぬまでしないぜ、それはこの世で一番恥ずかしいことだ、まだ見ていないものがある限り俺は何も知らない、まだ聴いていないものがある限り俺は何も―薄暗い天井の隅に俺はそう話しかける、声は僅かに反響して意志を形作る、俺は存在の中に巨大な穴ぼこを見る、まだ知らない場所がある、まだ見ていないものがある、この穴の中に…そのことがはっきりと判る、俺はその穴ぼこを覗きこもうとする、穴の中に可能な限り身体をねじ込んで、そこにある何かを見ようとする、でも見えない、何も感じることが出来ない、塗られたような暗闇と、塞がれたような静寂がそこには充満している、他のものが入る余地がないように思える、足りない、まだ何かが足りない、その何かは、生きているうちになんとかなるものなのかもしれないし、生きてるうちにはどうしようもないものなのかもしれない、俺は穴ぼこの前で舌打ちをする、まだ見たことのないものがそこにある、まだ聴いたことのないものがそこにある、俺は何かを知らない、まだ何かを見たことがない、穴ぼこはいつまで開いているのだろうか?そんなことも判らない、行き場のない感情が言葉に変わりはじめる、もどかしい手を出来るだけ早く動かして、少しでもたくさんの言葉に追いつけるように、少しでも多くの言葉を焼きつけられるように、書き残せるように―なにかが俺に生きろと言う、俺にはその声に答える余裕さえない、この言葉がどこに行くのか俺は知らない、俺の知らないところの俺から生まれたものに、俺の名前がついて掲示板に曝される、それは俺にとって理想的な在り方だ、書くことに安住したくは無い、綴るたびに生まれるスピードはまだ新しい何かについて話そうとしている。






0



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ