2013/7/31

あらゆるものは砂の数  







濃霧のような夜の中で揺らめく影、ぼんやりとした輪郭を辿って…壊死したような思考がまるで要領を得ない文脈を蒸気のように吹き上げている夜の帳、渇いた砂のような身体を壊さないように、胡坐をかいて目の前にちらつく波形を見ていた、描く旋律の中に隠れている理由は何だ?時々思い出したみたいに熱を帯びる詩情の中に潜んでいるものはなんなのだ…?特別そいつに深く関わったりなんかしない、深く関わることこそが真理だなんて俺は考えない、声高に叫ぶことだけがアティチュードだなんて俺は考えない―狙える的はすべて無視するべきだ、安易な結論の為に生きることだけはしてはならない、時計を見る、そこに喪失されたものの数を数えてみる、取るに足らないことではある、だけどそれだって喪失には違いない、その喪失の為に失望することは出来ない、俺の言ってることが判るかね、喪失なんて日常的に行われているものなんだよ…死に絶えた鳥類の羽が降り積もっているみたいな時間だ、すべては失われて…どうだい、そいつはひどく情緒に満ち溢れているじゃないか、積み上げるのはよしなよ、積み上がっていくものを見てなよ、そんな種類の確かさを信じなければ、きっとそれ以上どんなところへも行くことは出来ないぜ…ゲージ爪弾いてるルー・リード、マジックのことを歌っている、マジックのことを…俺も少しばかりそのマジックのことを知っている、彼ほどではないにせよ―どんな時に、どんな音を求めるのか、それが一番大事なことだよ、それが一番大事なことだ、満ち溢れていけばいくほど、立ったひとつを探し出すことが重要になってくる、そうして見つけ出されたものを、詩情と呼んではいけないか?俺の言ってることが判るかい、何だか判らないものこそが一番確かなものなんだ、正体のはっきりしないものだけが…そんなものの為に俺たちは生きているのだから、そんなもののことについてうたわなければ、深い海の上で浅いところ魚ばかり捕まえているのと同じことさ―息を止めることが重要じゃないんだ、どの深度の、どの階層の、どんな生身を拾ってくるのか…そいつを選択することが一番大事なことなのさ、手を突っ込みさえすれば拾えるものになんて俺は興味がない、俺が知りたいものは、俺が書きたいものは、いつだって見たことが無い階層に住んでいる生物のような呼吸、五感とはまるで違うもので地下水に潜っていく目玉が退化した生物のようにさ、どこに行けばいいのかが勝手に判ってるような潜り方が理想なんだ、そうして掴んできたものを、ただ放り投げて、ある種の選択と選別のもとに、捨てることなく、配列を変えて…そこにはきちんと宿るものがある、そこにはきちんと宿るものがあるぜ、それは選択と選別と配列のもとに訪れるんだ、魔法陣と呪文によって現れる魔物のようにさ、それは確実に下りてくるんだ、それは何かなんて知る必要はない、そうだろ?それが役割を果たしてくれるなら、そいつがどんなものなんか知る必要はない、そうだろ?知ることは重要ではない、知ることになんて大した意味はない、大切なのはとらえることが出来るかどうかさ、その一瞬一瞬に、その時だけの名前をつけることが出来るかどうかさ、俺はそういうことのやり方を試し続けているんだ、俺は説明が必要なものになどなりたくない、俺は出来ることならただの疑問符でありたい、いつでも、いつでもさ、違和感と言ってもいい、しくじった溶接みたいな有様でさ、向うの景色を透過して見せてみたい、そんなものが俺が見ようとしているものに他ならないのだ、夜が凄い勢いで湿度を増して行く、明日までにいろいろなところで雨が降るらしいとラジオが言っている、今夜、世界は果てしも無く濡れるのだ、愚直な詩人はその中へ飛び出して詩を叫び出すだろう、路上の詩人、頼まれもしないのに割れた声で詩を読みあげる路上の詩人、気をつけなよ、俺にそんなもの見せたら喉笛を掻き切るかもしれないからな―そんなものにはなんの意味もない、そんなものには…滑稽さを装いながら真剣さを見せるのはよしなよ、そんなのはどんな世界でもみっともないとしか評されないんだぜ、静かに、気持ちを落ち着けて、自分がやるべきことだけをすればいいんだ、自分がやるべきことを理解しているのなら…俺は胡坐をかいた脚を崩して投げ出す、堰き止められていた血液が騒ぎ出す、軽い痺れ、指先に軽い痺れ…時々血液は電流に似ている、それは温度で感電する電流なのさ、温度の種類は多彩だ…そう簡単に通電することなんてない、肉体の温度の動き方を知るんだ、そいつを詩情と呼んで何か差障りがあるか?そういうものこそを俺は詩情と呼ぶんだ、それこそが死に絶えた鳥類の羽なんだ、死に絶えた鳥類の降り積もる羽さ―違いなんかない、違いなんかないぜ、死の種類はひとつしかない、死の理由はうんざりするくらいたくさんあったとしても…ほら、果てしなく積もっていく羽の中に俺は埋もれて、彼らが生きていた頃の蠢きを聴いている、それは俺が昨日について書く詩とまったく同じもので、だからこそ新しく生まれる、判るかい、気になった場所をずっと掘り続けることだ、どんなふうに掘ったって構わない、気が向いた時に少しずつ彫ったっていい、気が乗ってきたら狂ったように掘ったって構わない、だけど理解しておけよ、ひとつだけ理解しておくんだよ、その行為に自分がどんなものを求めているのか、そのことだけは理解しておくんだぜ…土か、暗がりが、石か、生物か、温度か、湿度か、臭いか、色か…


そして、どれかひとつになんて絶対に決めちゃいけないぜ。






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2013/7/26

魂乱刈り(たまらんがり)  





日常に生えふさぼる
魂を刈って過ごした
油断してるとすぐ増える
根ごと抜いてもすぐ生える
恐ろしくしぶとい
恐ろしくしつこい魂
これでいいと思っても
これでいいと思っても
驚くべき繁殖力で
日常の床を隠すうっそうとした魂
刈って刈って刈って刈って
部屋の隅に積み上げても
振り返るとまた同じように生えている
あぁ
俺に何をやらせたいんだ
クタクタなんだ
休ませてくれ
新しいことが進行してくる
欲望という名の戦車に乗って
俺は刈って刈って刈って
あとの処理が追いつかない
燃やすと火事のもとになるし
ほっとくと腐るし
魂の腐敗臭、嗅いだことあるか?あれはそりゃあひどいもんだぜ
俺は刈って刈って刈って
あるときブチ切れ
刈った魂を片っ端から喰ってった
魂は悲鳴を上げ、オーイ
なんてことしやがんた、と抗議の声を上げた
俺は構わず喰い続けた
あたりは魂の血飛沫で汚れ
口の中にはひどい味がした
俺は魂を喰って喰って
魂はアクの強い魚みたいな噛みごたえだった
残り少なくなった魂は両手を合わせてやめてくれと懇願していたが
俺は御構い無しに頭からかぶりついた
ぷひゃっという音がして魂の脳みそが潰れた
朝から晩まで魂魂
寝ても覚めても魂魂
俺はたまには魂の無い世界に行きたかったのだ
魂ばかりの世界は時々堪らないのだ
刈った魂をそうして喰らい尽くしたが
どうやら喰らうのに時間がかかり過ぎた
新しい魂が日常の床を埋め尽くしていた、この野郎
関わるのをやめてひたすら殺してやろうか
酷い毒でも撒いてあの世へ送ってやろうか
だけど俺はまた魂を刈って刈って刈って
今度は積み上げたりしようとせず
形状に従って自然な形に並べてみた
自然な形の魂の集合はなにかしら
例えば暗示のようなものを感じさせたが
漠然とし過ぎていてなんなのかは分からなかった、そして俺はそのことが結構気に入った
おそらくそれは普段から慣れ親しんだ名前で呼ぶことが出来たが
その名で呼ぼうとは思わなかった
得てしてそうしたことはやり過ぎるとつまらなくなるものだ
俺は魂を刈って刈って刈って刈って
並べて並べて並べて並べた
並べられた魂はスマートな女のような色気を持ち
そのことを誇らしく感じていた
それで俺はしばらくの間そのままにしておいてやろうと思って
寝床を用意してクタクタの身体を休めた
クタクタの身体はセクシーな配列の魂を飲み込み
夜の間に俺の肉体と完全なひとつになった
その配列はきっとそのうち
朗読会なんかで良い余興になるだろう



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2013/7/10

灰の中の目玉  







遠くへと叫ぶ声は、振り返る者を待つことはない、乾涸びた情熱でも、いつか灯る火種を隠しているのなら、持ち続けることは滑稽じゃない、お前の干からびた白骨は、お前自身の言葉で再生されるのを待っている、限りなく死滅に近い、臭いを、嗅ぎながら…へヴィー・メタル、ハード・ロック、インダストリアル・ノイズ、あらゆる刃物が身体の中を駆け巡っていく、切り刻んで、切り刻んで、切り刻んで、そら、嘘じゃない血脈を探せ、嘘じゃない血脈を探せよ、本当の血が流れてる場所がどこかにまだあるはずだぜ、保身のために吐いたホラのせいでお前は死に過ぎた、死に過ぎて、生きながらがらくただ、がらくたの存在は死滅しない、だから存在し続けてしまうぜ、そいつを燃やすには本当の血液が流れる場所が必要なんだ、お前はそれを探し続けなくちゃならない…食道から腕を突っ込んで胃袋あたりを探して見なよ、溶けずに残っているものがどこかにあるはずだぜ、そいつは正しい流れを阻害している、そいつは正しい流れを阻害しているんだ、そいつは正しい流れを阻害している―何故だか判るか?見つけてもらう必要があるからだ、異変を作りあげて、調べてもらう必要を演出しているのさ…見つけてもらわないことには話しにならないからねえ、お前を阻害することでお前に見つけてもらおうと画策しているのさ、腕を突っ込んでも見つけられないのなら、お前は身体を透明にして、そいつが点滅しているところを見つけ出さなければならない、どうにかしてそいつだけは見つけ出さないといけない、だってそいつは、お前にとって一番大事なことを隠し持っていやがるんだ、火種さ、ひとことで言うなら、そいつはお前の乾涸びた情熱を再び燃え上がらせる火種を持っていやがるんだから…人間の一生は進化を求めるのか?それとも築いてきたものの維持を求めるのか?そいつはどこかに決められなければいけないのか?判んないのかい、よう、判んないのかい―維持が成り立たないのなら進化だってあるはずがないじゃないか、遠くへと叫ぶ気持ちがあるのなら、振り返らなくても構わないぐらいに自分のしてきたことをしっかりと抱えていることだ、火事場泥棒のように欲深に抱え込んでいることだ、一つも落とさない覚悟でだ、覚悟だぜ、落とさないことが重要なわけじゃないぜ、火、火、火はどこで燃え上がるのか?火の意味を教えろ、火の意味を教えろよ、お前が燃えあがる為の…燃えあがらないことを美徳とするのならこんなものに手を出すべきじゃない、ええ、大人しく情報誌でも読んでいることだ、火、火、火は激しく燃え上がる、それが燃えあがる時の激しい風を、お前もまだ覚えているだろう、白けた顔をしてないでこっちに来いよ、もう一度胃袋の中に手を突っ込んでみなよ、ええ、消化されずに残っているものがきっとあるはずさ、お前を阻害するもの、お前を阻害するものの歪な形状を、お前を阻害するものの歪な表情を、お前を阻害するものの歪な能動を、お前はただ余すことなく記してみればいいのさ、記すことが重要なんじゃないぜ、記すなんてことにはなんの意味もないのさ、記してみるということが重要なのさ、それが試されるということが…まさか、それを抜きにして本物の血液が流れる場所を知ることが出来るなんて思っちゃいないだろう?腕を突っ込んでも何も見つからないのなら身体を透明にしてそいつが点滅しているところを見つけ出すんだ、そいつはお前に見つけてもらおうとして画策しているんだぜ、おいそれとは伝えられないものを落とさない覚悟でごまんと抱えていやがるんだぜ、覚悟だ、落とさないことが重要なわけじゃない、遠くへと叫びながら、お前の火が再び燃え上がるのを待っている、それはまるで凶暴な祈りだ、人死にが必要な祭りだ、首を刎ねろ、もちろんお前の首だ、祭壇に掲げろ、そして遠くへと叫べ、維持したまま、進化を始めるんだ、なにも落とさない覚悟で、乾涸びた白骨に新しい肉体を塗りつけろ、肉と血と臓腑の臭いでそいつを塗り潰してしまえ、それが生命だ、それが火種だ、それが、激しく燃え上がる火なのさ!







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