ほら、そこで見なれない何かがまた息を潜めている  






全ての詩文を引き裂いたとしても生まれてくるのは新しい詩なんかじゃないさ、魂の触角に植えつけられた古い血が次のセンテンスへの欲望を昂らせるんだ、さあ、いまのおまえのあるがままをここに書き記せばいい、最初のフレーズを打ち込むだけでいい、あとは培ってきたものが勝手に続けてくれる、慣れたものも新しい試みも、突然変異もお手のものさ、少しの間頭をからっぽにしておくだけでいい、潜在意識のフィールドで詩情狩りが始まるんだ、動脈のようなやつだけをここに連れてこい、動脈のようなやつだけをここに連れてきて、急所に刃物を当てて一気に引くのさ、吹きだした血がディスプレイにその時だけの模様を作るだろう、たった一滴の血には語れないものがそこには生まれるのさ、目を閉じてみろ、まぶたの裏で暴れる光があるだろう、そいつのことをどれぐらい語ることが出来る?高速で移動するものを出来る限り記録するのさ、その数が多いほど生命は証明される、その数がとめどないほど心脈に近づくのさ、詩とは視覚化された脈動なんだ、いまのおまえのあるがままをここに書き記せばいいんだ、ナイフを何度も壁に突きたてるみたいにさ、ひとつだけじゃ駄目だぜ、ひとつだけじゃひとつのことしか語ることは出来やしない、連なりこそが重要なんだ、繋がりこそが意味を持つんだ、それぞれの意味が毛細血管のように絡まりあって交差しあって、ぼんやりとした断定を始める、本当のことは決してそのまま語られることはない、そのものには決してこうと当てはまる表現が無い、だからたくさんのフレーズが必要になる、たくさんのスピードが必要になる、なるべく絡まり合うように、なるべく見定められないように、複雑なコンテンツの連なりが真理をそれとなく連れてくるんだ、それがどんなものかなんて俺には判らないぜ、それがどんなものかを定義することになんてまるで興味が無いんだ、それは亡霊を現実か否かで語るようなものさ、実体、そう、実体に集中するんだ、語るべきものはそこからいくらでも生まれてくる、そう、だって、そいつは絶対に語り尽くせるということが無いのだもの、砂漠の砂のようにそいつは俺たちのことを取り囲んでいるんだ、完全に包囲して、いつか喰らいつこうと待ち構えている肉食獣みたいにさ、完全に包囲して、取り囲んで、こっちが力尽きるのを待っているんだ、諦めるのを待っているのさ、ぶっ倒れて、もうなにも書けなくなるその時を待っているんだ、実体に集中するんだ、そいつにまとわりついてるものを出来る限り引っぺがしていかなくちゃ、なんにも知らないままで死んでしまうのさ、見えないものほどよく蠢くぜ、聞こえないものほど叫んでるんだ、本当の実体に触れることが出来たら、おまえにもきっとそのことが判るはずさ、見えるものに、聞こえるものに惑わされるな、そこにあるのはよく出来た風景だけなのさ、全ての詩文を引き裂いても生まれてくるのは新しい詩なんかじゃない、混線し続ければし続けるほど、浮き上がってくるいくつかの旋律がある、そいつを捕まえるんだ、潜在意識下で狩りを始めるのさ、動脈みたいなやつだけを狙うんだぜ、ひと息で出来る限りそいつらの血をばら撒いてやれ、それは溜まりになったり、霧になったり、飛沫になったりするだろう、だらだらと流れたり、射精のように飛び散ったりして、そこら中に様々なフレーズを生み出させるだろう、配列についてよく考えるんだぜ、それぞれがそれぞれの意味を浮き彫りにするように、速度や密度を考えながら配列させていくんだぜ、見えないもの、聞こえないものが途切れたものなんかを投げて寄こしたりなんかしたらきっととんでもない目に遭うぜ、なあ、まるでハイスピードのマシンで行われるレースみたいだ、あらゆるものが通り過ぎていくんだ、まぶたの裏をあらゆるものが、血が噴き出すみたいに高速で飛び出して行く、血の温度ですべては焼きつくされるだろう、そうして欲望は成就されるだろう、その時だけの成就、その時だけの悟り、確信なんて決して持っちゃいけない、それは本当の道を進む時に目障りな看板以上の意味を持ち合わせやしない、どこやらの軍隊の遊びみたいに、狩った連中の生首を並べるのさ、そいつらが一斉に歌いだしたらおまえも歌うんだぜ、そうしないと追いつけない、そうしないときっと実体には追いつけないんだ、見えないものが蠢いているのが判るはずさ、聞こえないものが叫んでいるのが判るはずさ、だからこうして書いているんだろう、だからこうして竜巻のなかで目を見開いているんだろう、始めろよ、きっともう少し捕まえられるものがあるはずさ、邪魔になるようなものはすべて排除すればいい、静寂が五月蠅いと思うようになったら、そのとき欲望はちょっとしたものに化けて楽しませてくれるはずだぜ…




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