2014/1/26

そして最後に置かれた死のかたちは揺れるようにもがき続けるだろう  








狂騒が染み込んだ脳髄の記憶の配列は
鬱蒼とした森の中で覗く太陽に似て
俺は猛毒を含んだように忙しない
新しい何事かをこうして記そうとする度に
滑落した昨日が執拗に裁断されて塵になっていく
精神の構造の窓辺にはあまり明るいニュースが届くことはなく
背中に張り付いた憂鬱のせいで窓枠にもたれたまま
化石になる幻想に弄ばれながら時の淀みの中に居る
指先がかじかんでいるから死の在り方がよく見える
冬の生命は夜に死ぬんだとそれらは静かに教えてくれる
夏の生命が午前中に死ぬのと同じようなものだよと
いつか遠い昔種を破って顔を出した歪な詩情は
もっとも上手く途切れるときを歌うために歳を重ねてきた
時々は蜥蜴のように物陰に滑り込みながら
楽園に行くためにはそこに届くだけの死体を積み上げなければならない
一番強く感じた意志はもっともらしい言葉にしてみたらきっとそんなこと
今夜は風が強いから精神の窓辺には沢山のごみが堆積する
そこには特別言葉に出来るようなものは何もないが
時々そんなものを為す術なく眺めていなければ
魂はあっという間に黒ずんだ塊になって石ころの隣に並ぶだろう
ただ失われたものたちのために鎮魂歌が流れることはなく
といってそんなものたちがそよ風のように消えていくことはなく
そうして精神の構造の窓辺は堆積したものたちで見えなくなってしまう
窓にもたれずっともたれてそいつらが積もっていく音をずっと聞いていた
それは内臓のような湿気のある鈍い音だったんだ
精神の構造の窓辺には朝も昼も夜もないのでただそんな音だけが経過となる
ただそんな音を聞き続けていることだけが
その音は耳の中でひどく木魂してまるでひとつひとつが永遠に続くみたいに
もしもそこに時というものが存在するのならばそれは間違いなく落下と堆積の
落下と堆積の中に埋もれていくのみであって
調弦の狂ったバイオリンの低音部分がだらりと鳴り続けているような
揺らぎの中でいろいろな種類の確信を塗り潰していく
それはまるで言葉を激しく書き連ねていけばいくほど孤独が色濃くなるように
降り積もるものは墓標としての役割を持つのだ
それはたったひとつの死のためではなくまるで連続しているかのような象徴としての
象徴としての死のために創造される果てしない墓標だ
創造されるものたちはそんな死を描くためにあるんだと思ったことはないか
例えば描かれた光は必ず未来のものではなくその瞬間の記憶の死体を記したものだ
書き連ねれば書き連ねるほど孤独が色濃くなる理由というのはきっとそういうことなのさ
それでも書くというのならばその中で生きていくという覚悟をすることさ
精神の構造の窓辺にもたれて降り積もるものに黙って耳を澄ましているべきなのさ
それは希望でも絶望でもないただ見つめ続けなければならない宿命のようなものだ
あらゆるものを巻き込んで肥大していく死の形を書き連ねるために
それにもっとも近いところまで目を凝らして進まなければならない
誰かが手を着けたところにはもう何も残っていないことがほとんどだ
散々狩られ尽くした絶滅種の渇いた断末魔がからからと転がっているだけさ
そんな滅びた連中の立てる渇いた音はまるで術のない挙句の哂いのように聞こえるのさ
すごくゆっくりだけれどすべてのことを見つめようとしてはならない
自分の欲しい流れに沿ったものだけを拾い上げて自分のための流れを作らなければならない
すべてを拾ってしまえばどんなに積み上げても曖昧なものでしかなくなるのだ
流れ続けているものはずっと形を変え続けるから一瞬でも形状に気を取られてはならない
精神の構造の窓辺に堆積するがわのものになりたくないのであれば
静かにしてずっと着いていかなくては瞬く間に置き去られてしまう
精神の構造の窓辺に積もり続けたものは連続する流れの中で生まれてくるものだから
それはひとつの宿命が完全に終わったところですっと消えてなくなる
だから一度すべてが埋もれてなにも見えなくなったとしてもお終いだと思わずに待っていなければならない
雪が積もり過ぎれば雪崩が起きるのと同じようなことが起こるわけさ
俺は精神の構造の窓辺にもたれたままそんな循環を何度も経験してきたんだ
いま思っていることにもいま願っていることにもいま抱えていることにもそんな大した意味などないんだと書き連ねられた死体は語るだろう
それはしいて言うなら流動的な墓石であり墓地なのだ
そしてそこに刻まれている名前は必ずたったひとつで
それは人生で一番目にしてきた連なりであるはずだよ
書き連ねて出来る限り書き連ねてそれがいつかひとつの形を成したかのように思えるとき
そのときもしかしたら常世の音がひとつだけ響くのかもしれない








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2014/1/19

殺しに至る感情のライン (Circle)  




牙を剥いた真夜中が俺の脳髄に噛みついて、裂傷のような夢ばかりが繰り返される、血を吐き、枕にしがみつき、気がふれる一歩手前、予感と結果が刺し合い、あらゆる思考が血まみれ、血まみれ、血まみれの寝床だ、現実が失禁し、夜明けが幽閉され、永遠にも思える深夜、深夜―そう、深い夜だ、のた打ち回る概念、瀕死は慎重に、手遅れの寸前で身を翻し、生きたままの死のレベル、垂れ流される赤い血のレベル、それを振り払う叫びのような風を心は求めていたが…慟哭の深遠はいつだって遠いのだ、果てしない距離があり…その距離の中を果たせなかった言語の死体が埋め尽くしている、彼らはもう腐ることさえ諦めている、生身から遠ければ遠い分だけ、死んだままになるんだ、死んだままになるんだよ、目をむいて、涎を垂らして…まるで死んでからいままでずっと、死に続けてでもいるように―シンプルな構成のロックンロールが頭をよぎる、とても有名な曲だけれど題名が思い出せない、寝床は血液に漬かり、純度の高いドラッグみたいな甘い匂い、ビートの向こうへ連れて行っておくれ、神など要らない、すべてを吹き飛ばしてくれる叫びのような風があれば…夢の中で眼を見開くと第三世界だ、そこには異形なものだけが蠢いている、それを作ったのはお前だと誰かが言う、それはすべてお前の中で構築されたものだよと、俺は叫んで見せるが、望まれる叫びには足りない、まるで足りない、叫びは足元の暗闇の中で死んでいく、人間のままじゃ駄目なんだ、人間のままでは思うようには叫べない、岩だらけの固い地面を殴り、いらつき、そしてまた血が流れる、傷ついた拳から、スタッカートの音符に従うように、規則的なリズムで…詩のあり方は血のあり方だよ、死のあり方がそうであるのと同じようにね、暗闇の中で誰かが囁く、さっきから俺に囁き続けている、俺は耳を澄まし、そいつの位置を確かめようとするが、一向につかむことが出来ない、無駄だよ、とそいつは言う、私には位置がないんだ、君が個であるのと同じように、私には位置がないのだよ、あんたは誰だ、と俺は尋ねる、神なのか、と―こんな忌々しい言い方はしたくないが、あんたは神なのかと―違うよ、とそいつは鼻で笑う、さっき呟いただろう、詩であり、血であり、死だよ、とそいつは言う、私はそういう―いわば要因のようなものだと、要因、と俺は繰り返す、そうだよ、要因だ、とやつは言う、要因であり、詩であり、血であり、死だと、俺は血まみれの寝床で目を開くそれが目覚めなのかどうかしばらくは判断することが出来ない、少なくともすべてにカタがついていて、そしてなにひとつ明らかになってはいない、死に続ければそれは生だ、連続するのであればそれは生の証明だ―そう考えてみたが納得のいくような動機にはならなかった、人間のままでは駄目なのだ、人間のままでは…俺は唇を噛んで少しだけ血を流す、それを枕に垂らし呪いにする、効くかどうかなんて問題じゃない、なにかしらの軌跡が必要なのだ、それが詩というものだ、詩であり、血であり、死だ、それらはすべて連続している、そうだろう?変わり続けながら、円を描き続ける、それは必ずそういう形に収まるように出来ている、人間のままでは無理なのだ、人間のままでは…判るだろう、俺は人間であり、人間でないもののように生きることは出来ない、人間の定義とはなんだ、詩であり、血であり―死だ、街の中で目を閉じれば、そこに無数の死が存在し続けているのが判るはずだ、それが歴史というものだからだ、俺は死の上を歩き、今日の生を上塗りする、上塗りされた生は一瞬脈打ち、死の記録になる、動かなくなったものたちの鼓動、空に浮かんでいる、地に沈んでいる、記憶の中で色を失くしている、詩が群がり、血が群がり、死が群がる、そんな集合をフレーズと呼んできた、今すぐには無理でも、それがいつかきっと俺の身体から完全に分離して、そしてすべてを吹き飛ばす叫びのような風になればいい、街を歩きながら、死を踏みながら、フレーズが集合する、俺はいつだって血まみれで、そのぬくもりは時々天国を想像させる、流れ、変化し、円になり、止まることを知らない、動き続ける、繰り返される、軌跡、ほんの僅かでいいからそうした脈動を知ることだ、無自覚な血は流れて吸い込まれることしか出来ない、行き続けることが出来ない、吸い取られたら終わりだ、目を開け、混沌の中にしか真理はないのだ、また眠りが始まるとき俺は知るだろう、新しい詩や、血や、死のあり方を、そして翌朝目覚めたときにはそれらはすべて死んだものになって、それらが埋葬された痕にはまた新しい成立ちを欲しているだろう…。







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2014/1/13

ナイフをしのばせろ  







ナイフをしのばせろ、もう、愛こそはすべて、うしなわれてしまった
だれもがおまえを殺そうと目論んでる、もし、少しでもあやしげな素振りを見せたら、先手必勝、迷いなく殺っちまえ、警戒する必要もないほど、ズタズタにしてしまえ、そのほうが死ぬとき綺麗にしてもらえるぜ
ナイフをしのばせろ、おまえを侮辱するものなどに、遠慮してやる理由などないだろう、悪意には悪意しか返事のしようがないことを、目の前の相手に刻み込んでやるがいい、関わるべき相手を間違えたことを、どっぷりと後悔させてやるがいい
刃先は綺麗に研いで、一振りで致命傷なくらいに、短くていい、本当に殺るときに、長さなんてそんなに必要ない、レット・イット・ブリード、血を求めるのが生物の生業じゃないか
殺れ、殺れ、ひと思いに、うすぎたない喉笛を切り裂いてしまえ、そいつは生きていたってろくなことを喋りゃしないぜ、根元からかっ捌いてしまえ

血しぶき浴びて、おれの気分は天国だ、だれ一人容赦しない、殺意をみつけたらあっという間、電光石火、かまいたちのように切り裂いてやる
深く考えたことがないだろう、おまえの頭に飛来するもののことについて、眉間にしわを寄せて考えたことなんかないだろう?おまえは自分を正確だと勘違いしてる、それがなにを成し遂げたこともないのに
コンビニのレジで、工場の片隅で、ショッピングモールで、繁華街のアーケードで、ささやかな自惚れをおまえは振りかざす、おまえだけの王政が、おまえの頭の中だけで繰り広げられる
それが叶うには、実績がなさ過ぎるぜ、それが叶うには、実力がなさ過ぎるぜ、おまえの権威はいつだって蚊の鳴くような声なんだ

ナイフをしのばせろ、うだうだ言うより話は早い、防御の隙もないほどにすっぱりと殺っちまえばいい、ナイフをしのばせろ、いつでも抜き出せるように、大きなポケットのついたジャケットを着て、戦うということを教えてやればいい
戦意は叶えない限りくすぶり続けるのだ、もしもおまえが面倒なことを考えたくないのなら、ナイフをしのばせて慎重に耳を澄ましているべきさ、悪意には悪意でしか返事のしようがないんだと教えてやるために
愛こそはすべてうしなわれた、真似事のようにおっ立っておっぴろげられた結果受精したやつらどもが、理性のかけらもない自意識をそこらで振りかざしている、遺伝子はダビングされ続けたビデオテープの映像のように劣悪な情報だけをさらに劣悪なものに変えながら受け継いでいき、最後に映し出されるのは着色されたノイズでしかない、おれたちはナマモノだ、デジタル信号のように完璧なコピーなんか、けっして、出来っこないんだぜ
さあ、それがおまえの真実だというなら、おれの前でさらしてみなよ、それが悪意であるとしたら、おれはひと息でおまえの喉を搔っ切ってやるぜ、薄汚い声を二度と出せないようにしてやる、さあ、おいでよ、見ず知らずの俺にいったい、どんな関わりがあるというんだい

こそこそとした探り合いなんか願い下げだぜ、イチかバチかで全力でやりあおうぜ、もしもおまえにそんな覚悟があるのなら、おれはいつだってひと思いに振り抜くぜ、アデュー!人生の程度を呪いながらくたばるがいい!おれには生き残るための理由がある!道端の野心になど関わっていられない!

ナイフをしのばせろ、もしも相手に少しでも殺意の片鱗が見えたなら、迷いなく殺っちまえ、ひと思いに搔っ切ってやれ、許してやったら最後だ、乞食のように群がってくる、さあ、準備はできたか?生き残るのは



誰だ?










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