2014/11/28

真夜中、白昼夢を見て。  









遠い世界の音
聞かせて、僕の耳に
失われた、古代の
あるいは、未来でもいい
遠い世界の音
聞かせて、僕の耳に

無理矢理に心臓を
捻じ曲げるような夜中
薄暗がりの中で
軽い頭痛の中で
睡魔はここの番地を忘れ
余所の窓へと飛んで行った
薄暗がりでひとり
どこに行くのかも判らないうたを書いている
触るだけでいい画面は、こんな夜にはとても便利だ

向かいの道でアイドリングしてるバイクのエンジン
きっとメールでもチェックしてるんだ、あの辺りにはベンチも自販機もないから
少し長引いてるから返信でもしてるんだな
短い言葉を打ち終えたらきっと走って行くだろう
「詳しいことはあとで」きっとそんな文面だろう

真っ暗な公園を散歩したことがある
あれは十数年前の年が明けて間もない頃だった
その頃甲状腺をおかしくしていてろくに眠れなくて
真夜中に家を出てはよくうろついていたんだ
グラウンドの周辺に木を植えた、遊具とベンチのある大きめの公園さ、凄くでかい銀杏の木があってね、葉が落ちる頃はすごく綺麗なんだ
外灯は少しはあるけどほとんどの通路は真っ暗でー今思えばなんであんなに暗かったのだろう、すぐそばに大きな団地があったのにー午前三時近くだった、どうしてこんな時間にこんな所を歩いているんだろうか、なんて思いながらーほとんど毎日そんな風に歩いていたくせにさ…あんまり度胸のある方じゃないけど、不思議と少しも怖くはなかったな、夜中に霊園を歩いたこともあった、そういえば

公園の中には当然誰も人なんかいなくてさ、今思えばあれは遠い世界だったな、だけど、公園を抜けてコンビニに行くと、数人の人間がいたー考えてみればどんな夜中でもコンビニで一人だけだったことなんてないな

ところで全然話は違うんだけど、書いてて思い出したんだ、初めてパティ・スミスを聴いた喫茶店のこと…ヴォルスっていう店だった、もう随分前になくなっちゃった

おかしなもんだな、今、あの店のすぐ近くに住んでいるんだ…建物はまだ残っていて、今は、小さなライブ・ハウスになってるーそれは二階じゃなくて一階だけど…最近ちっともそんなこと思い出さなかった…そういやあの辺でベロマーク貼ってるスクーター、見たことあるな

遠い世界の音
聞かせて、僕の耳に
失われた、古代の
あるいは、未来でもいい
遠い世界の音
聞かせて、僕の耳に

どんなものならいい
どんな音ならいいの
ピアノとリーディングの
絶対的な楽曲みたいな
ねえ
繋がりのない思い出が這ってくる
もうすぐ夜は白に殺されて
絶対的な朝が来るだろう
僕は眠りに撥ねられた
明日はくだらないところに出かけなきゃならないのに






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2014/11/16

ブリッド・プロット・フラット  









くすんだ水晶体の行列が俺の進路を垂直に遮る、俺はやつらの頭を片っ端から潰し、道に落ちた脳漿を踏みつける、汚れちまった靴の底を街路樹で拭き、振り返るとまた新しい行列が横切っている、数が多すぎる、一時にたくさん殺せるやり方じゃないと駄目なのだ、俺はそれを諦める、俺は道端に座り込み―もちろん血だまりじゃないところに―やつらが通り過ぎるのを待つ、だが、それはいつまで経っても終わらない、列は、地球を一周して繋がっているのではないかと思えるほどに長い、そしてそこにいる連中は、驚くほど同じような顔をしている―表情ではない、たとえばスイッチをオフにした状態の液晶テレビのような酷似―俺は思わずさっき脳漿が散らばったままの路上に目をやる、もしかしたら底に散らばっているのはフレームや接続端子だったりするのかもしれないとそう思ったからだ、だが、そこに散らばっているのはきちんとした脳漿で、しんとした臭いさえ放っていた、俺は安心して視線を戻した、行列を眺めているとひとつのメロディが頭の中に浮かんだ、それがなんていう歌だったかと考えている間に結構な時間が過ぎていたが、行列はまだ終わりそうもなかった、歌のタイトルは「川の流れを見つめて」だった、そうか、と俺は思った、いままで考えたこともなかったけれど、あれはそういうことを歌っていたのかもしれない、ということだ、「川」と歌っているからといって、川の歌だとは限らないと…奇妙にスタイルのない、奇妙に無表情な流れ…そういうものをそんな風に歌っていたのかもしれないと、行列は終わらなかったが、もう薙ぎ倒す気はなかった、そんなことをしても隙間を空けることは出来ないだろう、こいつらは数が多過ぎるのだ…俺はどうしたものかと思いながら、今度は行列の意味について考え始めた、この行列に理由があるのだろうか?こうして眺めているだけでは皆目判らなかった、俺は立ち上がって行列の一人を捕まえて尋ねようとした、「なあ、この列はいったいなんなんだ?何でみんなこんなことをしてる?そして、なぜ、俺の行く手を延々と遮り続けるんだ…?」だが、彼らは決して足を止めなかった、引きとめようとしても、列から引っ張り出そうとしても、殴り飛ばしても止まりはしなかった、おかげて俺は、質問する機会を作ることが出来なかった、俺は質問する気を失った、もう一度道に腰を下ろして、川の流れを見つめて…これは何かに似ている、と思ったが、それがなんなのかは思い出せなかった、ゾンビ・ムービーかと思ったが、そうではなかった、彼らの求めるものはハッキリしている―俺はまた道の上に視線を落とした―そう、人間の脳味噌さ、それが欲しくて彼らは懸命に歩いている…行列には欲望というものがなかった、あるのかもしれないが、それは俺のものとは違っていた、もしそれがあるとしても、得体の知れない無の奥にしかないのだろう、欲望というにはそれは、あまりにも大人し過ぎる気がした、求めているというアティチュードではなかった、行列は確かにそれぞれがそれぞれの力で歩いていたが、そこには意思というようなものがまるで感じられなかった、まるで先頭の誰かに糸で引かれているかのようだった、あるいは、プログラミングの行程…プログラミングが構築されている、マシン言語の並ぶディスプレイをずっと眺めているような、そんな感覚だった、それは確かに何かを構築するのだろう、それは確かにひとりの力では成し得ないようなものだろう、それは確かに堅牢な城のような印象を見ているものに植えつけるだろう、だけどそれは裏を返せば、こいつらにはひとりで何かを成し得るようなつもりはまるでないのだということでもあった、それが、俺がこの行列に感じている違和感なのかもしれなかった、そう、言語…彼らはそれぞれが単語でしかなく、こうして連ならない限り単純な意味しか語れないのではないだろうかと思った、俺は立ち上がり、他の道を探すことにした、この行列が果てしなく続いているなら、またどこかの道で行く手を遮られることもあるだろう、だけどそれがどうだというのだ、俺の行きたい場所はひとつではない、もしもどこに行っても行く手を阻まれるというのであれば、地を掘るか空へ飛び上がるような手段を考えることだって出来る…もっとも、皆殺しに出来るほどの銃弾があれば、それが一番手っ取り早いのだろうけど。








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2014/11/7

滴り落ちる血のようなリズム  








無造作な闇に木霊する歪んだ梟の声の中に誰にも聞かせられない言葉を埋め込んで、亡骸を模倣しているみたいな午前零時の挙句、泥土の思考回路は生温い卵を産み落とす、祝福されない産卵、祝福されない産卵だよ、それはひとつひとつバラバラに転がって膿んだ寝床を囲むみたいに整列していく、まるで祭壇の生贄を示唆するみたいにさ…深く小さい傷口から滴り落ちる血のようなリズムで雨が降って、まるで火事のあとのような静かで煤けた空気、時折空気に混じって鼻腔に吸い込まれる埃には死相が縫い付けられてあった、いくつも食らってきた、いくつもそんなものを…それが意図である夜もあったし、不意に脳味噌をグラつかせる夜もあった、存在はいつでも真夜中にグラついていた、それは誰もが剥き出しになる時間だからだ、皮を剥がれた食用の動物のように、剥き出しになって転がる時間だからだ、自分自身の肉の臭いが煩わしくて堪らなくなる、悲鳴をこらえながらどうにかぶちのめしたいと考えてはみるものの、まさかてめえを捌くわけにもいかねえ、悪性腫瘍のように体内を侵食していく―正直、それは紛れもなく正直さなのだ、俺と同じように寝床で目玉を見開いて薄暗がりを睨んでいるお前になら判るだろう…俺を取り囲んだ卵が何かを怖れているようにぶるぶると震えている、どうしたんだ、何がそんなに怖ろしいんだ…もしやお前らが怖れているのは、その殻を破って産まれてくるそのときのことか?心配はいらんよ、同胞、真夜中の歪な同胞、この世界には怖れるのに値するものなどひとつもありはしない、つまらない芝居を観たときみたいに無表情になってやり過ごすようなことしかありはしないのさ…だから遠慮なく産まれて来るがいい、そうして望むのならこの俺の身体なり精神なりを食らって穴ぼこだらけにするがいいさ、ここに産まれてここで孵化するってことはそういうことなんだろう―俺に何らかの犠牲を求めているということなんだろう?俺は構いはしないよ、お前らを産み出した穴はきっと俺のどこかに空いているはずのものだから…俺は喜んでこの身を差し出すだろう、それは手の込んだ共食いみたいなものなんだ、同種ですらない、俺自身でしかない、俺自身の細胞や精神を俺自身の展開から産まれてきたものたちが食らうのだ、言っただろう、この世には怖れるに値する出来事なんかないと、迷いなく殻を破って、出来立ての歯を俺の肉体に突き立てればいいさ―破れると同時に卵は消えていった、内側から殻を破ったはずのなにかしらの姿は一瞬も確認することが出来なかった、俺は捧げられることのなかった余りの生贄となり、数十分進んだだけの時計の表示を見つめていた、アンティーク・ショップで買った、文字を書いた小さな板がぺらんと捲れていくタイプのヤツだ…それは俺にこの世でもっとも「時間」というものを認識させるアイテムだ、時間は捲られていく、無機質に、電気的に…不思議とそれは、ねじまきよりも確実な経過というものを感じさせる―だけど、時計の話はこれくらいでいいだろう…?こんな話をしていたら、少し前に見た夢のことを思い出したよ、俺はどこか辺鄙な海岸線を見下ろす道路を自転車で走っていて、海に出るある階段のところに辿り着く、自転車を降りて歩いていくとそこには何かの工場があり、二人の男が天井から何かを吊るそうと画策している…時間はもうすぐ日が暮れるっていうころでさ、海面がオレンジ色の光を反射してとても綺麗だったよ、海に近いところにはその工場の駐車場管理棟のような小さな小屋があってさ、そこにはアナログの一四インチテレビが置いてあって、これまた古臭いドラマを流していて…そこに出ていた役者は誰一人知らなかった、俺は工場を後にして自転車に乗り、帰ろうとしていた、空はもう真っ暗になっていて、帰り道は途方もない上り坂だった、なあ、この夢のことを思い出したのは今日が初めてなんだ、あんな海には行ったことがない、あんな工場のことなんか知らない、何を作っているところなのかも結局判らず仕舞いだった―戯言を並べ立てて、真夜中は深くなって、俺はまるで海のそこにでも居るかのような息苦しい眠りの予感に顔をしかめている、深く小さい傷跡から滴り落ちる血のようなリズムの雨が、もう一度降ればいいのにと思う、そうすればそこには少なくともリズムが産まれるだろ…俺はリズムの中に身体を浸して、すんなりと眠ることが出来るはずなんだ…。









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