2014/12/27

時間の概念の分岐、無数の死体を振り回し、すべてに点火しろ!  









膝を折りたたんだままで夜の中に沈んでいく、ついこの間まで鳴き叫んでいたはずの虫どもはすっかり死んで沈黙してしまい、取り壊された隣家の建物のあとの更地に生えふさぼった雑草たちもくず折れて色を無くしている、ときおり建物を揺らすほどの強い風が吹いて、築数十年が経過した継目は悲鳴を上げる、俺を巻き込まないでくれよとひとりごちながら今日の断絶をテーブルに並べ、その中に取り戻さなければならないものがないかどうかチェックした、そんなものはない、そんなものは見つかったことがない、ときどき砂金でも探している気分になる、取り戻さなければならない、断絶、そんなものはこの世に存在しないのだ、切れた糸は捨てていかなければ、糸くずにまみれて動けなくなってしまう、約束や予定や恒例行事などなるべく無いほうがいい、時間を煩わせる出来事なんてなるべく無いほうがいい、切り捨てるのは上手に越したことはない、気をつけないとすぐにまとわりついてしまう、その時点の判断でいい、その時点の判断でそれからは忘れてしまえば、煩わしいことなどほとんどなくなるのだ、そして俺は飲み込まれた夕食のようにグジャグジャになって、夜の胃袋の底へと落ちていく、生温い、そして肌を焼くような痛みを覚える夜の胃液の中で、俺は自分がもしかしたらそこから出たことがないのではないかという気分になる、本当はすでにこの夜の胃液の中に溶け切ってしまっていて、胃壁に張り付いた残留思念が長い夢を見ているだけなのではないだろうかと…溶けてしまうことは怖ろしくは無い、それは夜の間だけ続く痛みだからだ…痛みも、苦しみも、蟠りも、無いよりはあるほうがいい、少しあるよりは、たくさんあるほうがずっといい、それは俺を不思議な緊張の中に放り込む、まるで胃液の中で溶けるのを待っているときのような不思議な緊張の中に…痛みや、苦しみの無い世界を否定しているわけじゃない、そんなものは俺には必要ないということだ、というより、そう思うほうが自然だと思える状況が俺を作ってきたのだ、不幸など背負ったことも無いが、生来的なものが奇妙な足枷を必要としているとでも例えればいいだろうか…?夜の胃液の中で溶けるのを待っている、夜の胃袋の中は凍りつくみたいに寒いけれど、その痛みにはどこか優しいものが隠れているような気分になる、それはもしかしたら、愛すべき愚かしさを抱えて離そうとしない愚かな魂の安堵なのかもしれない、いま、何時くらいだろう?相変わらず膝を折りたたんだまま俺は考える、最後に時計を見てからいったいどれくらいの時間が過ぎたのだろう?あまり時計を見ることがないのだ、時計はあることはあるけれども…それはいつでも俺の背後に置かれていて何かの拍子に目に入るという程度のものに過ぎない、俺にとって時間と言うものはそれ以上の意味を持たない、そもそも時間と言う概念自体、便宜的なものに過ぎないのだから―だから俺はいつでも、時間というものを突き詰めたことが無い、そしてそれはたいていにおいて、疑問として生まれたままでそれ以上育つことはなく、青白く死んで一瞬で灰になって消えてしまう、時間という概念の死、時間という概念の死だ…おさないころ、俺は時間の真中に乗ることが下手だった、いまを通過しながら、常に数時間後の世界のことを考えていた、授業を受けている間には家に帰っているところを、家に帰ってきたときには明日教室に入るところを…俺は常に未来を追いかける癖があった、無意識にそんなことばかりしていたせいかもしれない、俺の部屋の中には、俺が居ないはずの時間に存在する俺が居た、部屋の中で一人で何かを話している俺の声を家族が何度も聞いていた、外に居る誰かの話し声の反響か何かだろうと俺は思っていたが、俺はこれまで自分が時間の概念の中で迷子になっていたことを認識したことが無かった、それに気づいたいまは当時のことを考えると確かに、俺はあの時教室と部屋の両方に同時に存在していたのだと思える…こんなことはないだろうか?いまはもうないはずの店や建物の中で、いままでと同じようにそこで買い物をしたり寛いだりしている自分というような想像が浮かぶことは…?そう、思えばそれは、未来に追いつこうとしていた子供の時代には無かったことだ―俺は過去を追いかけているのか?違う、そこには追いつこうとする感触は無い、では、懐かしんでいるのか?いや、それは解雇するにはあまりにも現実的な質感を持って浮かんでくる…おそらくそこに何かあるのだ、おそらくそこに…思うに子供のころには、昔というものがなかった、胸の中を掻っ捌いたときに溢れ出してくるものが無かった、カラだと判っている引出しに手をかけるものは居ないだろう、要するにそういうことなのだろう…つまり多少の印象の変化はありながら、俺は相変わらず時間の概念の中で迷子になっている、それはより複雑化しているのか、それともより単純になろうとしているのか、それは判らない、ただひとつ言えることは、俺はそんな緊張の中で生きることを楽しいと感じ始めているし、迷子でなくなることなどまだ当分無いだろうとおそらくは理解しているということだ…はぐれもの、どこへ行く?はぐれもの、どこへ行く?時間の概念の中には無数の分岐がある、クロスロードなんてまるでメじゃない、上下左右にぶん回されて、眩暈の中で笑い声を上げるのだ、そいつはとんでもない回転数だ、鉄球の中を走り回るサーカスのブラックライダーみたいにさ、加速して激しく動き回るんだ、加速して激しく動き回るんだぜ、俺の引出しの中に詰まっている今昔、そいつはみんな火をつければあっという間に燃え上がるもので出来ているのさ!






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2014/12/19

頭蓋の空洞は囁く  










盲目の蛇が一番古い脳の皺から這い出るような一日の終りの時間に、意味を成さない膿の中から拾い上げた唯一の希望は真っ暗な色をしていた、眠る前から夢を見ている、本当みたいな夢を、まぶたは生命を迷っているのだ、だから誤作動が始まる、一日の終りの時間に…昨日の朝、マグナムでてめえの頭を吹っ飛ばして死んだどこぞの国の美人弁護士とやらの死体写真を見た、飛び出した目玉の白は雪雲のようにくすんでいて…それを舐めたらどんな味がするだろうかと思った、死の白に変わった眼球を舐めたらさ―舌の先には涎のように死がぶら下がるのだろうか?動機は不明だと書いてあった、たったそれだけの情報だった、死体だけがさらされていた、脳味噌のぶっ飛び方にマグナムと書いてあった、マグナムは凄まじいものだ、話には聞いていたがそれが初めてどういうことなのか理解出来た気がする―だからといって俺がそれを彼女のように利用するかと言えばそいつはまた別の話だ―俺なら絶対に他人の頭をぶっ飛ばすのに使うだろうな、不意打ちで、後ろからさ…それからパソコンを閉じて散歩に出たんだ、やることはいろいろあってさ…金にならない時間のほうがずっと忙しいんだ、そしてずっと有意義でもある、愚かな連中は意義や意味を怖れる、なぜだか判るか?自分たちがそこから程遠いことを知っているからだ…手の届かないものが見えることが怖ろしいのさ、だからハナから追いかけないことを選ぶ、人生を怖れることから彼らの人生は始まる、そうしてそこから抜け出そうとするやつらの脚にしがみついて同じ愚かさを共有させようというわけさ―そんな記憶が君にもないか?スタンプのような生活、スタンプのような人生観…あそこの誰かが言っていたのと同じことをこちらの誰かも喋っている、しかもおかしなことに台詞すらほとんど変わりはしない…きっと彼らの脳味噌の中にはそういう台詞が掘り込まれたスタンプが赤々としたインクで押されているのさ―俺がそれを教えてあげたら彼らはそれをおかしいと思うだろうか?いや、俺のことをおかしいと思うだけさ、俺は何度もそうしたことを見てきたよ…彼らはまるで生きながら自縛霊のようだ、決められたエリアから逃れることは永久にない…マグナムがあれば彼らを少し賢くしてあげることは出来るかもしれないけれど、そんなことをしたらあの世は浄化出来ない白痴でいっぱいになっちまうだろうな、とうぶん俺は引鉄に手をかける気はない、あちらこちらに気を使える人間なもんでね…やあ、日付が変わった瞬間に狂ったように冷え始めた、冷気と凶器が体温計の中の水銀のようにどろどろと動いている…脳味噌が吹っ飛ぶ瞬間、そいつを生きながら知ることは出来るだろうか?脳味噌が吹っ飛ぶ瞬間さ、物理的にでも感覚的にでもいい、人生が色を変えるようなエキサイティングな瞬間、なんて陳腐な言葉で置き換えたって構わない、俺の脳味噌を吹っ飛ばせよ、俺の脳味噌を吹っ飛ばしてくれよ、命や、死や、富や、名声や、喜劇や悲劇を望んでいるわけじゃない、そのなにもかもがごちゃ混ぜになったうんざりするような色味のパレットの上で、俺の脳味噌をぶっ飛ばしてくれ、俺はずっとそうして人生を繋いできた、これからもずっとそうさ…強烈な一撃、強烈なワン・ショットどこからやってきても構わない、後ろからの不意打ちだって…!常に、常に、常に、変化のありかたについて考えることさ、出来ればこの俺の細胞たちには自己申告制で死んで生まれてもらいたい、そんな風に考えることはないかい、そんな風に知りたいと考えることは?俺が知りたいのは絶対的なテーゼじゃない、絶対的な感覚なんだ、死体の写真を漁り、欠損の概念を漁り、うんざりするような感情の羅列を漁り…きれいなものに涙することだってあるが、それはさまざまな穢れの中に顔を突っ込んできたからに他ならない、判りやすいフレーズに甘えたりなんかしない、世界の欠損に甘えたりなんかしない、自身の欠損に甘えたりなんかしない、争いは無限にある、ふっ飛ばすべき頭は無限にある、もしかしたらいつも、いつでも俺はそいつを吹っ飛ばしているのかもしれない、人生に理由を、意味を求める以上…求める以上形を成すことはない、昨日の真実は今日の戯言に過ぎない、垣間見た瞬間にフリーズしないことさ、すぐに次に来るものを目に留めることなんだ、永遠普遍の真実などない、死ぬまで生きているつもりなら決してそんなものを求めてはいけない、真実はいつだって強烈な影だ、日差しが傾けば生まれるところも変わるのだ―やあ!こんなクソみたいに寒い夜に俺のデスクには一匹の羽虫がご来訪あそばした!手のひらでそいつをぺしゃんこにしてもんどりうつ寝床に潜り込む…いつだって俺は寝つきが悪いんだ……。











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2014/12/12

死神と与太話でも  







ある晩眠れなくて暗闇の中でウダウダしてたらフードつきの長いマントを被ったシャレコウベがどこからともなく現れて「こんばんわ」なんてかすれた声で言いやがる、おれはてっきり死神がお迎えに来たのだと思って、ハードディスクに保存してあるお気に入りシーンを繋げた19分の珠玉のアダルトムービー削除する暇あるかななんて考えてたんだが「まあ、あわてるな、今日はそんな用で来たんじゃない」と言うのでああ良かったと思いしかしではいったいこいつはなにをしに来たのだろうかと訝っていると、「おまえはこの世のもののなかではずいぶん死だ生だと考えているようだからすこし面白いと思って与太話でもしようと思ってやってきたのさ」と言いながら両手を広げてみせる、「な?鎌持ってないだろ?」そんなことっとてあるもんかな、と思ったが現にこいつはどこからともなく現れたしいまだってフラフラフラフラ浮かんでやがるんでどうやら嘘は言ってないようだと思ってとりあえずおれは「なるほど」と言って、「今日は他に仕事はないのかね」と聞いてみたところ「ああ、ない」と答える、「休みかね」って聞くと「それは人間の考え方だな」などとのたまう、「どういうことかね」と聞くと「死神という仕事をしているわけじゃないからね」と答える、おれは「つまり、おれが人間であるというのと同じような意味合いであんたは死神であると、そういうことかね」「ザッツ・ライト、その通り」「モダーンな喋り方をするね」「ハイカラって言ってくれよ」「なぜだい」「その方がガイコツっぽいだろ」「?なるほど」「判んないなら納得しなくていいから」「ごめん」「人間の悪いとこだ」「あー確かに」こほん、と死神咳払い(ガイコツなのにー?)「つまり、きみら人間の、食事とか排泄とか射精みたいな感じでおれらは魂を回収してるってことよ」「ああ、イトナミってことね」「そうそう」「時間みたいなものはあるの?」「あるよ、そりゃあるさ…ただし時計みたいなものではないな、もっとざっくりとしたものだよ」「朝昼晩みたいな?」「それもちょっと違う…なんてのかな、動いた瞬間にだけある、そういうものだな」「コトと共に在るって感じ?」「当たらずとも遠からずって感じだな…でも、まあそれだけ近付いたら上等だよ、まだ死んでもいないのに」「…いまの褒められたのかな?」「褒めてないように聞こえる要素がどこにある?」「いやいや、死神に褒められたことなんてないからさ、どうなのかなと」「確かにな」「でも葬儀屋だって身内が死んだら泣くものだ」「そのたとえ合ってるの?」「え?うーむ…たぶん間違ってるな」「まあいいか…」「そうだよ」「些細なことだ」「言葉の綾子さんだ」「はぁ?」「うん?」「なにいまの」「いや言葉のあやのあやと女子人名の綾子さんをかけてみたんだ…説明させんなよ恥かしい」「いやそういうことじゃなくて、死神ってそういうことも言うの?」「死神ったっておめえ、もとは人間の魂だからな?」「え、そういうもんなの?」「そうだよ」「転生のための修行の一環だよ」「これはびっくりだな」「まあ普通は考えもしないだろうからな、無理もないな」「閻魔さまとかもそうなのか?」「いや、閻魔さまは神さまの一種だ、閻魔さまは大昔からずっと閻魔さまなんだ、世界各国あらゆる神さまと同じように」「神さまって何人もいるの?」「なんてんだろうなぁ…おれが思うに、あれは各地に分かれて飛んでる電波みたいなもんだなぁ」「電波…?」「つまりさ、所変われば品変わるって言うだろう、お国柄とかさ」「うん」「そういう、各地の性格に合わせて微妙にスタイルを変えながら飛んでいくわけさ…受信しやすいような形になってさ」「うん」「つまり、大元はなんかこう非常にでっかいひとつの意思なんだな…それが神だ、多分ね」「あとはアンテナ次第ってことか」「そうそう、そういうこと」そこまで話したところでおれは眠くなった「ごめん」「もう話せない」「かまわんよ」「生きてるあいだは寝たり起きたり、しなくちゃな」「最後にもうひとつ教えてくれ」「死神が見えるってことはおれはもうすぐ死ぬのかな?」「うーん」「それはおれにも判らないんだよな」「基本的におれは死んでからのことばかりだからさ…今回のことは特例みたいなもんだ、まあでも」「もうすぐ死ぬやつにわざわざ事前に会いにきたりもしないだろって思っときなよ、ようはあんた次第だよ…全部あんた次第さ」「役割をなくしたときに死ぬんだよ、人間ってものは」そうしてやつはさよならも言わずに消えた、もしかしたらおれのほうがそこで眠ってしまったのかもしれない。





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