2019/2/17

歩きやすい道にはなにも落ちていないよ  












世界はいつだって
出来上がった何かをなぞっているだけだから
やつらの真似をするのはやめておけ
前に居た誰かと同じになってしまうから
お題目を鵜呑みにせず
ひとつひとつ自分で考えて
自分が生きていくためだけの項目を
ひとつひとつ積み上げていくことが大事だ
居酒屋で
酔っぱらって
人生について話している連中の言葉を聞いたことがあるか?
みんな同じ話しかしていない
どの席の連中も
ほんのわずかな語感の違いしかない
酒で膨れた腹で
煙草でかすれた
痰のからむ喉を震わせて
真面目さという名の共通概念を
自分で考えたことのように話している
自分がそれを話そうと思って居た周辺の連中は
満足げに何度も頷いている
それは人生じゃない
ごっこに過ぎない
ロボットや少女の人形の代わりに
契約書や印鑑や電卓を手に入れただけのことだ
わかるかい
成績や
収入や
職種やポジション
そんなものをどれだけ並べたところで
ヒトとしての成長が伴わないのなら
そいつの人生は失敗だったってことさ
ゲームじゃない
技能やキャリアを積み上げるだけじゃ
本当のランクは上がらないんだよ
近頃流行のオンラインゲームのせいか
カネやチートで手に入ると思ってるやつも居るけどね
おまえは誰だい?
名刺や
自慢話を差し出すことなく
そいつを証明出来るかい?
選択した枠組みに甘んじることなく
生きている自分を見せつけることが出来るかい?
そんなことに躍起になってる連中も居る
やたらと周囲の人間を巻き込んで
おまえよりもおれのほうが上なんだと
鼻息も荒くアピールして見せるのさ
だけどそれはもうアウトだ
「ひとりじゃなんにも喋れないんです」って
自ら宣言しているみたいなものだから
世界はいつだって出来上がった何かをなぞっているだけだから
なんにも信じちゃいけないよ、きみ
それは一見びっしりと書き込まれたページに見えるけれど
隅々まで読んだところでためになることはなんにも書いていない
それはきみが
自分で書かなければならないことなんだ
世界にはきみのスタートボタンはない
それはきみがきみ自身という迷路の中で見つけ出すものなんだ






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2019/2/14

騒乱、喰らい尽くして  








打ち捨てられた死骸の硬直した筋肉は鮮やかな色身だけが失われていて、それはまるで土に擬態しようと望んでいるみたいだった、心配は要らない、それは必ず叶えられる、おまえがもっと失われ続けたあとに…耳打ちをするように背の低い草花どもが揺れ動く、騒乱、喰らい尽くしてこのおれは独りで立っている―冬の日は槍のように焦点のずれた両の黒目を貫く、なにかを見せないようにしているのか、あるいはなにかだけを見せようとしているのか?どちらにせよ眩んだおれには関係のない話だ―少なくともこの瞬間には、まるで…眼球には粘つく体液が絶えず絡みついている、それが時々おれを苛々とさせる、でもそれをどうこう出来ることなどあるはずもない、それは変りようのないものに盾突く愚行というものだ、たとえば―運命とか―なにを見ようとしているのか?この世とは、ひととは、おれ自身とはなんだろうと思い始めたハナタラシのころから?おれはそれが一言で言いきれないものだとかなり早い段階から知っていた、だからこそ踏み込みがいがあるものなのだと―川砂のなかに眠る金の欠片を探すようなものだと…どれだけ漁ればいいのか、どれだけ溜め込めばいいのか、どこで尽きるのか、尽きたものはなにかのきっかけでまた生み出されるのか?なにもわからないことこそが真実だと思った、安易な悟りや成熟にはハナから興味がなかった、誠実さは妥協じゃない、人生は越えられるハードルだけを飛び越えるゲームじゃない…なにが出来ないのかを知らなければ、ひとはその先へと行くことは出来ない―殴られなければどこが自分の弱点なのかを知ることは出来ない、つまりはそういうことだ…殴り合いには殴り合いの強さがある、どんなことにもそういうものがある、それは努力じゃない、それは力でもない―もちろん真っ正直に取り組めばいいというものでもない―あらゆるものには構造というものがある、それを知ることだ…それはあらかじめ出来上がったものではない、途中途中で追加され徐々に構築されていくものだ―それがどんな性格のものなのかを肌で知るまでとりあえずは続けることだ、それを知るのは容易なことではない、間違ってとらえてしまうこともある、とくに若いうちは―わかりすぎてしまって一歩も進めなくなることもある、でもその奥がまだあることに気づけば進むことが出来る、とにかくなんでも、何度でも試してみることだ、まだ生まれないメロディーのコードを探るように…ある瞬間に突然わかりはじめる、それはダムに空いた小さな穴だ、決壊すれば気も狂わんばかりの衝動がやってくる、たったひとりの人間の内で始まる騒乱だ、たくさんの血が流れる、たくさんの死体が転がる、それは何時かにもあったことだ、おまえも本当は確かに知っている光景だ、そうしたものの一切がおれたちを構築している―おれは血塗れになりながら新しい獲物に喰らいつく、歯を突き立て、顎に力を込め、その肉を一気に噛み千切る、生温い絶望の臭いがする、口のなかでどろどろと生命がもがいている、噛み砕き、磨り潰し、味わい飲み込むと、獲物の体温がおれのものになる、おれの心臓は興奮で膨れ上がる、見ろよ、おれの目は血走っている、そのときのおれは確実になにかを知っているんだ―ひとは誰もおのれの内に獣の本能を残している、それは喰らうのを待っている、そして喰らわれるのを待っている、喰わせろ、喰わせろと内奥で吠えている、それは耳に届くことはないが、そいつが吠えるたびに筋肉は振動する、そのわずかな揺れが、すました顔で生きているおれを焚きつけるのだ、おれはワードの奥底にそれを見ている、白い画面を埋め尽くす羅列の中で、きちがいのような目をしたおれがこちらを見返している、おれはそいつと睨み合う、それはとんでもない戦いだ、わかるだろう―どちらが勝ってもくたばるのはおれなのだ―それは避けられない戦いだ、そして幾度となく繰り返される戦いだ、それがおれの野性の在りかただ…いつかおまえはおれの死体のそばで、おれがなんのためにそんなことをしていたのか知るだろう、様々な血にまみれたおれの身体は、これまでにおれが並べてきたどんな言葉よりも雄弁におれ自身を語るだろう、おれにはすでにそのことがわかっている、だからこそもう一度喰らうだろう、きちがいのような目をして、汚れた歯を見せて、おまえに語り掛けるだろう―「わかるかい、これがおれの野性の在りかたなんだ」―おれは腐敗する前に、たくさんの旋律でおれの身体を埋め尽くすだろう…。









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2019/2/7

聖堂  










不用意に感光した印画紙のように意識は白けていた、くすぐる程度の電流がどこかでずっと思考を脅かしているみたいで、俺は実質丸められて捨てられたジャンクヤードのカーペットと大差なかった、すぐにどこかにもたれてしまうくせが余計にそんなイマジンを増長させていた…朦朧とでも呼ぶべき呂律の回らない感覚の雪崩、どこかで初めに書かれるはずだった言葉が生き埋めになっている、そいつが見つかればもう一度血が通うだろうか?川に小石を投げるように時間が過ぎて行く、無表情なデジタルの表示は死刑執行人の目つきを思わせる―記憶は、あるようでない、すべては現実ではなかったことのように作り変えられる、人間は本当の意味で過去を鮮明に記録出来るようには作られていない、ノンフィクション・ドラマ、あるいはドキュメンタリー作品のようになにかしらの意図やイズムがあるがままに刻み込まれている、俺の言ってることが分かるか?つまりそれが正常な人間だってことだ…コンビニのビニール袋が眼球を覆っているみたいだ、白く霞んでいて、あちらこちらに視線をやろうとするたびにガサガサと忌々しい音がする、まあいい―こんな呆けた時間に、本当に見たいものなどおそらく見つからないだろう―俺はこれをいつからか「死体」と呼んでいる、すこしの冷静さと多くの苛立ちを込めて…それは一度始まれば時間の感覚がなくなるまで続く、気づいたら二日が経過していたなんてザラだ、なあ―もしも過去が本当にはないものなら、寿命までの長い時間人はなにを飲み込んで生きていけばいい?俺には歳を取ったふりなんか出来ない、自分の知っていることしか知らない、ただ当り前に生きて、時を積み重ねてきた、そんなことを誇りに思うことなど出来ない、それなら油虫だって王様を気取ることが出来る―そうは思わないか?問題は、実感というやつなんだ…官能的に自分を打ちのめしてきた、リアルな感触、いまだってそのことを思えば、血液がさっと沸点に達するような…そんなものばかり求めて生きてきた、いくつかのものはもう蘇ることはないけれど、残りのいくつかはまだ俺に体温を思い出させてくれる、でもいまは―回路が断線している、どこにもコネクト出来ない、あらゆる感覚が閉ざされている、窓の外にはいつの間にか闇が訪れている、いつから流れているのか分からないディランのベスト・アルバムが微かに聞こえる、両手の指を何度か開いたり閉じたりしてみるものの、夢遊病者のように緩慢とした動作にしかならない、目を閉じる、ぼうっと、瞼の裏が真っ白い炎に包まれる、俺は紐のようなものになって、自分の身体の中へと潜っていく…そこは廃棄された過去の破片で埋め尽くされている、見当がつくものもあるし、まるで分からないものもある、すべてが強引にねじ切られたみたいにいびつな断面を晒し、果てしなく血を流したみたいな色に塗り潰されている、俺はその隙間に身体を滑り込ませ、さらなる底を目指す、そうしていればいつかめぼしいものを見つけることが出来るかもしれない、咲き乱れる陰鬱な色合いはひどく気分を落ち込ませる、内側から切り刻んでやりたい衝動に駆られながら潜水艇のように深く深く沈んでいく、深度が増していくにつれて薄暗い、洞窟のようなムードが漂ってくる、打ち捨てられた過去の残骸は次第に少なくなり、やがて見えなくなる、そこにあるのはなんてことのない、ただの虚無だった、ぼんやりとただ、なにもないことが存在しているだけだった、俺の生身がいま部屋で味わっているものと大差なかった、人生は鶏鳴に塗り潰していく白紙のノートだろうか、そんなことを考えるともうどうでもよくなって、もう一度上に戻り、肉体にすべてを戻した、肉体の状態はまだ不完全なままだった―そういえばいつか、そんな話を書いたことがあったなと俺は思い出す、死んだのに、肉体から出て行けない霊魂の話だ―耳鳴りがする、悲鳴のような高周波のノイズ、俺は軽く首を左右に揺さぶる、そんな行為には何の意味もなかった、何の意味もない…ひたすらに無意味な、白濁した感覚の羅列、理由や、意味などについて考えることに興味なんかないけれど、時々、考えてしまうんだ、こいつは俺を生かそうとしているのか、それとも葬ろうとしているのか…それはおそらく俺自身の思考と密接な関係があって、ほんの少しのボタンの掛け違いでも致命的なダメージを及ぼすことだって出来る―「出来る」っていう感覚が初めて出てきたな―俺はカーペットの上に激しく嘔吐する、明らかに食ったものよりも多い量を…徹底的にぶっ壊れている、ガラクタみたいなもんだ―ガラクタに出来ることと言えば、やかましく騒ぎ立てる事ぐらいさ…。










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