2019/9/19

メディシン・ボトルの中の動脈の色彩  













自家中毒の記憶が熱をもって現れるとそのまま今ともつれ合って連なり転がって床に触れたところから声も出さずに死んでいくひとつひとつの細胞の悲鳴を拾ってコードを記録していく中で生まれてくる音はノイズと名付けられる、それは内臓の内壁に刻まれた擦り傷からも湧き上がってくる、存在とは概念的な吐瀉物に過ぎない、ノイズ、切り刻んで、肉体はまるで統率者を失った集団のごとくに無軌道と不安だけを与えられて狼狽え続けているうちにどんなものにも変換出来ない疲労だけを抱えていく、それはまるでボタン雪のように降り積もっていく、体温は冷えていくついでに思考を削ぎ落して気体へと放り出す、意思はいつでも床の上に散乱して過程すらもう定かではない、なだらかな空虚が蔓延している空間、その中で生まれる音はノイズと名付けられる、絶えず聞こえてくる激しさはやがて静けさと同化する、もともとそんなにかけ離れたものではない、両極は必ず同じ要素を隠している、問題なのはグレイ・ゾーンしか理解出来ないことだ、そうは思わないか?あらゆる現象や思考や詩情なんてものを解体して細分化していくと直接性というものの性格がより理解出来る、要するに噛み砕いて話すことになんか何の意味もないということさ、混沌は混沌のまま語られるのがいちばん正しい、整頓出来るのならそれは混沌ではないということだ、もとよりもうこんなところまで来てしまった、いまさらスタートラインに居る連中に向かって語り掛ける言葉などない、正直さは多様化している、地層の一階層だけを抜き出して歴史などと呼ぶのは不自然な気がしないか?それはすべての成り立ちを見極めて初めて使われるべき言葉だろう、言葉は思考の地層なのだ、言葉を使い続けたものは次第に積み上げられ色分かれしたそれをなるだけ正確に語ろうとする、当然一言でなど片付けられはしない、それは幾つかの詩篇になるかもしれない、もしかしたらある時点から語られたことのすべてが、そのことについて話しているかもしれない、何度も言ってきたことだが真実は追い求められるべきではない、語られるべきではない、語ることが出来る真実は本当のことではない、それは僅かなグラデーションやニュアンスによって微かに感じられるもののなかにある、そんなふうに語られるべきということではない、それはそんなふうに語られることでしかきちんとした意味を持たない、それを語るためだけに並べられた無数の言葉はまるで鋭い先端を上に向けて並べられた無数の針のようだ、少しずつ触れる、激しい痛みに貫かれないように、注意深く、そうして覚え込まされた言葉は自ずと次の階層を求めるだろう、あるいはそこが新しい階層になっていくのかもしれない、たった一つの言葉で、たった一篇の言葉で語ることなど出来ない、そうして今用意出来るなにもかもをテーブルに並べ終えたら朧げに輪郭くらいは感じることが出来るかもしれない、そしてそこから受け取るものは、特別形になっていなくても構わないものだ、短い夜の中に長い痕跡を残そうとしている、ツクツクボウシが死の予感を巻き取るみたいに鳴いている、その作業には終わりがない、同じフレーズを使っても同じ意味にはならない、なぜなら一度使われたものをもう一度持ってくる時点でそこには別の意図が含まれているからだ、そうして一つの言葉がたくさんの含みを得て行く、言葉は太り、伸び、その身に様々なものをまとわりつかせる、そして吸収していく、ここに並べられているものの中にはそうしてまるで違うニュアンスを含んでいるというものが確かにいくつも転がっている、脳内にはそうした言葉を育てるプラントがあり、そいつらはいつでも呼び出せるように一番出口に近いところに並べられている、特別これといったシステムは存在しないが、インプットとアウトプットを繰り返したその場所は、俺自身よりも確かにそうした性質を把握している、プラントの奥には広大な地層帯があり、かつて使用してきた言葉たちが蠢いている、中には埋められてしまったものもある、こだわり続けた言葉の中にはそうやって死んでいくものも居る、彼らは弔われることも祈られることもなくそうして死体になってやがて溶ける、そしてそんな言葉があったことは忘れ去られてしまう、俺は意識を放牧するジプシーであり、同時に脳下垂体のギャングだ、移動し続け、銃口をちらつかせ、刺激を求め続けている、動物と違って言葉たちには、過度な養分という概念はない、それは確実に吸収されていくし、何度でも更新出来る、増え続ける、増え続ける、増え続ける…俺は蠢いているそいつらを掻き分け一番しっくりくるものを探す、日付変更線が変わるまでにはその輪郭を掴むくらいのことは出来るだろう、そして明日になればもう一度それは繰り返されるだろう―肥え太ったプラントの言葉たちを眺め、まんざらじゃない気分で俺は少しだけ笑うだろう。







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