2019/10/2

雨は永遠のように降る  






















昨日、落ちて行った欠片は
一昨日との間で見失った
今日、すれ違ったものは
いつか仲違いした誰かとよく似ていた

長雨に汚れた
川のほとりに腰を下ろして
彼らの急ぎ足の
旅を
老人のように
病人のように
見つめ続けていた夕刻の始まり

強い風は
なかなか入れ替わらない
季節に
癇癪を起しているみたいで

なにかが行われた
なにかが閉じられた
なにかが暴かれ
なにかが隠された十月
ひとつ
数字が増えた今日に
なにもかもカーテンの向こうに押しやった

空腹のせいで食らい過ぎた
腹を減らすことに
意識的になり過ぎた
いつだってそうだろ、餓えてる気持ちは忘れたくない
そうするためには
餓えていることに溺れてはならない
間抜け顔晒して食らいついて
だらしなく腹を膨らませることになる

並べ過ぎたお題目と主義主張が
自家中毒を起こして嘘になるのを見ていた
これだから始末が悪い
瞬間をうたうことしか意味がないのに
間延びしたあとで余計なものを足そうとする

効果の大きい鎮痛剤は眠気を伴う
黙っていて、ややこしくしないで
錯乱した誰かを帯で縛るみたいに
すべてがシャットダウンされて暗闇に閉じこもる
眠っていた間にラジオが喋っていたことを教えてくれ
それはどう転んでも飲み込んだことにはならないだろうけど

雨だれが
潰れた貸しボートのトタン屋根で鳴る
小さな生きものの骨を折るみたいな音だ
その音の中で死を数えてみる
もちろんすぐに数え切れなくなり
意識ばかりが先走って
いつのまにか無数の死に囲まれる
いつだってそうだ
計り知れない
途方もないことだって知るのには時間がかかる

雨よ、それ以上語ることがないのなら
臨終のときの心拍数のようにすべてを終わらせてくれ
それきりしんとなって
どんな音も耳に届くことはない
そんな世界が訪れても構わないから
いつかは、そうさ
どんな指揮者だって疲れて腕を下ろすものなんだ


熱湯に溶かすだけのカフェ・オレを入れて
動画サイトでいくつもの蠢きを見る
それは騒がしく、時には物足りず
時にはすべてを晒し過ぎて
誰も彼もが会話すらままならない人間に思えてくる
聞かせようとするやつには聞かせるに値するだけのものがなく
見せようと目論むものもまた同様だ
方法論に袖を引かれて
それまでどこに立とうとしていたのかすっかり忘れている

塗薬が生み出す幾つかの不自由さは
それが確かに効いていると知るための厄介な手続きに思える

時折窓の外を通り過ぎる誰かは
ほとんどの場合酔っぱらっていて
空論を吹聴している
白紙の新聞が配られたような
居心地の悪さを覚えながら
そいつが通り過ぎるのを待っている
そういえば、二年前
すぐ近くで殺人事件があった
金が盗まれていたからそういうことになった
俺、殺された男の悲鳴を聞いた気がするんだ
静まり返った夜のさなかにさ
喧嘩かと思って耳を澄ましていたけど
それ以上どんな声をしなかった
なにかがおかしいって思ったんだ
そう思うには十分過ぎるくらいの声だった
あの時すぐに飛び出して探していたら
もしかしたら命くらいは助けてあげられたかもしれないな
でもそんなに大ごとだなんて思わなかったんだ

こちらからしかけたことはひとつもない
寄ってきた蝿を払っただけさ、いつもね
人生を無駄にしようと決めない限りは
面倒ごとはいつでもふたつやみっつはつきまとうものさ
でも構わないんだ
どんな下らない言葉でもなにかしらの教訓にはなってくれるから
もちろんそれにはちょっとした
パズルを解くくらいの才能は必要だけれどね

眠くなったから目を閉じたくない
ずっとそんな話をしながら歳をとってきた
明日になったら天然酵母のパンを食って
虚ろな街の中をまた彷徨うことだろう
雨は永遠のように降る
そう思わせるにはどれほどの水が必要なことだろう?










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