見えないのか、舞台はすでに準備を整えている  










それは崩落し、細かく砕けながら、薄暗い地面へと乱雑に堆積していく、激しく、そしてささやかに繰り返す破壊音は、インプロビゼイション・ジャズのような気まぐれな旋律を形作る、すべては破片、音を上げれば上げるほどー声を上げれば上げるほどーそうさ、口火を切らないやつがいちばん賢い、押し黙って、誰かがへまをやらかすのを待ち焦がれてるやつらさ、関わり合いになるんじゃないよ、集団という自意識を持った人間は軒並み駄目になる、そして死ぬまでそのことに気づきはしない、あるいは、死んでからだってそうかもしれない…時々は、逃げることも抗うこともせずに、壊れ、砕けていくそれをただ見つめているべき時もある、なにかが変わる瞬間には余計なことをしてはいけない、それは大切な瞬間を見過ごすことになってしまう、息巻いて人生に手ごたえを感じようとすればするほど、待ち方というのは大事になってくる、ときおりそうして、なにが終わろうとしているのか、なにが始まろうとしているのかを見極めようとしなければ、いつか目的すら忘れてしまうだろう、いまが大事だって、流行歌に手を染める訳知り顔の連中が口にしている、なあ、笑わせんなよ、切り離せるもんなんて、ないんだ、いまはいまで、過去も未来も、必ずそこにすべてあるものだ、といって、そんなこと言ってたら、誰かが金を払ってくれる歌なんて作れないのかもしれないね…大きな紙を手のひらサイズになるまで切り取って、さあ持ちやすいだろとそっと渡してやる、いまポップ・フィールドにばらまかれているのはそんなものばかりさ、なにも音楽だけの話じゃない、そして、そんなものをありがたがってるやつらが一番、真実を知っているような口をきいてやがるのさー補助輪をつけてやらなくちゃ思考すら成り立たないんだ、彼らは必要最小限の脳味噌だけを残したアンドロイドなのさ、子供から年寄りまでが同じ理屈を話してる、ほかに大事なものがどこにもないみたいに、いや、おそらくやつらは本気でそう信じているんだろうぜ…地面で砕けるものは時々、刃物のような形状になって弾け飛び、俺の頬に薄い傷跡を残す、それは年々激しくなる、つい去年まではそんなものだと思っていた、いつも、その時が一番鮮烈に見えるものだと…でもそうじゃなかった、それは間違いなく徐々に激しく形を変え始めた、だから俺は注意深くそれを見つめていなければならなかった、壊れる、という表現は不思議だ、それはどう見たって壊れている、粉微塵になるのではないかというほどに、巨人の怒りを思わせるほどに徹底的で、恐怖すら覚える、けれどそのあとには、必ず新しい形が残っている、ということは、まだ先があるということだ、もしもすべてが壊れてしまったときは、と時々は考えるが、きっとそれはもう少しだけ先の話だろう、俺がまだどこにもたどり着いていないことは俺自身が一番よくわかっている、安易には完成しないものを選んだ、それが一番やりがいがあるように思えたからだ、そしてそれは間違いじゃなかったひとつひとつの思考に破壊と構築がある、それはどちらかではありえないものだ、言っただろう、切り離せないってー一つの岩が激しく砕け、俺の側頭部にぶち当たる、俺はべっとりとした血を拭い、顔に塗りつけながら高笑いする、この世界だ、この世界が俺を生かし続けている、壊すことだって始めることだってお手の物だ、まだまだそうして生きていくことが出来る、追いかけるものがあるうちは人生は長く、この上なく愉快だ、俺はかけらの上にダイブする、骨が軋み、皮膚が敗れる音が聞こえる、それは確かに俺の身体に、本当に起こっているかのような痛みを呼び覚ます、痛みは麻薬を乞い、俺の思考は溶け、体内に蔓延していく、ほら、生まれる、痛みの中から、ほら、生まれる、破壊の中から、零れたばかりの血を啜れ、最も素早い遺伝、俺は俺の転生、一生なんてたったひとつじゃないー立ち上がれ、声を上げろ、自分で築くもののことを忘れてはいけない、自意識は形になることを望む、それが本当は決して目に見えないものだから、どこにも、なにも残されることのないものだからーねえ君、ここにあるものは俺自身だ、そして、死ぬことがない、このフィールドがある限り、未来永劫、生き永らえることが出来るものだ、いつだって叫びでありたかった、本能のままに、野生のままに、けれど人間として、確かな叫びでありたかった、わかるかい、生きるためのあがきは苦しくなんかないんだ、言っただろ、それは決して切り離されることのないものなんだって、耳を澄ましていてくれ、いつか、きっとー



お前のところまで、そいつを届けてみせるから。










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