2014/4/26

赤い血だ、へんなの  









いつかすべての花が閉じるときに
できることならそれは夜明けがいい
未定の連鎖を勝手に感じさせる
できることならそれは夜明けがいい


かすみ草の花束のなかに
プラスティック爆弾を隠して
ひとりの少女が街路のくぼみになった
「神様のため」と諭されて
すんなりと頷いた
彼女にすればそれは当たり前のことで
いつか自分もそんなことができたらと考えていた
彼女はサニーという名の
小麦色の肌の愛くるしい娘だった
その年十になったばかりだった
本をよく読む子で
とても物覚えが良かった


それが行われる前夜、彼女の前にはご馳走が並んだ
「この国から悪魔を追い出すために」と
年長者であるサニーの祖母が乾杯の音頭をとった
「おまえは私たちの誇りだ」と父親がサニーの頭を撫でると、彼女は照れ臭そうに微笑んだ
みんなが笑顔だった、母親はサニーに頷いた、あなたなら上手くやるわ、きっと大丈夫、そんな風に
食事の終わりに皆がサニーを抱きしめ、サニーは彼らの体温をしっかりと覚えた


その夜サニーは早くに眠りについた
長い長い夢を見た
家族や友人たちが美しい草原の泉のほとりで
楽器を演奏したり歌ったりしている夢だった
サニーは微笑んで座っていた
とてもとても満たされた気持ちだった
ひとりの娘がサニーに話しかけた
「久しぶり」
二年前、悪魔の爆弾で吹き飛ばされたアミだった
二人は親友だった
「わたし明日神様のために燃える花束を持つのよ」
サニーがそう言うとアミはまあ、と言って瞳を輝かせた
「すごいわ、とうとう選ばれたのね」
おめでとう、サニー、とアミは言った、ありがとう、とサニーは答えた
それから二人はずっと寄り添って座っていた、朝の光がサニーの部屋の窓辺を照らすまで


当日、サニーは一番のお気に入りのドレスを着せてもらった、うっすらとだけどお化粧もしてもらった
「可愛いわ、サニー」と母親が言った
うふふ、とサニーは笑った
そうして父親の運転する車に乗って、舞台となる街へ向かった


街に着いたのは昼前で、たくさん人が集まる時間だった、サニーを車に残して、父親はどこかへ行った、十分ほどで戻る、と言って
その間サニーはずっと、賑わう通りを歩く人たちを見ていた
この人たちはみんな悪魔なのね、と思いながら
やがて父親が戻って来た、かすみ草の花束を持って
彼は後部座席のドアを開けてサニーの横に座り、花束の根元にある小さな膨らみを見せた
「あの時計の下に行ったらここを押すんだ、悪魔が吹き飛ばされて、神様がお喜びになる」
「判ったわ、パパ」
父親は頷いた「行きなさい」
「はい、パパ」


サニーは車を降りて、転ばないようにゆっくりと歩いた、白いドレスをまとった小麦色の肌の彼女は、人目を引いた
父親は真剣な眼差してサニーの後ろ姿を見ていた、祈りの言葉をつぶやきながら…サニーは落ち着いていた、しずかな足取りで時計を目指していた、なんだかデートに行くみたいだわ、と思ってちょっとおかしな気持ちになったけど、軽く首を振ってそれからまた、真面目くさって歩いた、やがて彼女はそこにたどり着いた、時計を見上げて、そしてそれに背中を向けた、青い空が美しかった、遠くに父親の車が見えた、教えられた通りに花束の根元と膨らみを押した、そのとき一羽の白い鳩が、彼女の足元に舞い降りた


あっ
鳩だ


それが
彼女が最後に思ったことだった
すべてを見届けた父親は、車を走らせて来た道を戻って行った


サニーの魂は少しの間ぼんやりと漂って、自分がいた場所を眺めていた、たくさんのものが壊れ、たくさんの悪魔が倒れて苦しんでいた




赤い血だ
へんなの







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