2019/2/3

FADE OUT(そのなかにはっきりと聴こえるいくつかの音)  




















心情の中で黒い蛇がのたうっている、標的を知らないまま見開いた、血走った視線の先にあるものはあまりにも頼りない虚無だ、絶えず鳴り続けるノイズだけが自分の存在を知らせ続けている…特に冷える夜、特に冷える夜の、術無き者どもの葬儀のような夜だ、感覚は死んでいる、いくつかの線が断線しているみたいに、どんな信号も脳内を行き交うことはない―ただ、ノイズと―鼓動だけが闇雲に、重く沈み込むようなビートを刻み続けている、闇に溶け入る亡霊の戯言だ…小さな言葉が欠けたガラスのように床に落ちていく、それは横たわった皮膚に見えない傷をつける、正体の判らない痛みだけが増えていく、氷に心があればきっと、そんな感覚を語るだろう―言葉は繰り返される、そうさ、語るべきことはひとつしかない、だけどそれがどんなものなのかは、俺自身には判らない、俺は思考する、きちがいみたいに…だけど結論を求めることはないのだ、確信は人間を少しばかり愚かにするだけのことだ、ピリオドのついた項目はそれ以上追及されることはない、蓋をされて、戸棚の奥深くにしまい込まれる、そしてそのままいつか忘れ去られてしまう…お前は生きながら詩に続けていることに気がつかないんだろう、都合のいいところで結論づけてきたいくつもの事柄がお前の命を翳らせてしまったことに―俺は真夜中を叩く、拳を握って…端仕事でひび割れた指に薄い血が滲む、すべてを受け入れてしまったらお終いだ、理屈を捏ねるだけの馬鹿になってしまう、口先で何とかしようとすることしか出来ないやつらの仲間入りだ―どうだ?確信することは気持ちがいいだろう、自分がなにか、理知的で瞬発力のある人間になったように思えるだろう…お前は気付かないのだ、威勢のいい音楽に乗って踊ることは、その場限りの約束のようなものだってことに…いくら殴りつけたところで真夜中は血を流すことはない、俺が戦うのはいつだってそんな相手だ、見えるものに頼り過ぎると偏頭痛に悩まされるのが関の山だぜ―大切なのは生身の感覚だ、そしてそれを言外で理解出来る感覚だ―言葉の領域に達する前に、その上流で捕らえて飲み込むんだ、思考に潜り込む前のそれにはまだ血のにおいがする、その独特の香り…それこそがこうして俺たちに悲鳴を上げさせているものの正体であり、理由―動機とでも呼べるようなものだ、周辺を見渡してごらんよ、安易な確信にすがる連中がどんなに愚かしいことか?やつらはただ飯を食らい、糞をして性交して寝るだけの管理された獣に過ぎない、鈍った野性と貧相な理性で、共同理念という名の松葉杖にすがりついてぼんやりとした目で生きている、判るだろう、俺は闇雲に唾を吐いているわけじゃない、寄り集まった愚かしい蠢きがただただ気に入らないだけなのさ…何のために生まれた?何のために生きてる?言葉であれこれ言うのは簡単なことさ、いまさらそんな言葉で話をしてみたところでどんな納得も生まれることはないんだ、ただ使い古されたきれいな言葉がずらずらと並べられるだけさ、見てくれはいいがたいして味もしないビュッフェのテーブルのようなもんさ…お前は頼り過ぎてるんだ、自分が信じているそれに―裏切ることもあるから言葉なんだってことを絶対に忘れちゃいけない、どんな巧妙な文脈を構成して見えたところで、お前が描こうとしているものがそのままテーブルに並ぶわけじゃない、お前自身でさえそのことを少し誤解しているかもしれない、いいかい、何も信じちゃいけない、そこに信じるに値するものはなにもない、賭けるボードのないルーレットのようなものだ、ただただチップだけがばら撒かれていく、その虚しさはもはや説明してみるまでもないだろう(たとえば真夜中を殴りつけてみるようなものだ)…だけどそういうものだからこそ、賭ける価値もあるというものなのさ…いいかい、これはゲームじゃない、じゃあなんだって―?さっき言っただろう、これは答えを出しちゃいけないものなんだ、得体の知れない影を追いかけるようなものでなければいけない、そこにどんな寄道もあってはならない、余計な情報を増やすべきじゃない(そして余計に削ぎ落すべきでもない)、机に飾られた花のすべてはすぐに死んでしまうものさ、黒い蛇の胴体の重みを感じながら、俺はもうすぐ今日の眠りにつくだろう、この詩は今日俺自身の遺言のように、ベッドの上で散らばってだんだんと意味を失くしていくだろう…。














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