2019/2/7

聖堂  










不用意に感光した印画紙のように意識は白けていた、くすぐる程度の電流がどこかでずっと思考を脅かしているみたいで、俺は実質丸められて捨てられたジャンクヤードのカーペットと大差なかった、すぐにどこかにもたれてしまうくせが余計にそんなイマジンを増長させていた…朦朧とでも呼ぶべき呂律の回らない感覚の雪崩、どこかで初めに書かれるはずだった言葉が生き埋めになっている、そいつが見つかればもう一度血が通うだろうか?川に小石を投げるように時間が過ぎて行く、無表情なデジタルの表示は死刑執行人の目つきを思わせる―記憶は、あるようでない、すべては現実ではなかったことのように作り変えられる、人間は本当の意味で過去を鮮明に記録出来るようには作られていない、ノンフィクション・ドラマ、あるいはドキュメンタリー作品のようになにかしらの意図やイズムがあるがままに刻み込まれている、俺の言ってることが分かるか?つまりそれが正常な人間だってことだ…コンビニのビニール袋が眼球を覆っているみたいだ、白く霞んでいて、あちらこちらに視線をやろうとするたびにガサガサと忌々しい音がする、まあいい―こんな呆けた時間に、本当に見たいものなどおそらく見つからないだろう―俺はこれをいつからか「死体」と呼んでいる、すこしの冷静さと多くの苛立ちを込めて…それは一度始まれば時間の感覚がなくなるまで続く、気づいたら二日が経過していたなんてザラだ、なあ―もしも過去が本当にはないものなら、寿命までの長い時間人はなにを飲み込んで生きていけばいい?俺には歳を取ったふりなんか出来ない、自分の知っていることしか知らない、ただ当り前に生きて、時を積み重ねてきた、そんなことを誇りに思うことなど出来ない、それなら油虫だって王様を気取ることが出来る―そうは思わないか?問題は、実感というやつなんだ…官能的に自分を打ちのめしてきた、リアルな感触、いまだってそのことを思えば、血液がさっと沸点に達するような…そんなものばかり求めて生きてきた、いくつかのものはもう蘇ることはないけれど、残りのいくつかはまだ俺に体温を思い出させてくれる、でもいまは―回路が断線している、どこにもコネクト出来ない、あらゆる感覚が閉ざされている、窓の外にはいつの間にか闇が訪れている、いつから流れているのか分からないディランのベスト・アルバムが微かに聞こえる、両手の指を何度か開いたり閉じたりしてみるものの、夢遊病者のように緩慢とした動作にしかならない、目を閉じる、ぼうっと、瞼の裏が真っ白い炎に包まれる、俺は紐のようなものになって、自分の身体の中へと潜っていく…そこは廃棄された過去の破片で埋め尽くされている、見当がつくものもあるし、まるで分からないものもある、すべてが強引にねじ切られたみたいにいびつな断面を晒し、果てしなく血を流したみたいな色に塗り潰されている、俺はその隙間に身体を滑り込ませ、さらなる底を目指す、そうしていればいつかめぼしいものを見つけることが出来るかもしれない、咲き乱れる陰鬱な色合いはひどく気分を落ち込ませる、内側から切り刻んでやりたい衝動に駆られながら潜水艇のように深く深く沈んでいく、深度が増していくにつれて薄暗い、洞窟のようなムードが漂ってくる、打ち捨てられた過去の残骸は次第に少なくなり、やがて見えなくなる、そこにあるのはなんてことのない、ただの虚無だった、ぼんやりとただ、なにもないことが存在しているだけだった、俺の生身がいま部屋で味わっているものと大差なかった、人生は鶏鳴に塗り潰していく白紙のノートだろうか、そんなことを考えるともうどうでもよくなって、もう一度上に戻り、肉体にすべてを戻した、肉体の状態はまだ不完全なままだった―そういえばいつか、そんな話を書いたことがあったなと俺は思い出す、死んだのに、肉体から出て行けない霊魂の話だ―耳鳴りがする、悲鳴のような高周波のノイズ、俺は軽く首を左右に揺さぶる、そんな行為には何の意味もなかった、何の意味もない…ひたすらに無意味な、白濁した感覚の羅列、理由や、意味などについて考えることに興味なんかないけれど、時々、考えてしまうんだ、こいつは俺を生かそうとしているのか、それとも葬ろうとしているのか…それはおそらく俺自身の思考と密接な関係があって、ほんの少しのボタンの掛け違いでも致命的なダメージを及ぼすことだって出来る―「出来る」っていう感覚が初めて出てきたな―俺はカーペットの上に激しく嘔吐する、明らかに食ったものよりも多い量を…徹底的にぶっ壊れている、ガラクタみたいなもんだ―ガラクタに出来ることと言えば、やかましく騒ぎ立てる事ぐらいさ…。










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