入院中の義母。彼女に少し触れてみようか。
結婚した時
「あんた達はなんていい子なんでしょう!
結婚式なんて面倒で、二人でやってくれるなんて楽でいいわ〜♪」
決して嫌味ではなく、無邪気にそう語った義母。
「同居なんてしなくていいわよ〜。
私達がいよいよになったら老人ホームに入るから、あんた達は何も心配しなくていいからね」
「子供が生まれたら、私が全部面倒見てあげるから。
二人で旅行でもなんでも行ってらっしゃい。私には出来なかったから」
こんな事も言っていた。
私達が結婚式を挙げたその日、彼女は区役所に結婚届を提出してくれた。
ハワイにいながら、結婚式=入籍は彼女の功労である。
最初は別居で、私達はアパートで暮らしていた。
私はよく実家に電話をするが、パパはしない人だった。
寮生活の頃も電話しなかったんだし、下手に電話すると変に思われると言うので、私も連絡しなかった。
結婚2年目のある夏の日、義父から電話が来た。
52キロあった義母が、38キロになって往診で点滴を受けているという。
「なんでこんなになるまで連絡しなかったんだ!」とパパ。
いや。その前に、やっぱ家には定期的に連絡した方がいいんでないかい(汗)
即入院&検査。食欲不振と睡眠障害でやせ細った義母は痛々しかった。
結局原因不明。
義母の入院中、何度か義父の元へ夕食、朝食作りがてら泊った。
パパがいる事もあれば、私だけのこともあった。
二人の食事はなんだか落ち着かず、お互いにかなり気を遣いあったものだ(笑)
義母は2ヶ月ほど入院したが、なんとか食欲も戻り退院。
お正月、遊びに行った。
すると義母はまるまると大きくなっていた。顔はまるでおかめちゃん。
食欲がとどまることを知らず「なんでもおいしくって〜」と無邪気な義母。
顔を見合わせる私達夫婦。
義父は「なんか知らないが、ほんとによく食うんだよ」とだけ、苦笑いだった。
まだ若かった私は、更年期障害など名前は知ってはいたもののどういうものなのか全然知らなかった。
まさかこれがうつ病の始まりだったなんて。
その後、入退院を繰り返す。
うつ病と診断されたのは、初めての入院から5年も経っていた。
なんやかんやで同居することになったのは8年位前。
息子が1才になる少し前だった。
はじめ、精神科に子供を連れて行こうかどうしようか迷ったが、現実を知って欲しいと連れて行った。
ヘッドギアをつけた患者もいる。奇声をあげる人もいる。とにかく異様な病棟。
そして、子供は珍しいので患者が寄ってくる。
最初はびびっていた息子も今では慣れたもので、ご挨拶までする。
いろんな人に「かわいいわね〜」と撫でられるたび「ありがとう」と答える。
娘はそれを見習っている。
この2月で、入院して5年になった。精神科病棟。
今日彼女は誕生日。
パパは仕事でいないけど、私の仕事が終わってから子供達と行ってきた。
「お誕生日おめでとう♪」子供達が言う。
息子は心得たもので、すぐに義母と手をつなぎホールへ向かう。
「これでいいんだよね?お母さん」と、息子が私に目で伝える。
笑顔で頷く私。
いつもどおりババ抜きを始める。すると
「来年の1月1日退院できるんだよ!」目を輝かせて笑顔の義母。
ありえないのよなんて言えない。
「よかったね〜!又一緒に電車を見に行ったり、かくれんぼできるね〜」と笑顔の私。
嘘つきでごめんなさい。
嚥下障害のあるお義母さんは、家での食事は固く止められている。
外出も、食事に関わらない時間だけ。
暖かくなったら散歩がてら花見に行こうね。
「退院できるんだから、しばらく来なくていいわよ〜」無邪気な義母。
「又来るからね!」息子が言う。頼もしいぜ!

ホールでトランプする光景
子供達に感謝!
おばーちゃんを受け入れて、他の患者さんにも優しく接してくれて。
母は本当に嬉しいよ♪
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。感謝!

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