今となっては古い問題ですが、当時書きかけていた文を抹消するのも勿体無いので、UPする事にしました。
中日の吉見の「ニンニク注射事件」が、曖昧ながら不問とされました。ただ、少々問題を感じるわけです。
まずNPBはWADAに加盟してませんし、もちろんJADA(日本アンチドーピング機構)にも加盟してません。ですので、NPB自体がどうドーピングに対しての概念を持っているのか、を調べる必要性があるだろうと。
NPBのサイトを見ると
「NPBアンチ・ドーピングガイド2009」なるものがあります。その中に、「元気が出る注射や点滴は認められるか?」というコラムがあります。
そこには、WADAの禁止表を用いて
「いかなる薬物も、医学的に正当な適応に限って使用されなければならない 」とありました。つまり、WADAに加盟していないにせよ、ドーピングに関してWADAの影響を受けている事は分かったと。そして、NPBによる
「正当な適応の医事行為」について見解も示されておりました。
1) 医師による診療記録があり、診断名、診断根拠、医薬品名及び使用量・使用方法などが明確に記載されている。
2) 薬事法にもとづいて認可された医薬品を用いた治療であり、且つ適応内使用である。
で、最後に「ドーピング禁止薬物でなくとも、この2つともが当てはまらない注射や点滴は、認められませんので注意してください。」と締めくくっているわけです。
このNPBの見解を見れば、中日側がしっかりとしたカルテを提出すれば、普通は問題ないのでしょうな。何となくですが、ここまでは理解できました。
これだけの流れなら「吉見問題なし」で決着するのですが、私が疑問を感じたのが、一部報道の中に
「NPBのドーピングコントロール規則がWADAの規定に準拠するもの」という文を見たので、それでは「話が変わってくる」と。
それでしたら、NPBの見解より、まずWADAの規定を見なければいけないわけです。
そこでJADAのサイトを見てみると「
禁止リスト」が掲載してありました。その中に注目すべき文として
「静脈内注入は禁止される。但し、外科的処置の管理、救急医療または臨床的検査における使用は除く。」と明記してありました。
この文を見る限り、点滴など注射を許可する場合は、簡単に書けば「外科手術や病への対応のみ」と明記してあり、疲労回復などの「ニンニク注射は原則禁止」となっているわけですな。
という事ですので、WADAの規定に準拠しているならば、NPBも当然に「ニンニク注射は禁止」と認識していなければならないわけです。にも関わらず、ニンニク注射を不問としたわけです。
「WADAの規定に準拠する」と言っても、WADAに加盟していないから曖昧な、なにか法の網をすり抜ける部分が出来てしまっているのだとすれば、またそういう曖昧な部分から認識の甘さを生むのだとすれば、これは問題だろうと。
吉見側からすれば「悪いこと」というのは、当然に認識していなかったと思う。それは、以前に清原が「ニンニク注射」を打っていた事を、マスコミが紹介していたわけで、その時代にはWADAもニンニク注射を違反としていなかったわけです。しかし時代は変わり、それが問題となった。という事は、NPBとすれば
「注射は、正当な医療目的以外禁止とする(WADAの規定により)」と忠告文なりを、発表すべきではないのか?
「そういう部分は、自己責任の範囲であります」とするならば、個人が「ニンニクは正当な医療行為であった」と判断して起用する問題が起こってもしょうがないだろうと。ですので私は、今回の吉見の件に関しては、「問題無い」という結論としました。それと同時に、NPBによるアンチ・ドーピングに対して、管理・監視能力を高める必要性を感じるわけですな。
それと、落合監督による「俺は医者じゃない。診断もしてない」という、「問題は自己にあらず」という態度はいただけません。マスコミにでさえ吉見がニンニク注射をしていた事が知れ渡っていたのですから、勿論監督の耳にも届いていたでしょう。届いていたのですから、そこには監督としての「管理する責任」が発生するだろうと。医者や吉見に対して、「その点的は問題に値しないのか?」とNPBに問い合わせてから使用するなど、指導があってしかるべきだと。それを無くして「私は責任外ですから」とするのは、リーダーとしての責任を果たそうとしていない事は明白であります。「思わぬ波風があった」とするのも、こういう部分から来ているモノもあるのでしょう。
「独善的が強すぎる」と、反発があってもおかしくないと。その反発が本人のみならいざ知れず、部下の者にまで影響するのは、組織として問題があるわけです。組織を束ねる者とすれば、責任から逃れようとせずに、しっかりと受け止めてほしかったわけですね。それが無かったのが、残念でした。

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