午前中に浅草方面に所用あり。朝から天丼モード。浅草から吉原まで足を延ばして、『土手のいせや』で天丼を食おうと決めていたのだ。
『土手のいせや』は明治20年代の創業で、建物は戦火を免れた文化財級のもの。椅子もテーブルも指物で、釘なんか使われていない。出す天麩羅も江戸前で、胡麻油で揚げて濃い目のたれをかけるもの。穴子にこだわり、穴子専用の生簀まである。いつも地元の人で行列だけど、時間が早いから10番目ぐらいかな。とにかく浅草から吉原大門へ。
ところが・・・・・・・水曜定休だった。(T。T)
まだ11時半だけど、気分は完全に下町、江戸前モードだ。
ここまで来たら、今更浅草や上野には戻れない。
行列覚悟で南千住の『尾花』で鰻を食ってやろうと、更に下町の奥地へ向かうこと20分。

場所は
荒川区南千住5−33−1。
日比谷線の線路沿いの店につきました。大きな門をくぐるとお稲荷さんが祀ってある。その横が写真の入口ですが、週末になると行列がとぐろを巻いて門の外まで並ぶ。この日はどういう訳か人が少なく、すぐに入れました。
引き戸を開けると下足番のお姉さんがいます。下足札を貰って上がると、大広間に食台が並んでいる。
12時前について半分ぐらい埋まってたかな。
この広間に百人ぐらいは入れるでしょうか。

うな重とビール、うざくを頼んで本を読む。
尾花は注文を取ってから鰻を捌き始めるので、40分は待つことになります。うざくをツマミにビールをやりながら本でも読んでいないと、1人で入った場合には時間がもたない。
尾花では相席になることがないので、本があればゆったりと時間が過ごせます。
鰻の甘味と酢の具合が丁度良いうざくでビールを飲む。昼のビールは何でこんなに染みるんですかね。贅沢な時間の過ごし方です。
門をくぐってから出てくるまでに1時間はかかるので、忙しいサラリーマンの姿はない。お客さんはジジババばかりです。みんなビールを飲みながら世間話をして待っている。
田舎の法要を思い出しました。法要のあとで、本家の広間に親戚一同が集まって食事を取る。そんな風景です。
うな重は3種類合って、2500円、3000円、3500円。頼んだのは3000円のうな重ですが、ドンブリのような大きな塗りのお椀にに蓋つきで出てきます。蓋を開けると蒲焼のいい香りが立ち昇る。目に入るのは飴色の鰻。この鰻がでかい。
山椒をパラリと振りかけると香りまでが引き締まる。
尾花の鰻はふっくらと仕上げます。箸を入れると、皮までスッと箸が通る。
柔らかくふっくらした鰻をたれの染みたご飯と一緒に口に入れると、もう極楽気分です。なんでこんなに旨いんですかね。
たれは醤油の風味がかすかに残る。アッサリしているのとは違うんですが、変な表現ですが、醤油の潔さを感じます。鰻の、川魚としての風味を良く引き立てるたれです。
『ゆっくり味わったほうが幸せだよ』と理性が囁きますが、一気に掻き込み飲むように平らげてしまいたい衝動がふつふつと湧いて来る。この欲望を抑えるのが大変です。

肝吸いは別オーダーですが、是非頼んでください。
やや塩気の勝った肝吸いですが、鰻のたれとの相性は抜群。
鰻とご飯を一口。口の中で鰻がとろけたあとに、肝吸いを一口。深みがあるのにくどくない吸い地が口を洗ってくれます。
卵豆腐のあとに食べる肝は、クセなどなく、こりっとした食感が気持ちいい。
変な店に入ってしまうとふやけた様な肝を出されることがありますが、尾花ではそんな心配は無用です。
香ばしい鰻が好きな人。こってりと脂がのった鰻が好きな人。ふっくら柔らかい鰻が好きな人。
いろんな好みがありますね。
香ばしい鰻が好きな人には、浅草の『
色川』をお勧めしましょう。
脂がのった鰻が好きならば、銀座『
ひょうたん屋』の関西風の蒸さない蒲焼がよろしい。
ふっくらと焼き上げた鰻が食べたいのならば、一度尾花に行ってみるべきだ。『野田岩』とはまた違った、とろけるような鰻が食べられます。

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