西葛西に住んでいると『
やしま』は外せません。

この店のいいところは出汁を取るのに本枯れ節を使うところ。
本枯れ節とは鰹節のなかでも、最も手間のかかった物です。
鰹節は三枚に下ろしたあと1時間ほど煮ます。そして皮の2/3をはぎ、皮下脂肪を取り除き、残りの骨を取る。この段階がなまり節。なまり節をカシやクヌギを燃やした煙で焙乾する。この焙乾と、表面が乾いたなまり節を一晩寝かせて内部の水分を表面に染み出させる作業を10回以上繰り返す。ここまですると荒節になる。焙乾によって表面にはタールが付着しているので、これを削り取って、やっと裸節ができあがります。
花かつおとして売っている削り節は荒節の段階のものを使用しているのがほとんどだそうです。そして江戸時代前期までは、鰹節と言うと裸節のことでした。今でも普通に鰹節を使うときは裸節が使われます。
元禄時代になるとカビ付けの手法が出来上がります。カビ付けとは裸節の表面に良性のカビを付着させ、内部の水分量を減少させて保存性を高めると同時に、脂肪分を分解させて不快臭を除き、良い香りの成分と旨味を増やす手法です。
カビが付いては天日で乾し、またカビを付けて乾す。何度か繰り返すとカビは付かなくなり、内部の水分が充分減った状態になります。
ここまで来て初めて枯節の出来上がり。
ここまで来るのに半年かかります。しかしカビ付けした鰹節の香りは上品で旨味もまろやか。料亭で出汁を取るときには間違いなく枯節を使う。
ただ、普通に煮物をするときなんかは裸節で充分。裸節の方が味も香りもシッカリしていますから。
『やしま』では出汁を取る時に本枯節を使っているといいます。蕎麦屋の出汁は時間をかけてシッカリと取る為に、鰹節は厚削りにします。非常に高価な本枯れ節を、しかも厚削りにして毎日使うなんて事が本当にできるのか?
HPに拠れば、『つゆはかつお本格節を中心に』取っていると言う。本格節は本枯れ節の間違いだろうが、使っているのは間違いないのでしょう。(本当に本枯れ節中心かどうかは知りませんよ。蕎麦屋のツユの甘味を出すにはみりんを使いますが、それと共にさば節から出る甘味が重要なはず。必ずしも鰹節中心と言うものでもない。)
やしまのツユは確かに美味いです。個人的にはみりんが効きすぎているとも思いますが、他の立ち食い店と比べると出色の出来でしょう。立ち食い蕎麦の場合てんぷらを乗せる客がほとんどだと思うので、てんぷらの油から出るコクを受け止める為にもみりんを効かせる必要はあるのでしょう。
このツユだけで、立ち食いとしては充分評価できます。
蕎麦自体は取り立てて言うことはありません。てんぷらもどうと言うことはありません。あのてんぷらを神田川俊郎が賞賛したと言うことですが、神田川氏は今やタレントですから。むしろ逆効果かも。
やしまのツユはうまいですが、やはり蕎麦そのものが美味い店で趣味蕎麦を食べたいよ。
どこかありませんかね。

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