西葛西にあって西葛西以外でも有名な店は、やしま、龍高飯店、そして夢うさぎぐらいでしょうか。
夢うさぎは脱サラ組の店主がズブの素人から始めて、短期間に行列の出来る店になった。私はラーメンを食べ歩く程のラーメン好きではないので詳しくはないのですが、つけめんは大勝軒系と評されている様です。
住所は
北葛西4−21−11。西葛西の駅からは20分はかかりますね。
火曜定休。月曜、金曜は昼のみの営業。昼は売切れ仕舞ですが、2時半ごろに終わる感じです。
これは特製らーめん。
スープはダブルスープと言うやつで、豚骨と魚介の合わせ出汁です。かなり濃厚なスープになっていますが、豚骨だけではないので臭みが無い。背油も入っていますが、ギトギトになる程ではありません。バラ肉のチャーシューはトロトロになっていて、濃度のあるスープによく合います。卵はお約束の煮卵ですね。醤油は2種類を合わせ、さらにナムプラーを加えるそうです。全体としてかなりコクを追及している感じ。麺は中太の縮れ麺。
違和感があるのはメンマ。かなり甘い味付けなのですよ。スープの味付けが結構醤油辛いので、その甘さが際立ちます。このメンマでバランスが崩れる気がする。
こちらは特製つけめん。
スープは特製らーめんと同じダブルスープなのですが、味は全く異なります。醤油の他に酸味を加える為に酢が入っている。そして味醂と思われる甘味。酸味があるために、甘味が強調される。この甘味は鯖節やうるめ節から出た甘味ではないはず。味を引き締める為の唐辛子が少々。一口食べたときには、かなりのインパクトがあります。
麺はらーめんの物よりさらに太い。しかし、ストレート麺になっています。当然つけ汁の味は濃くなっているので、縮れ麺ではつけ汁を引上げ過ぎて麺の味も分からなくなる。この辺の工夫は基本的に池袋大勝軒がデフォルトになっているのでしょうが、それはそれで結構。うまいラーメンのための工夫ですもの。
食べ終わった後に、残ったつけ汁にスープを足してもらうことが出来ます。蕎麦湯でツユを延ばして楽しむのと同じ要領。是非試してください。
驚くのは店主の修行期間です。2店で修行しているのですが、合計で3ヶ月しか修行していない。これって修行なんですかね?良い悪いの問題でなく、驚き!
飲食業の経験がなかったので、店での立ち居振舞いから、仕入れ、仕込みの手順などを一応経験したと言うところでしょう。
しかしたった3ヶ月の経験で繁盛店が作れるのか?
これには理由があるのですが、夢うさぎの味には関係ない話なので別の機会に。
夢うさぎのラーメンの味は、一言で言うと『クセになる味』ですね。好みの分かれる味なのだと思いますが、2度3度と食べるとクセになるような気がします。
桂花ラーメンや
ラーメン二郎とはまた違った、クセになる味。
『らーめん』と『つけめん』では随分と味の構成が違うのですが、それに合わせて麺を変えているのは好感が持てます。『味玉らーめん』と『特製らーめん』でも麺は違う。
普通のラーメンはスープとの一体感を味わう物。それに対してつけめんは麺を味わう物でしょう。うまい麺を如何に引き立てるつけ汁にするかが、店主の腕の見せ所。この点で色々と試行錯誤しているのでしょう。
個人ラーメン店としては、非常に良いラーメン店だと思います。
しかし個人的な好みからすると、少しストライクゾーンから外れているかも。
スープ自体の旨味が濃すぎるのと、醤油辛いのが苦手かもしれない。醤油辛いのは醤油の角が立っているのとは違います。濃厚なスープに負けまいとして醤油の量が多くなっているような感じです。つけめんの方も、今ひとつ不安定なバランスを感じます。どこがどうとは言えないんですが、何か1つ多いような気もする。
美味しいんですよ。美味しいのに、もっと美味くていいと言う贅沢な不満を感じる。
旨味が濃すぎるのは必ずしも良いことでもありません。但し、この辺は完璧に好みの問題。
絵の具を塗り重ねたゴッホの絵には
ゴッホの良さが、単色で空気までも表現する長谷川等伯の水墨画には
等伯の良さがあるのです。
ただし絵の具を重ねるときも、重ねればそれだけで重厚な美しさが出ると言うものでもない。不用意に重ねるとただクドクなるだけで、バラバラになってしまう。『夢うさぎ』のスープはよく旨味の出たスープで、しかも動物系と魚介系、さらに野菜の旨味や甘味もよく抽出されていると思います。でも、私にとっては旨味を重ねすぎ。メンマが甘いと言いましたが、この辺も関係していると思う。味が重なりすぎているんです。
どれかを除けはスッキリすると言うのではなく、配合比率の問題のように思えます。
逆に言うと、旨味の濃厚なスープで食べるラーメンが好きな人にはお勧めできます。変な動物臭さが無い。鰹節、鯖節、うるめ節や昆布出汁などが持つ魚介系特有の匂いも抑えてある。とんこつ、鶏がら、魚、野菜に加えて醤油とナムプラーの旨味が加わる。私にとっては重厚すぎる旨味も、濃厚派にとっては多層的な厚みを持った美味いスープとして楽しめるはずです。
そしてラーメンによって、それぞれ違った麺の美味しさを楽しめます。
これは凄いことです。
ラーメンの種類によって麺を変え、味付けを変える。個人店でこれを実行するのは並大抵のことではないと思います。普通はトッピングを替えて種類を増やすのが精一杯ですから。この努力は大変なものです。コストも上がる。
にもかかわらず実行している店主は、自分の思い描く美味しいラーメンを出すことにこだわっているはず。
そう遠くない将来に、店主の思い描く黄金比率を見つけることだと思います。

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