どういうわけか正月になると寿司屋に行きたくなる。
世の中皆がゆっくりしているので、私ものんびりした気分になる。
そうなると何か旨いものでも食べようという気になって、ついつい寿司屋に行きたくなってしまう。
どうして『旨いもの→寿司』になってしまうんですかねぇ。
他にもたくさんおいしい物はあるのに。
でも正月の寿司屋ってのも考えものなんですよね。
市場が開いてないんですから。
年末年始は大晦日から4日まで築地は休み。
5日に初セリがあるけど、そのときに出てくる魚っていつ獲れたんだろう。
マグロなんかはいいんですよ。
キチンと手当てされたマグロならば、すぐ食べるより数日経ったほうが美味しいんだもの。
でも鮮度で味が左右される魚はそうはいかない。
正月に営業している店は大変です。
年末の高いときに仕入れた魚を年を越してから使っても旨いように自分の店で手当てしなけりゃいけない。手当ての仕方が下手くそだとどうにもならない。
手当てなんかに気を使わないような店だと、美味しく食べられるものが随分と限られてしまう。せっかくの休みなのだからたまには初めての店にでも入ってみようか、なんてことをするとガックリくることがある。
そんなこんなで正月に魚は食べなかったので、初日でも覗いてみようかと築地に遊びに行きました。初セリでも良いものがあるとは限らないから、気合を入れて旨いものを買おうなんていう気はサラサラない。
それにご祝儀もあって、一般的には普段より値は高い。
物がないんだから需給バランスから言って高くなるのは仕方がないですね。
今年は6日の土曜日が終わると9日の火曜日まで市がない。
比較的早めに出かけてみたんですが、いつもの年初にも増して物がなかったですね。
フラフラと見て回って帰ろうと思っていたのだが、何となく鶏肉屋で鴨を買ってしまった。
鴨といっても真鴨なんか買えるはずはなく合鴨。
合鴨といってもピンからキリまである。
国内産の生の合鴨なんかは、上物ならば東京シャモや名古屋コーチンより高い。
台湾産の冷凍の倍の値段だ。
台湾の冷凍の上が国内産の冷凍、更に国内産のチルドとなるが、この辺になるとどう違うのか良く分からない。
鴨で世界的なブランドになっているのがフランスはシャラン産の鴨。
合鴨はチェリバリー種と呼ばれるものだが、フランス鴨として有名な鴨はバルバリー種と呼ばれる。
蕎麦屋でも鴨南蛮や鴨セイロにフランス鴨使用という店がある。
肉質が柔らかく真鴨よりクセがない。
そのせいかフレンチではエトフェと言って、絞める時に血を抜かずわざわざ窒息させて体中に血を巡らせてクセのある味にすることがある。
最近知ったのですが、このバルバリー種というのは学術的な分類上は鴨属ではないんですね。
水禽目雁鴨科までは一緒なのですが、合鴨は真鴨と同じ鴨属で、フランス鴨はバリケン属というのだとか。合鴨は真鴨を家畜化したもので、バルバリー種は南米原産のバリケンという水禽を家畜化したものなんだそうです。
『シャラン産だけが旨い鴨じゃない。真鴨の味わいに近い肉を使いたいならば大切に育てられた合鴨の方があう』と言う人がいるのも納得です。
チェリバリー種とバルバリー種は味わいが違うんだということですね。
買ってきた鴨の抱き身を焼いて、鴨葱うどんにした。
こんなものを外で食べたことはないが、家にうどんがあったのでこうなっちゃいました。
これが見かけによらず、結構旨いんですよ。
皮目に縦に何本も切れ目を入れて塩胡椒して馴染ませます。
鴨の抱き身は皮目にシッカリと脂肪が乗っていますから、多少きつめに塩をしたほうが美味しい。
そして皮目からじっくりと火を通す。
皮目に焼き色が付いてくると脂がどんどん出てきます。
そうなったら裏返して身の方から火を通し始める。
はじめに強火で焼色をつけて肉汁を閉じ込めるなんていうことはしません。
最初から最後まで弱火。
皮目は脂が乗っているので柔らかく火が入っていくのですが、身のほうは表面だけ焦げるので注意しなくてはいけません。
平たかった鴨肉はパンパンに丸くなって、太いボンレスハムのようになってくる。
トングを使って火の当たってない部分をフライパンに当てながら満遍なく火を通す。
結構火が入ったかと思っても、身の真ん中部分を指で押してみるとまだブヨブヨしています。
でも必要以上に硬くなるほど焼いてしまうと鴨の良さが味わえません。
切った時に身が赤いレアぐらいでないと美味しくない。
押したら跳ね返るくらいの弾力になったら火からはずし、アルミホイルをかけて焼いた時間と同じぐらい休ませる。
これをスライスすると思ったよりも中の肉は赤いはず。
でも、それでいいんです。
最後はうどんのツユの中で温まるわけですから。
うどんを茹でながら葱を切って、残っている鴨の余分な脂を捨てた後のフライパンで焼く。焦げ目が付くくらいまで焼いた方が美味しい。
これを温かいうどんの中にスライスした鴨肉と一緒に入れると、ツユに脂が広がります。
この脂が旨いんです。
薄味の讃岐うどんのツユにコクが加わってなんとも。
それにまだ赤かった身に余熱で火が入りピンク色になった頃の鴨肉は美味しい。
うどんに鴨肉と葱を入れただけですが、結構気に入ってます。
何も難しいことはしなくても美味しい。
気を使うのは鴨の焼き具合ですが、失敗してもいいと言う気持ちでとにかくレアに仕上げるんだと思っていれば大丈夫です。
蕎麦屋で鴨セイロを頼んでも、皮目を焼いていないものが出てくるときがある。
それでいて身に火が完全に入ってしまっている。
あれはスライスしたあとで鴨肉に火を通すからでしょうか。
抱き身のまま表面に火を通しておいて、温まったツユが出来てから鴨肉をスライスして乗せて余熱で身に火を通してくれればもっと美味しいのに、なんて思ってしまいます。
まぁいろんな流儀があるので一概には言えません。
好みと言うこともありますし。
ですが、私はピンクの鴨肉が好きですね。

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