行ってきました、TOKYO CURRY LAB.。
東京タワーの中に出来たカレーレストラン。
総合プロデュースは小山薫堂、メニュー開発は東京カリ〜番長、アートディレクションが水野学、インテリアデザインを片山正通。錚々たるメンバーですね。
小山薫堂氏は料理の鉄人のプロデュースでグルメブームを作り上げた。
この2〜3年は、メディアのカレー特集といえば東京カリ〜番長と言われるぐらい。
この2人(1人と1グループ)の知名度は抜群です。
カリスマと言ってもいいんでしょうね。
そして水野氏と片山氏は一般的な知名度はありませんが、実はたいした実力者たちです。
その道のプロの間での評価は抜群。
この人たちが作りあげるカレー屋さんが、東京カレーラボ。
ラボと言うだけあって、研究所のようにいろんなカレーメニュー開発し発表していくと言うコンセプト。
現在、小山氏のコネクションを活かして、メディアに出まくりです。
カレー好きとしてはチェックしたいところですよね。

東京タワーの2階の奥にそのブースはあります。ラボと言う名にふさわしいやや無機質な感じのブース。正面は調理場のような形になっており、触れ込みによるとここでいろんなカレーを開発するらしい。
でも、この日は誰もいませんでした。ゴスペラーズから贈られた鉢植えが飾ってあったっけ。
その後ろには試験管が並んでいて、中にはいろんなスパイスが入っている。
試験管にスパイス。これが立派なインテリアになっている。
ちょっと変わった内装ですが、あくまでもラボと言うイメージから外れることなくレストランとしての動線を確保しています。
私が行った時間は午後3時も回っていたので客もまばら。
私と同じ匂いのする、カレー好きとして一度は食べてみたいから来たと言うようなお客さんが3組。
私が頼んだのはスパイシーポークカレー プレミアム。1600円。
写真では良く見えないかもしれないけど、でっかい豚バラ肉の塊がゴロゴロと入ってます。
この豚バラは角煮よろしく、しっかりと脂が抜けている。噛むとホロリと崩れます。
豚の旨さは脂にあると思っている私が作りたいポークカレーと目指す方向は同じだぁ。
きちんと余分な脂を抜いた豚の脂身は、その旨味とゼラチン質の食感が口の中で官能的なハーモニーを奏でる。
ここにどのように味を乗せるかが腕の見せどころになる。
コリアンダーと黒胡椒を軸にした香りは過度に刺激的になることなく、よくまとまっている。辛さの中でも胡椒の辛さというものは豚肉と相性がいい。香りも豚臭さを隠してくれる。定番中の定番のような組合せだけれど、相性の良さを再確認させてくれるような嬉しいカレーだった。
カレールー自体は、かなりインド風に近い作り方にしてある。
ベースに甘味を据えているが、これが思ったよりもしっかりとている。だから味全体に厚みを感じる。そこに酸味とスパイシーさを加えて豚のクセを抑え、旨さを際立たせようとしているようだ。
ただインド風とは言え、意外と脂っぽく感じた。
ルーの周りの油を見れば分かるでしょう。
もう少し抑えてくれた方が食べ安いかも。
だって豚バラ自体が脂身を食べているようなものだから。
連れが頼んだアーモンドチキンカレー プレミアム。1300円。
アーモンドチキンカレーがTCL(東京カレーラボ)の記念すべき第一作なのだとか。
そのプレミアム番で、温野菜のトッピングがつく。
日本のカレーにインドのエッセンスを加えたようなカレー。
アーモンド風味の強いチキンカレーです。食べた後に感じるアーモンドの風味がいい。
食べ進むうちに鬱陶しく感じることはないくらいの風味に抑えてある。
味自体はかなりマイルドに仕上げていて、非常におとなしい印象だった。
ほんのりとした苦味がアクセントになっていて好感が持てる。
よく考えられたカレーだと思いました。
今までありそうで、なかなか見つからなかったカレー。
でも温野菜を載せただけでプレミアムと言うのはどんなものかしら、と感じる人もいるかもしれませんね。ポークの場合は豚バラの量が充分ありましたから食べでがあった。だからプレミアムとして価格の上乗せがあっても納得できる。
しかしチキンカレーのプレミアムが温野菜なのにはどのような理由があるのでしょう。
このアーモンド風味のカレールーと温野菜の取り合わせには特別な想いがあるのでしょうか。
プレミアムカレー全般が再開発中になっているのはこのあたりが要因かも。
こちらはダブルミンチカレー。1100円です。
要するに合挽きのキーマカレー。
肉はかなりの荒挽きで肉を食べていると言う食感があるタイプ。
こちらもマイルドな仕上がりなので、立て続けに食べるとちょっと物足りなさを感じる。
辛さはほとんど感じないので、別ないい方をすると食べ易いカレーです。
でも正直に言うとやや苦手なカレーの部類。
なんと言うか、味噌のような風味の隠し味が強いカレーはちょっと苦手。
味噌じゃないかもしれないんですけど、肉とブイヨン以外の旨味を乗せている。
嫌いと言うんじゃないですよ。苦手。
途中で食べ飽きちゃうんです。
旨味があるのは良いんですが、もう少しキレが欲しいかも。
食べたカレーは全般的におとなしい印象。
辛さを求める傾向にあるカレー好きからは物足りないとの声が聞こえてきそう。
でも私は食べ易いカレーも大好きです。
ラボなのだから、新しい味の提案や組合せの妙を示してくれるのが楽しみ。
近隣にはオフィスもたくさんありますが、場所的に観光客人口が非常に多い。
このレストランはどんなお客さんを主たるターゲットにしようとしているのでしょう。
東京カリ〜番長の名前に惹かれて来る人は、いわゆるカレーフリーク。一般のカレー好きとはちょっと違う。東京タワーに来る観光客目当てではなく、世のカレー好きを東京タワーに呼ぼうとしているのかな。
そうだとしたらコンセプトに矛盾を感じてしまう。
このレストランには料理人としての顔がない。
有名シェフの店じゃないと言うことが言いたい訳ではありません。
レシピは東京カリ〜番長が作り、店内は実力派のディレクターとデザイナーが作る。
話題は著名放送作家が振りまく。
これって、食品会社のタイアップ・レトルト・カレーと何が違うのでしょうか。
よくメディアに登場する有名シェフの料理はその店に行かないと食べられない。地方の人達にとっては食べたくても機会がない。そこに目をつけた食品会社が総合監修を依頼して商品を作る。
テレビでバンバン宣伝して認知度を高める。
有名シェフ監修で味を作り、食品会社が量産し、広告代理店が宣伝を打つ。
一度そのシェフの料理を食べてみようと思っていた人達にとっては、都心に出かけなくても家庭でその片鱗を手軽に味わうことができるので有難い。
東京カリ〜番長は店を持たず、イベントに出張してカレーを振舞っている。数々のレシピ本を見れば、そのレパートリーと言うか、カレーの味のデザイン能力には驚かされるものがある。食べてみたいと思っている人はたくさんいるのだが、そのカレーはイベントに参加しないと食べられなかった。
でも東京タワーに行けば、憧れの東京カリ〜番長のカレーがいつでも食べられる。
そのことをテレビや雑誌でどんどん知らしめる。
構図としては全く同じです。一度食べてみたかった人達にとっては有難いことなのは事実なのですが、この構図の中には料理人はいない。
味のデザイン。
酸味と甘味で食べさせるカレーを作ろうとします。酸味と甘味のどちらを軸にするのか。尖った酸味と丸みのある酸味のどちらを主にするのか。ふくよかな甘味とコクのある甘味のどちらをベースにするのか。厚みを増すための隠し味にどんな調味料を使うのか。まず最初にどんな味のカレーをイメージしているのか。
これらのデザインを作り上げることは必要不可欠ですが、その後の調理も非常に大切なのです。レシピが手に入れば有名店のカレーが再現できると言うものではありません。
玉葱の切り方から炒め方、トマトの煮詰め具合、スパイスを投入するタイミング。
具となる食材の下処理から仕上げ。肉に火を入れるとしても、どのようなイメージを持つかによって火の通し方が異なってくる。同じ豚肉のコンフィを作るにしても、作り方は千差万別。だから調理の仕方は料理人次第。出来上がりの味も料理人次第。
そこにレストランとしての差別化や特色が現れる。
私が料理人としての顔がないと言うのはこのことです。
だって東京カリ〜番長は調理を担当しないのですから。
これが小山氏プロデュースによる東京カリ〜番長の『カレーショップ』というのなら頷けるんでしょうね。レストランと銘打つから小さな違和感を持ってしまうような気がします。
でもこんなことは企画している諸氏にとっては想定内のことだと思います。
それに東京カリ〜番長の仕事はレシピの作りっぱなしではない。
カレーだって工場での量産ではない。
レシピとお客の間に職人的仕事をする調理人が介在している。
だから、今後どのように展開して行くのかが楽しみ。
次はどんな形に進化させるのだろうと言うワクワク感。
さらなる新しい味の発見はいつ体験できるのだろうと言う期待感。
この期待感だけで客を惹きつけ『続ける』のは難しいと思うけど、他にもなんかやってくれそうです。
あっ、これも期待感か。
3月末に開店して、既にプレミアムカレーは再開発に入っている。常に変わり続け進化するカレーがコンセプトの1つなんですから、その通りに進行しているということですか。
パンチが少ないと言う声が上がると辛味オイルの導入を検討したりと、今後も変わり続けていくのでしょう。
東京タワーからいろんなカレーの食べ方を発信する店。
そんな店になっていったら嬉しいですね。

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